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Magia Lost in Nightmare  作者: 宇治村茶々
第4章 落日の哀歌
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第138話(4-12-4)

家を出るとすぐに通りの角の家から傷だらけの目の赤い人間が狼のような唸り声を上げ次々となだれ込んでくるのが見えた。何だ、何だコレ、まるでゾンビ映画じゃないか!



「ミスリード、あなたはタナトスの援護!!」

「おっけ」

「ラヴィは、このままそこで家の後ろから来る敵に対応!!」

「はっ、はいぃ!」

「ザクロはそのまま屋根の上で戦って!!!」

「言われなくても!!」



「私は、正面に行く。屋根の上の3人は押されそうになったら遠慮せず通りに降りてきて!!」

「イエッサー」「あーーーい」「了解」


タナトスは『アンピプテラ』で屋根の上から下にいるゾンビを狙撃し、抜けてきたゾンビをカバーに入ったミスリードが『シュガールの稲妻』で次々と斬り伏せる。ザクロは登ってきたゾンビたちに『メリジューヌ』の酸の霧を拡げながら対応する、たった1人で。彼女の武器の性質上仕方がないが、なんとも言えない気持ちになる。いや、他人の心配なんてしてる場合じゃない!!ちょっと左右を見ているうちに、さっきまでいた家の屋根の上から1人の目の赤い小太りの男性が顔を出している。


「ラヴィにだけもうひとつ言わないといけない事がある」

背中合わせの状態のままエンヴィが言う。


「えっ? うっ、うっ、うん」


「敵が被害者か使い魔か分からないけど全員殺すわよ。今、この状況で何より大事なのは、私たち『仲間』の命。あなたが惑えば、それだけ『仲間』を危険に晒す事になる。それだけは肝に銘じておいて。もし斬ったのが人間だったら、後で私を責めればいい」


「・・・・・・」


敵がすぐそこまで迫っている。敵は、『魔女』に操られた人間かもしれない。でも、私が惑えばエンヴィの言う通り大切な『仲間』の命を危険に晒す。もう泣きごとを言っている暇もない。覚悟を決めないといけないんだ、今、ここで!!!


「わっ、わかった。でも、例えそうだとしても、エンヴィは責めないから!」


私はそう告げ、襲い掛かってくる中年男性のお腹に『天装』を突き刺し、蹴り飛ばす。やらなきゃ、やらなきゃいけないんだ!!!


「あああああああああああ!!!!!!」


そして雄叫びを上げ、道路に倒れ込んだ男性の首を力一杯斬りつける。噴水の様に真っ赤な血が吹き出し、それが顔にかかる。揺らぐな、これでいいんだ。戦い続けるんだ。もしここで私たちが負けたらより多くの被害が出る。だから、これでいいんだ。これで、これで!!


「おおおおおお!!!!」


息つく間もなく次のゾンビに対応する。脚を斬り落とし、体勢を崩させ首を斬る。両腕を刎ね、心臓を突き刺す。足払いをし、無防備になった背中を思い切り貫く。走ってくる自分と同い年くらいの少年の喉をすれ違い様に引き裂く。トゥワイスとモアと同じくらいの幼い少女の顔面を真正面から斬りつける。入り乱れすぎて斬っているのが『人間』だったのか、『使い魔』だったのか、全く分からない。それでも、返り血で真っ赤になりながら、むせ返るような獣臭を自らも纏いながら、一心不乱になだれ込んでくるゾンビたちをひたすら斬り続ける。こんなに人の形をしたものを斬るなんて、心がおかしくなりそうだ。でも、皆に負担をかける訳には行かない。やらなきゃ、駄目なんだ!!!



「ぶにゃあああアアアアアアアア!!!!」


獣のような雄叫びを上げもう一度自分を奮い立たせ、目の前のボロボロのスーツを着た女性のお腹を突き刺し、後ろの人たちごと民家の壁に押し込む。







どれほどの時間が経ったか、無我夢中で戦っているうちに、いつの間にか周りが静かになっていた。私の周りには、今は、何もない。つまり、私が殺した相手は全て『使い魔』だったのだ。良かった、本当に良かった。それにしても、疲れた。呼吸が苦しい・・・・・・そういえば、服についた返り血が消えている。今更だが、どうやら『使い魔』から出た血は身体と一緒に光に帰るらしい。とにかく、なんとか乗り切れた・・・・・皆は!?


そう思い、まず後ろを見ると、エンヴィが倒れた最後のゾンビ2体の頭を叩き潰しているところだった。彼らの頭から真っ赤な血と青い光が同時に噴き上がる。どうやら、エンヴィの方も全部『使い魔』だったらしい。


「クリア」


間もなく左側の屋根の上からタナトスの声が聞こえた。見ると、タナトスとミスリードが仲良く親指を立てていた。ミスリードの白いドレスシャツの半分くらいが真っ赤に染まっているが当人は全く痛そうな素振りをしていないので多分返り血だろう。良かった。どうやら、彼らも乗り切ったらしい。



「はぁはぁ、こっちもなんとか片付いた。ラヴィは生きてる?」

右側からそんな声がして、右側の屋根の上を見ると、ザクロが自分に覆いかぶさった青い光に変わりゆく遺体を通りに落としてきた。彼女も大丈夫だったらしい。良かった。全員、無事だ。



「なっ、なんとか、生きてる!!」

とりあえず、私は答えた。


「あっそ。残念」

ザクロが言った。酷い。




「チャンヴィ隊長。自分、休憩が欲しいっス」

さて、これからどうするのだろうと思って身構えていたところ屋根の上からタナトスが手を上げて言った。


「タナトスの意見に賛成。あーしも、つっかれた」

続けて隣のミスリードも手を上げそう訴える。




「そうね。全員その場で、警戒しながら回復しましょう」


エンヴィは周囲をもう一度確認してから、全員に聞こえる様な声量で言った。正直ホッとした。身体の疲労もそうだが、それよりも個人的には心の方が、かなり来ていた。結果的に誰も人間じゃなかったから良かったが、人の形をした相手をひたすら斬り続けるのは中々心に来るものがある。特にトゥワイスとモアくらいの年齢の少女を斬った時は、もし『人間』だったら、と気が気じゃなかった。



私は民家の壁にもたれ掛かり、そのままずるずる下に落ち枯れた芝にお尻を降ろす。正面のエンヴィは通りに仁王立ちし、未だ当たりを警戒している。ザクロは屋根の上で通りに背を向け腰を下ろしている。タナトスも同じように通り背を向けあぐらをかいて休んでいる。ミスリードは、仰向けになって空を見ている。『魔女』が来る前に少しでも回復をしておかないと。



ん? なんか、家の後ろの方からワンちゃんが息を切らした様な声が聞こえる。向こうにワンちゃんでもいるのだろうか・・・・・って!!この声は、さっきの使い魔たちの!そう気付き、立ち上がって声を上げようとした瞬間、目の前に体長3mほどの紫の禍々しい毛並みを纏った巨大な二足歩行の狼が降り立った。続け様に毛並みが灰色の二足歩行の狼が2体降り立つ。そして、後ろにいる私を無視して前方にいるエンヴィに向け低く大きな咆哮を上げた。


私は慌てて、『天装』を展開し立ち上がる。『魔女』だ、『魔女』が来た!!!

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