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Magia Lost in Nightmare  作者: 宇治村茶々
第5章 叛逆の賛歌
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第5章 プロローグ

「エッ、エデン・・・・・・なっ、何で逃げなきゃいけないの??あっ、あの人たちはいっ、一緒に悪い怪物と戦ってくれる人じゃないの!?」

「そうだね。彼ら『テンプル騎士団』の目的は怪物である『魔女』の討伐だけじゃない。『魔法少女』である君も彼らにとっては同じ獲物に過ぎないんだ」

「どっ、どうして!?」

「そんなの僕が聞きたいくらいさ。でも、大方、『魔法』を使うなら怪物も人間も同じという事なんじゃないかな」

「・・・・そんな」

「それにしても、まさか、『魔法少女』になって2回目の『狩り』で『テンプル騎士団』と遭遇してしまうなんて、君に運がないのは本当だったみたいだね」

「・・・・」

「ごめんよ、今のは禁句だったかな?」

「いっ、いいよ。本当の事だから」



「ストップ!!」


「わっ、びっ、ビックリした!!なっ、何?!」


「彼らはもう下の階まで来てる。このままじゃ捕まってしまう。こうなったらもうそこの大部屋に隠れてやり過ごせる事に懸けよう」

「・・・・・でっ、でも・・・・・教室の中なんて、そっ、掃除用具箱と教卓の裏くらいしか、隠れる所がないし・・・・・・すぐ見つかっちゃうよ」

「いや、他にも隠れられるところがあるんだ。僕が力を貸すから、僕の指示通りの場所に隠れるんだ」

「でっ、でも・・・・・・」

「大人が3人もいるんだ、分かれて動かれたら絶対に逃げ切れないよ」

「・・・・わっ、分かった、行くよ」





「クソっ、どこに隠れやがったあのガキ!!!」

恐そうな男の人がそう言って、寂れた掃除用具箱を乱暴に閉める。


「あんたさぁ、そんな乱暴な物言いじゃ絶対出て来てくれないよ。お嬢ちゃん、大丈夫だから早く出ておいで。こんな薄暗い場所にいるのは危ないよ。お姉さんと一緒に外に出よ? お姉さんがドーナッツ買ってあげる」


緑色の髪の女の人が優しい口調で言う。物音を立てない様にソっと隣のエデンの方を見る。エデンは必死に首を横に振る。わかってる、わかってる。でも、どうして、私が、こんな目に。死にたくない、死にたくない・・・・・私が死んだら、コマジがパパに殺されてしまう。コマジのために『魔法少女』になったのに。何で、何で・・・・私ばっかり、こんな不幸な目に・・・・・・。うぅ・・・うぅうう。


「あっ」


「んっ、どした?」


「泣き声が聞えた。天井裏」


「ははーーん、なるほど。そこのでかい穴から天井裏に入った訳か。身長的に届かないと思ったが、『魔法』が使える『罹人カガリト』にはそんなの関係なかったな」

「そういう事ね。さぁ、お嬢ちゃん、そこに隠れているのは分かってるよ。恐くないから降りておいで。お姉さんがしっかり受け止めてあげる」

「おーーーこわいこわい」

「黙ってなさい。ほら、お嬢ちゃん、お姉さんと一緒に行こう?そんな所に隠れていたら危ないよ」


「そういえば、ヒエンの奴、さっきから見ねぇけど、どこでサボってんだ?」



『・・・・・彼の者は、ここだ』


男の人がボヤいた後、突然どこからともなくそんな声がして、何もない空間に亀裂が入り、そこから黒い鎧を纏った大人ほどの背丈の二足歩行の怪物が出てきた。その怪物はおもむろに手に持っていた人間の頭を男の人の足元に投げた。ヒィっ!!なっ、なっ、何、アレ!?!?!まっ、魔女!?!?喋る魔女!?!?なっ、何????えっ、エッ、エデン!?!? 口を抑え悲鳴を堪えながら、説明をして貰おうとエデンの方を見る。


「・・・・・これは、マズい事になったね」

エデンが苦い顔をして言った。


「なっ、何がマズいの??」

「それは______」


言葉の途中でエデンの小さい身体に下からナイフのようなものが天井を貫通して突き刺さり、エデンの身体は電池の切れたぬいぐるみのように倒れてしまった。うっ、嘘・・・・・・・天井の小さな穴から見ていた。あの黒い鎧の魔女が投げたのだ。まるで、そこにエデンがいた事が分かってたみたいに・・・・・・・そんな、そんな・・・・・唯一の味方の、妖精さんまで・・・・・・嫌だ、嫌だ、死にたくない、ママ、・・・・・・ママ。




「・・・・・・誰だ、てめぇ?」


『外道に名乗る名など無い』


「人間の言葉を使う魔女。てめぇが噂の『魔人』って奴か。こいつはラッキーだぜ。一度、『魔人』って奴の力を見て見たかったんだ。『魔女』の上位の存在なんだろ。それなら手加減は要らねぇよな。最初から本気で行かせて貰うぜ」


『それには及ばない。貴様は、もう詰んでいる』


黒い鎧の魔女が男の人に向けそう言った瞬間、男の人の下の床が崩れ落ち、下の階から大きな人形の頭が飛び出してきて、海中から襲ってきた巨大なサメみたいに一口で男の人の身体を攫って行き、瓦礫と共にもう一度下の階に沈んで行った。は!?!?!?えっ、!?いっ、今の何?????なっ、なっ、なっ、・・・・・・あの黒い鎧の魔女だけでも恐いのに・・・・・下の階にもっと恐ろしい魔女が・・・・あっ、あっ、あっ。終わりだ、終わりだ・・・・・・コマジ・・・・天国のママ。ごめんなさい。私は、もう駄目みたいです・・・・ごめんなさい、ごめんなさい。



『女、残る騎士は貴様だけだ。貴様は、我が斬る。天が誅を為さぬなら、我らが誅を為そう。〝人誅〟の時間だ』


「_____っ」






『少女、もう大丈夫だ。悪い人間は、みな死んだ。降りて来い。我も先ほど男を攫って行った下の階の怪物も其方の味方だ』


戦いが終わり、女の人を切り伏せた喋る魔女が私に言う。恐い。誰かの意見を聞きたいのに、頼りのエデンはこの魔女に殺されて・・・・・・・どうしよう、この魔女は私を追っていたあの人たちより更に強い。そっ、それに、運良く、ここから逃げられても、下には、別のもっと怖い魔女が・・・・・・・でも、ここに留まっていても、何も変わらない・・・・・・ママ、ママ、助けて。



「サタン、その姿とその口調のままじゃ恐いって」

両肩を抑えただ怯えていると、教室に私より一回り上くらいの歳の金髪の女の子が入ってきて、黒い鎧の魔女に向けて言った。


『むぅ、そうか』

黒い鎧の魔女はそう言うと、身体から黒い煙を巻き上げ、金髪の女の子と同い年くらいの黒い髪の女の子に変わった。えっ!?!?もっ、もしかして・・・・・こっ、この人たちは、私と同じ、『魔法少女』!?!?だったら、本当に私を助けに来てくれた味方!?!?



「あっ、あのっ、あのっ・・・・・・まっ、『魔法少女』の人、ですか?」

天井裏から恐る恐る聞く。


「『魔法少女』???」

黒い鎧の魔女だった黒髪のお姉さんが不思議そうな声で言った。あっ、あれ???ちっ、違う!?!?


「多分女の子の憧れに合せてこいつの担当の『悪魔』が『罹人』の事をそう表現したんじゃない?あなたも小さい頃はアニメの『魔法少女』に憧れなかった??」

「僕は、昔からサムライや忍者が好きだった」

「・・・・・・そうだった。とにかく、『罹人』の事でしょ。そうね、半分正解だし、半分不正解って感じね。でも、あなたの味方には違いないわ。特に証明できるものはないけど」

「証明なら僕がこのクナイで出来る」

黒髪のお姉さんはそう言って、どこからともなくさっきの黒いナイフを出し、それを投げもう一度エデンの死体を刺した。


「ほら、君を殺すのは簡単だ。そのつもりなら最初からそうしてる。僕たちは、本当に君たち『魔法少女』の味方だよ」


「・・・・」


「大丈夫、私たちを信じて」

金髪のお姉さんがそう言って、私が入ってきた大きな天井の穴に手をかざす。


恐い、恐い。人を信じるのは、恐い。でも、黒髪のお姉さんが言うように私を殺すつもりなら、こんな回りくどい方法を、使う必要はない・・・・・・はず、はず・・・・・・・だから、私は、私は、この人たちを信じたい・・・・・信じたい。信じるのは恐い。でも、ここにいても何も変わらない。それなら。



「もう大丈夫。怖ったよね、恐かったよね。もう大丈夫だから」


金髪のお姉さんはそう言って降りて来た私を優しく抱きしめてくれた。ママがパパから私を守る時に言ってくれた言葉と同じ言葉と共に。ママ、ママ・・・・・・・思わず、お姉さんのお腹に顔を埋め泣きだしてしまう。ママ、ママ。私は、私は・・・・・。




「マルグリット、これは何の真似だい???」


顔を埋め泣いていると、突然エデンの声が聞えた。涙を拭って声のする方を見ると、教卓の上にさっき殺された筈のエデンが座っていた。えっ!?



「あら、エデンじゃない。この子の担当はあなただったのね」

「質問に答えてくれないか、マルグリット。これは何の真似だい?」

「知りたい??なら、教えてあげる。あなたへの嫌がらせよ」

「・・・・・こんな事をしても無駄だよ」


「あっ、あの・・・・・・」

「あなた、名前は?」

「あっ、えっと・・・・・わっ、私は、ゲっ、ゲルトートです!!」

「ふふっ、誰かさんにソックリの喋り方ね。教えてあげる、ゲルトート。あいつは、あなたが思っているような存在じゃない。『魔女』は、あなたが戦う宿命の『怪物』は、皆、あいつの言うあなた達『魔法少女』の成れの果て。あいつは奇跡を売って少女を怪物に変える『悪魔』よ」

「えっ!!?!えっ、じゃあ、私・・・・・・怪物に、さっきの下の階から出てきたお化けみたいに、なっ、なっちゃうんですか!?!?」


「そうならないために私たちが来たの。ちなみに、さっきの下の階の怪物は私よ。私たちは、あなたが私たちみたいな怪物にならないために来た」

金髪のお姉さんはそう言ってもう一度私の頭を抱き寄せ、エデンを睨みつける。



「『悪魔』なんて人聞きが悪い。ただの等価交換じゃないか。ゲルトート、そうだろ?僕がいなければ、君の愛犬はあのまま死んでいた。『魔女』になるのはその対価なんだよ。奇跡は、ただじゃない」


「事前にその説明はしたかしら??自分が怪物になって、自分の手で自分の大切な者を破壊するかもしれないって」

「そこまで説明する理由はないね」

「相変わらず不愉快ね。もう消えなさい、エデン」

「・・・・・そうだね、ここに残っても無駄に『器』を消費されるだけだ。ただ聞かせてくれないか???本当は何のためにこんな事をしているんだい???本当は、僕らへの嫌がらせなんかのためじゃないんだろう?」

「いいえ、純粋にあなた達への嫌がらせのためよ。裏切られて、魔女になって、もう一度人間の身体に戻って、仲間が出来て、失って、色々あった。それで、考えたの。誰が一番悪いかって・・・・・本当の敵は、誰かって・・・・・・それが、あなた達。私は決めた。私は、あなた達が決めたルールを否定する。『罹人』を、『絶望』から守る。それが、亡霊の私の、私たちの、使命だって」

「なんて愚かなんだ、マルグリット。全てを救えると思っているのかい?」

「いいえ、全ては救えない。でも、目に映る『罹人』くらいは守ってみせるわ」

「ふっ、そうかい。それなら、好きにすればいい。数人『魔女』になるのを遅らせたところで何も変わらないからね。それじゃあ、また会おう。憐れな、マルグリットちゃん」


エデンは嫌味ったらしくそう言い残し、フっと消え去った。彼女と話す時のエデンは私と話している時のエデンとは全然違った。多分、今のが、エデンの本性。妖精さんは、私を怪物に変えにきた『悪魔』。そう思うと、背筋が冷たくなった。でも、どうしようもなかった・・・・・もし私が彼の提案を断っていれば、私の唯一の心のよりどころの、コマジが・・・・私は、私は・・・・・。



「大丈夫、これからは私たちが守ってあげるから。魔女も私たちが代わりに倒してあげる。だから、もう泣かないでゲルトート」

「・・・・なっ、何で・・・・見ず知らず、のわっ、私なんかに、こっ、こんな良くしてくれるんですか?わっ、私は、おっ、お返しなんて、何も・・・・」

「そんなもの必要ないのよ。それに、さっきも言ったでしょ。これは別にあなたのためじゃない。あの『悪魔』への嫌がらせだから。それと」


「そっ、それと???」


「私の中にいる大切な人が、こうするべきだって言ってるの。その人はとても我儘でね。誰かを守る時にしか『力』を貸してくれないの。だから、私は決めた。彼女と一緒に歩むって。それが彼女への弔いで、私の使命だって」



「・・・・・・マルグリット。君はやはり僕の主君にふさわしい。もう一度、君に忠誠を誓おう。この身、果てるまで、君と、シズカと、共に歩もう」

金髪のお姉さんの話を聞いた黒髪のお姉さんが突然跪きそう口にした。


「・・・・・・急にどうしたの? 気持ち悪いわね」

「ちょっ、ちょっと、今の、かっこいい場面だったのに!そこは、『有難う』とか、『よく言ってくれたわね』とか言って欲しかったなぁ」

「よくいってくれたわ、さすがわがちゅーしーーーん」

「全然心が篭ってない!!」

「あーーーーーもう、面倒くさいわね、あんた!!」


「あひゅっ」

そんなお姉さんたちのやり取りを見て、つい笑い声が出てしまい思わず両手で口を塞ぐ。



「大丈夫、笑っていいのよ。そうやって笑っている顔の方がお似合いよ」

金髪のお姉さんが、私の顔をしっかり見ながら優しく言う。でも・・・・・。


「そっ、そんなに・・・・・みっ、見ないでください。わっ、私の目、変だから・・・・その、ごめんなさい・・・・だっ、だから、みっ、見ないでください・・・」

そう言って、恥ずかしくて右腕で左目を隠そうとする。


「あら、オッドアイなのね」

「・・・・・ごめんなさい、でも、生まれつきで、どっ、どうしようもなくて・・・・・ごっ、ごめんなさい、気持ち悪いですよね・・変ですよね・・かっ、変わってますよね」

「そうね。変わってるわ、あなた」

「・・・・」


「マルグリット!?」



「でも、良いじゃない。変わってる事って悪い事なの?」

「そっ、それは・・・・・・」

「人と違う事は、変わっている事は悪い事じゃない。あなたの目、とても素敵よ。ねぇ、見てサタン、この子、オッドアイよ。羨ましくて堪らないでしょ」


「正直に白状しようか。死ぬほど羨ましい」

「ほら、聞いた?あなたは、あの子が死ぬほど羨ましがる物を生まれながら持ってる。それって、とても誇らしいと思わない?」


「・・・・・」


私は、言葉を失ってしまった。私はこの目のせいで学校では虐められ、家では片方の目の色がママともパパとも違うから、ママが浮気して出来た子どもだと疑われ、虐められる。でも、この人たちは私のこんな目を素敵だと、羨ましいと、そんな事、ママしか言ってくれなかった。それに、『変わってる事は悪い事じゃない』って。この人たちは、天国のママが私を心配して遣わしてくれた使者なのかもしれない。この人たちなら、信じられる。この人たちを、信じたい。私は不幸な少女。でも、この人たちと一緒にいれば、私は、私は・・・・・この人たちに付いて行きたい。



真っ暗闇に差した細い光。




私は、目を開けたままお腹から血を流し横たわる女の人に一瞬だけ目を向けた後、すぐに金髪のお姉さんの方に向き直って、腕をギュっと抱きしめた。私は、私は悪くない・・・・・私は、何も悪い事なんてしてない・・・・・それなのに、この人たちが・・・だから、『罰』が下ったんだ。私も、お姉さんたちも悪くない。


お姉さんたちは、ただ悪者に『罰』を与えただけ。

お姉さんたちは何も間違ってない。私を守ってくれたヒーロー。


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