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Magia Lost in Nightmare  作者: 宇治村茶々
第4章 落日の哀歌
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第141話(4-12-7)

「・・・・・・」



腕から『天装』が落ち、ただの白い棒に戻る。腕に何の力も入らないのだ。いや、力が入らないどころじゃない。何の痛みも感じない。『閃き流』の正統継承者で長剣使いのルミナスですら一度使えば一ヶ月以上両腕が上がらなくなるほどの捨て身技だ。それを大剣でうった後なのに何の痛みも来ない。でも、腕が上がらない。と云う事は、私の腕は、もう・・・・・というか、この後、どうするんだ???死力を出しミスリードを解放できたが、致命傷には程遠い。その上、もうミスリードを抱き上げ逃げるための腕もない。もしかして、もしかして、私は、・・・・・取り返しのつかない事を。


それが、分かると、どんどん頭から血の気が退いて行く。


魔女が私を覗き込みゆっくりと首を傾げ、『さっきの攻撃なんて何ともないよ』と言わんばかりに左手を左右にブラブラと振って見せる。でも、駄目だ。本当に両腕とも何のいう事も聞いてくれない。私のした事は無駄・・・・・・・いや、無駄どころじゃない。私が、無茶をしたせいで誰もこいつの脅威を知る事が出来ず、より多くの犠牲が出るのだ。私は、私は・・・・・・・・・・。


魔女がゆっくりと息を吐いてから、右の拳を天高く振り上げる。もう避ける気力も残っていない。いや、残っていたとしても、この攻撃を避けたところで何になる。無意識に目から涙が零れ落ちる。私はただ目の前の友達を助けたかった。でも、それは・・・間違い、だったの??・・・・ごめんなさい。タナトス。エンヴィ、ザクロ・・・そして、ミスリード。皆、皆・・・・皆。皆、ごめんなさい。


私は、大馬鹿で・・・・・・。





『罰』を受ける覚悟を決め目を閉じた瞬間、流星でも落ちてきたような衝突音が耳を打ち、目を見開いた。視界には、轟音と共に隣の民家の残骸の上に崩れ込む魔女の巨体が見えた。そして、さっきまで魔女が立っていた場所にかなり見覚えのある背の高い成人女性が、柄の長いハンマーのような武器を地面に降ろし凛として立っていた。



「ノ゛ク゛ダぁぁあ゛あ゛あ゛んん゛ん゛゛ざあ゛゛あ゛んん!!!!!!!」


私は叫んだ。ノクターンさんだ!!! 教会最強の剣聖様の次に強い『審問官』で、私を鍛えてくれた先生で、実は、誰よりも後輩想いのノクターンさんが来てくれたのだ!!!!


「お黙り!!!」

「ふぁい!!」


「ラヴィ、あなたはミスリードが担いで少し離れていなさい。話はこいつを片付けた後、ゆっくりと聞かせて貰いましょう」


「・・・・あっ、あの、ごめんない、私、腕が・・・・・・」

私はそう言って肩を竦め、青黒く染まった両腕を彼女に見せた。


「・・・・」


「・・・・」


「随分無茶をしましたね。それなら、傍でお喋りでもしてお互い痛みを誤魔化し合ってなさい」


「あのっ・・・・・・・」


「心配いりません。あなたの先生は、強いですから。それに、」

そう言って、ノクターンさんは黒焦げぐちゃぐちゃになったタナトスを一瞥した。


「今、私は、とても機嫌が悪い」

ノクターンさんはそう言って、『魔鎚』の頭を地面に叩き付ける。すると、軽い地響きが起き、近くのいくつかの民家の窓が崩れ落ちた。私の特訓に付き合ってくれていた時でさえ十分恐かったが、今の彼女の気迫は全くその比じゃない。こっ、これが、本気の、審問官・・・・・・・私は、息を呑む。


とっ、とりあえず、ミスリードの方へ。




「・・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・ノクターンさんは、あんたが呼んでたの?」

「ううん・・・・よっ、呼んでない」

「はああ???じゃあ、何で戻ってきたの?!!?バカじゃないの?!??!」

「でっ、でも・・・・・」

「はーーーー、信じられない。後でお説教だから」

「あっはは・・・・・・」

「何で審問官様がわざわざ下っ端の仕事場に来てくれたのかは知んないけど、運が良かったね」

「・・・・そっ、そうだね」

「多分、もう大丈夫だよ。一緒にここで座って見てよう。加勢したら逆に邪魔で仕方ないだろうしさ」

ミスリードはそう言って、身体をポキポキと鳴らし身体を少しだけ起こした。良かった。彼女は、どうやら無事らしい。とりあえず、今は彼女の言う通りにしよう。私よりずっと強い彼女がそう言うのだから、腕の上がらない私などお荷物以外の何者でもない。今度こそ、私に出来る事はここでノクターンさんの戦いを見守る事だけだろう。



魔女がゆっくりと立ち上がりノクターンさんを睨む。


『蟇ゥ蝠上き繝ウ、繝弱け繧ソ繝シ繝ウ!!!!!』

そして、そう咆え、気合を入れ直すように両手の拳をぶつけてみせた。


「そうして、イキるだけでかかって来ないですか??? 私が、恐い、ですか??」


『闊舌a繧九↑、繝舌ヰ繧「!!!!!』


魔女が怒ったように拳を振りかざす。しかし、ノクターンさんは一歩も動かない。どうするのだろうと少し心配になったが、何の小細工もなく魔女の巨大な拳を『魔鎚』で弾き返した。そっ、そんな、馬鹿な!?それから、何ども魔女が拳を浴びせるが、ノクターンさんはその場から一歩も動く事無く、その全てを『魔鎚』で弾いていく。しかも、ヒビが入っているのは、『魔鎚』ではなく、『魔女』の拳の甲殻の方だ。ノクターンさんが強いのは知っていたが、ここまでだったなんて・・・・・あんなに恐ろしかった私の先生が、味方だと、こんなに、こんなに頼もしいなんて!!!!!


痺れを切らした魔女が身を翻し尻尾攻撃をお見舞いするが、人間離れしたジャンプであっさりそれを避けてみせる。


『縺薙ヮ謔ェ鬲斐a!!!!!!!!!!』


魔女は正面に向き直り、姿勢を屈め悔しそうにノクターンさんに向かって叫ぶ。その後、首をグンっと動かし、私とミスリードの方を見た。えっ? そして、低い姿勢のまま地面を打ち鳴らし、猛スピードで私たちの方に突進してくるではないか!!どっ、どっ、どっ、どうしよう!?!?!当然ミスリードは置いて行けないが、私の腕は、死んでる!!!嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!



『縺舌♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀縺翫♀!!!!!』

すると、またしても魔女の巨体が横に吹っとばされ、通りに転がった。



「私が倒せないと分かると、たちまち弱い相手を狙う。情けない。あまりにも情けない」


「ノ゛ク゛ダぁぁあ゛あ゛あ゛んん゛ん゛゛ざあ゛゛あ゛んん!!!!!!!」

またしても、またしても、ノクターンさんが助けてくれた!!


「・・・・・はぁ、呆れた。両腕が潰れたというのに随分あなたは元気ですね」

「あっ、あは・・・・・・・は、ごっ、ごめんなさい・・・」


「まあいいでしょう。そのまま、そこで見ていなさい。私が、この怪物に『罰』を与えます」

ノクターンさんはそう言って、『魔鎚』の柄を両腕で持った。


魔女は、すぐに立ち上がり、先ほどと同じように姿勢を屈め、ゆっくりと後ろに下がっていく。それを見たノクターンさんは左足を一歩だけ後ろに退き、相対するように姿勢を屈めた。魔女はノクターンさんとある程度距離が離れたところでクラウチングスタートのようなポーズを取った。対してノクターンさんは前に出た足を横にする。ノクターンさんはあの巨体の本気の突進と真正面からぶつかるつもりだ。それは、流石に・・・・・いや、きっと、大丈夫だ。私の先生は、本当は誰よりも優しい皆のお姉さんは、負けない。絶対に。


クラウンチングスタートの体勢を取った魔女が一気にノクターンさんの方に突進して行く、先ほどの突進より更に早く力強い突進、一歩一歩踏み込む度に地面が跳ねる。でも、でも、きっと、ノクターンさんは、負けない!!!!!


帝墜ていつい


ノクターンさんは短く言い、魔女の立派な角が自分の身体にに届くより僅かに先に魔女の頭をカウンターで打つ。頭の甲殻が粉々に砕け散り、鮮血が舞い、肉肉しい真っ赤な頭部が露わになる。



『縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「繧「縺ゅ≠繧!!!!!!!!!』


魔女は立ち上がり両手で頭を抑え、心臓を揺らすほどの地鳴りのような叫び声を上げる。露わになった肉肉しい赤い頭部から、ダラダラと血が流れ落ちる。強い、強すぎる!!!!!私の先生は、皆のお姉さんは、こんなに強い!!!!!


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