第152話(5-2-5)
『魔女』の身体が眼前まで迫った瞬間、『魔女』が、突然電池が切れた玩具のようにこちらに手を伸ばした体勢のまま固まってプルプルと震えだした。なっ、なっ、何が!?誰かが、助けにきてくれた???とっ、とにかく、今のうちに少しでも離れないと!!
『遘√ワ遘√ワ縲∝ォ後□雖後□雖後□雖後□縲ゅ♀鬘倥>縲∫ァ√°繧峨ル縺偵※縺医∴縺医∴!!!!!』
私たちが離れると、『魔女』は蹲って独り言をぶつぶつ呟いた後、突然雄叫びを上げ再び私たちの方に全速力で迫って来た。さっき何で急に止まったのか分からないが、今度こそ、今度こそ、来る!!
モニカちゃんを後ろに下がらせ、もう一度義手に力を込める。
すると、どこからか勇気が沸き立つような音楽が微かに聞えた。
その音楽が近付いてくるほど、なぜか、力が漲ってくる。
守る。守る。絶対、モニカちゃんを死なせはしないんだ!!!!!!
「ゥうううらあああああ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!」
私は、漲る謎の力に身を任せ、迫り来る『魔女』の顔面に思い切りカウンターパンチを放った。私の放ったカウンターパンチをモロに受けた『魔女』の身体が仰向けに倒れ、ボールプールに沈む・・・・・えっ!? いくらこの『義手』が強靭でも3mはある『魔女』をパンチで沈められないことくらいは分かってる。この漲る力、この心を揺さぶる音楽。もっ、もしかして_____そう思った刹那、力強い音楽と共に巨大なムカデのような『魔女』が空間をぶち破り姿を現した。そして、高らかに咆哮を上げる。
ヨハナさんだ、ヨハナさんが助けに来てくれたのだ!!!!
しかも、今回は背中に翼が付いている!!!
その大きな翼の羽ばたきに合わせ、音楽が響く。
私を奮い立たせる音。多分、これは、私たちのために作られた曲。
『繧ィ繝シ縺ァ繝ォ!!!(エーデル!!!)』
「ヨハナさん!!!!!」
私は叫んだ。
風向きが、確かに変わった。
わかる。わかるんだ。この曲は、『魔人』のクレッシェンドが私たちのために遺した最後の作品。『叛逆の詩』。私は歌に突き動される様に、起き上がろうとする『遊園地の魔女』の方に走り込み、起き上がる前に彼女の身体にヨハナさんの魔法で黒い鎧を纏い、クレッシェンドの魔法で天翼の加護を受けた右脚で、手痛い飛び蹴りをお見舞いする。『魔女』はめげずに無茶な姿勢で体勢を立て直し、私に襲い掛かってきたが、私は後ろにピョンっとジャンプしてそれを避ける。
すると、私の思い描いた通りヨハナさんがやってきて、攻撃を空かした『遊園地の魔女』の身体を巨大な口で攫って行き、そのまま『魔女』の上半身を凄い勢いでボールプールに引き摺って行く。カラフルなボールが次々と黒い血で染め上がる。これで終わりかと思ったが、『遊園地の魔女』はボロボロになりながらも自分の身体を形成する黒いドロドロの一部を槍のように変え、それを何本も生やし、ヨハナさんの顔面を執拗に突き刺しまくる。その槍が何度もヨハナさんの頭の黒い鎧に穴を開け、穴からどんどん赤黒い血が流れ出す。
「ヨハナさん、そいつをこっちに投げて!!!」
このままじゃ危ない!!!私が叫ぶと、ヨハナさんは大きなムカデのような身体を捻じ曲げ口元で暴れる『遊園地の魔女』を私の手前に叩きつけた。そして、叩きつけた『遊園地の魔女』に向かって大きな咆哮を上げ、翼を大きく羽ばたかせ激しく威嚇する。気持ち悪い動きですぐに体勢を取り戻した『遊園地の魔女』はヨハナさんに向かって首を伸ばし負けじと咆哮を上げる。
後ろに私がいるのに。今の咆哮は、ただの威嚇じゃない。
『叛逆の詩』のサビの部分。つまり、私を更に強くする魔法!!!
右脚に力が漲る。
終わりにしよう!!!
「なあああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!」
私は獣のような雄叫びを上げながら助走をつけ大ジャンプし、ヨハナさんとクレッシェンド、2人分の想いを纏った光る回し蹴りを『遊園地の魔女』が振り向くとほぼ同時に彼女の顔面にお見舞いした。『魔女』の頭がブチンッと千切れ跳びボールプールに落ちる。
『縺ゅj縺後→繧ヲ』
それからワンテンポ遅れて頭を失った黒い胴体に付いていた不気味な口が一言だけそう言い残し、ゆっくりと崩れ落ちた。はぁ、はぁ・・・・・・・・・終わった・・・・それにしても、まさか、ヨハナさんが来てくれるなんて、奇跡だ。本当に運が良かった。
「ヨハナさん、ありが_____」
『繧、繧ア縺ェ繧、!(いけない!)』
感謝を述べようとした瞬間、ヨハナさんが叫んだ。何かと思うと、既に黒いドロドロの腕が拳を握ったまま腰を抜かしていたモニカちゃんに向けて全速力で向かっている最中だった。考えるより先に私も走り出していた。でも、今度は間に合ない!!!私も、ヨハナさんも!!!そんな、そんな、そんなそんな!!ここまで来て!!!!
「きゃあああああああああああぁぁああああ!!!!あえ?」
モニカちゃんの悲鳴が途中で素っ頓狂な声に変わった。止める事は出来なかった。でも、確かに見た。全速力でモニカちゃんに向かって行った腕はモニカちゃんの手前で糸が切れた様にボトっと落ち、握っていた物をモニカちゃんに差し出したのだった。
最初に出したあの小さなメリーゴーランドの入ったオルゴール。
でも、モニカちゃんはそれを全く受け取ろうとしない。目の前で人を一人殺され自分自身も恐い思いしたのだから、当然と云えば当然だろう。でも、胸がなぜかキュっとなった。何でこの『魔女』はさっき一瞬止まったのだろう??最後に何て言ったのだろう??分からない。でも、『魔女』はもうピクリとも動かない。それに、もし今突然動いたとしても今はヨハナさんが真上でジっと見張っているから大した抵抗は出来ないだろう。だから、終わったのだ。フジマルさんは・・・・・・・フジマルさんは、救えなかった。救えなかった・・・・・でも、モニカちゃんは、モニカちゃんだけは、ヨハナさんのお蔭でなんとか守れた。
モニカちゃんには忘却薬で全部忘れて貰おう。
こんな怖い記憶なくなってしまえばいい。




