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Magia Lost in Nightmare  作者: 宇治村茶々
第5章 叛逆の賛歌
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第157話(5-4-2)

暗闇の中、目が冴える。眠れない。眠れるわけがない。フランが私を助けるために彼女の力で生き返らせた『罹人』は過去に大量殺戮を犯した恐ろしい怪物だったのだ。しかも、その時に犠牲になった人の中に私の同級生ロンネの両親がいたのだ。そんなロンネの仇である『罹人』が今再び暴れ回っている。まさか、フランがこんな酷い事を指示するはずがない。となると、やっぱり・・・・・フランは、もう・・・・だとしたら、誰のせい???フランの自業自得??違う。フランは誰のために力を使った??私だ。私が、あの時、せめて、自分の身くらい自分で守れていたなら。私のせいで、ロンネの両親の仇が蘇り、フランが死んで・・・・・・いや、いやいや違う違う。フランは死んでない。フランは大丈夫だ。きっと。ただナイトストームさんが強すぎて、自分で支配から抜けてしまったんだ・・・・そうだ、そうに決まってる。でも、そうだとしても、今回の事件の根幹は私だ。あのホテルにいた人たちは、私が、弱いせいで、違う、違うと思いたい。でも・・・・・・そう思うと、自然に目から涙が滲みだし、タオルをギュっと掴む。せめて、せめて、フランは無事でいて・・・・・・・。


胸が燃えてるみたいに熱くて、いつまでも眠れない。


フラン、私は、私は・・・・・・・・・どうしたら。




『エーデル』


眠れずタオル抱きしめ、ただ目をつむって夜を過ごしていると、不意に頭の中に声が響き、パっと目を開けた。当然、暗闇があるだけで何も見えない。しかし、確かに私を呼ぶ声がした。でも、フランじゃない。もちろん、上で爆睡しているルミナスでもない。誰??誰なの???私は寝返りを打ち部屋側に顔を向け、耳を澄ます。


『エーデル、エーデルやーい、こっちだ、こっち。トイレだ、トイレ』


再び頭の中で声が響く。この声は、エドウィージュさんによく似ている。『ヴァルプルギスの夜』のエドウィージュさん。彼女がわざわざ私を迎えに来たと云う事は、よっぽどの事だ。とっ、となると、やっぱり、フランの身に何かが・・・・とっ、とにかく、トイレに行ってみよう。部屋の電気は、点けない方がいいだろう。暗闇でも流石にもうトイレまではたどり着ける。痛っ、ベッドの柵に足の小指をぶつけた。って、こんなので痛がってる場合ではない。早く行かないと。


真っ暗闇の中、なんとかトイレのドアの前にたどり着いた。トイレの電気は点いていない。とはいえ、中でエドウィージュさんが待ってるのは間違いないだろう。電気を点け、覚悟を決めドアを開けると、閉じた便座の上に座り人差し指を口に当てたエドウィージュさんが待っていた。そして、身振りで鍵を閉めるよう伝えて来る。鍵を閉め終わるや否や彼女は私に両腕を伸ばし、私を抱きかかえる。


そして______。





「でやぁーーーーん!!我らがプリンセス、エーデルご到着ぅっと!!」


「・・・・・ちゃんと生きてる?」

「は??何、言ってやがんだ???流石の私も仲間を死体にして連れてくるほど悪じゃないんですけど、超心外」

「いや、ワープから戻ってきた勢いのままスープレックス決められてひっくり返ってるけど。下見てみ」

「おっ??ほんとだ。悪い悪い、ちゃんと生きてっか~?」

エドウィージュさんがひっくり返ってお股から顔を出した私のお尻をぺちぺち叩きながら言う。


「はっ、はい、なんとか・・・・・・」

私はその体勢のまま言った。多分マットレスの上じゃなかったら死んでた。



「良かった。良かった。って事で誰にも見つからずにすんなり回収できたし、エレクトロ、残念だったな。お前の出番はなしだ」

「その方がいいんだよ、バカ。ほら、エーデル、さっさと行くよ」

エドウィージュさんにそう言われたエレクトロさんはそう答え、面倒くさそうに私に手を差し伸べた。ちなみに、このエレクトロさんも『ヴァルプルギスの夜』のメンバーでいつもパッドを弄っている金髪ポニーテールで眼鏡をかけたお姉さんだ。




エレクトロさんに連れられ床の全てが白いマットレスの不思議な部屋を出て、どこかのお城の廊下のような場所を歩き、あるひとつの部屋に案内される。


そして、その部屋のドアを開けると部屋の内装より何より先に絨毯の上で土下座して小さくなっているフランが目に入った。


「ちょっちょっ、ちょっと、なっ、何やってるの!?!?かっ、顔上げてよ」

「本当にごめんなさい、エーデル。全ては、私の監督不足よ。しばらく大人しくしていたし、勝手に外に歩かせても適当に外食して帰ってくるから完全に油断してしまった。全ては、私が悪いの。まさか、こんな大事になるなんて。本当に申し訳なくて合わせる顔がないわ」

彼女は土下座して小さくなったまま言う。


「ううん、そっ、そんな事ないよ。そっ、そもそも、ナイトストームさんが生き返ったのは、フランが私を助けるために・・・・・だから、私が、悪いの!!!だから、フランは顔を上げて。私が、あの時、ただサっと避けていれば、それだけで・・・・」

私はフランの腕を持ち、無理やり彼女の姿勢を立たせ言った。


「それは違うわ、エーデル!今回の件は絶対的に私が悪いの!!」

「ちっ、違う!!」

「違わない、私のせい!!!」

「違うよ!!あの時、私がでしゃばったから!!!」

「違う違う、違う!!!今回の事は私がちゃんと彼女を___」


「あーーーもうウッサい!!!誰のせいでもええわい!!!!今日の話は、今後の方針を示すのと、警告だろ!!」

私たちが言い合っていると、ベッドに座っていたヴェンディがそう怒鳴った。あっ、いたんだ。隣にカーラさんも座っている。



「エイト、エーデル、ヴェンディの言う通りよ。今日は責任の所在が誰にあるかを追求する時間じゃないの。もし何かが悪いとするなら、そもそも『罹人』というだけでエイトを殺そうとしたテンプルで、そのテンプルがそうするように仕向けた世界の在り方そのもの。私たちは、それを破壊するためにある。そうでしょう??そのために、未来の話をしましょう」


「そうね。ありがとう、カーラさん。今は、次の事を話さないとね。それでいいわね、エーデル。誓って、あなたは悪くない」

「うっ、うん。わっ、わかった。でも、フラン。フランも、悪くないよ。そっ、それより、フランが無事でよかった。あの人が暴れてるって事は、フランに何かあったんじゃないかって心配で・・・・・・良かった、本当に良かった」

「そうなのね、ごめんなさい心配をかけてしまって。ありがとう。とりあえず、簡潔に起こった事だけを話すと、ナイトストームは私の支配から抜け出してしまったの。すぐに支配から抜け出さなかった事を考えると、解呪に特化した『罹人』に協力を仰いだ可能性が高い。次に、これから例の事件を受けて私たちがどう動くかについてだけど、彼女の存在は将来的に『罹人』全ての大幅なイメージダウンに繋がり兼ねない。それは、私たちの理想の世界、ひいては『ヴァルプルギスの夜』が目指す世界の多いなる障害になる。だから、あらゆる人員を割き、必ず、討伐する。今も、ピザポテトさんが主導になって必死の捜索をしているわ」

「ぴっ、ピザポテトさん!」

「おう。あのデブはああ見えても人探しのプロだ。何せ、前科持ちのインターネットストーカーだからな!」

「ごほん。やめてさしあげなさい」

「・・・・・いっ、今のは、きっ、聞かなかった事にします!」

「とにかく、彼女は、ナイトストームは、生き返らせた私が必ず責任を以て地獄に送り返すわ。それで、最後に、一番重要な事」

「いっ、一番重要な事??」

「ええ、これから話すことが今日のメインよ。私が、一番ダメージを喰らう報復ってなんだと思う??私が、一番恐れていること。『ヴァルプルギスの夜』にも甚大なダメージを与えられる致命的な一撃」

「・・・・ごっ、ごめん・・・・・わからない」

「それはね、あなたよ。エーデル。ナイトストームが解き放たれてしまった今パトロール中のあなたは誰にも守られていないと言っても過言じゃない。あなたが死んだら私は生きていけないし、そうなったら、自分で言うのも難だけど、『ヴァルプルギスの夜』は世界征服のための重要なピースを失う。だから、あなたには私たちがナイトストームを討伐するまで、どんな手を使っても外出するのを避けて欲しい」

「・・・・・」

「お願い。私には、あなたが不可欠なの。あなたが死んだら私の全てが終わってしまう」

フランが私の手を両手でぎゅっと握り祈るように言った。



「わっ、わかった。けっ、仮病したり、色々してみるよ」


それを受け私はそう返事をした。そして、思った。家から出ないでお家で静かにしている事が一番役に立つなんて。私はなんて情けない無力なんだろう。私を助けるために親友が引き上げてきてしまった怪物。それを送り返すのに親友が、全く関係ない人まで尽力している。それなのに、それなのに、当の私は、・・・・・・。


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