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Magia Lost in Nightmare  作者: 宇治村茶々
第4章 落日の哀歌
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第135話(4-12-1)

巨大な重機と沢山の大型コンテナが立ち並ぶ土砂降りの夜の埠頭。煌々と雨を照らす照明灯。そんな中、私は、ずぶ濡れになりながらあるコンテナの後ろから少しだけ顔を出し、炎を見ている。彼女は運がなかった。たまたま立っていたのが火気厳禁のコンテナだったのだ。私は、自分が卑怯などと考える間もなく、『天装』のレーザーで火気厳禁のコンテナを撃ち抜いた。仕留める事は出来なかったが、真下の爆発に巻き込まれて無傷では済まないだろう。私は強くならないといけない。少なくとも今のままじゃ駄目なのだ。彼女には悪いが、2人目の『敗北者』になってもらおう。そう心に決め、『天装』を改めてギュっと握り絞める。


強風に煽られ炎が揺らめく、爆発から数分経つが未だに聞こえるのは激しい雨音だけだ。どんなに耳を凝らしても聞こえるのは雨音だけ。もしかして、もう立つ事も出来ないほど重傷なのだろうか。いや、油断は出来ない。意地悪な彼女の事だ。これで終わりな筈がない。でも、このままでは埒が明かないのは確かだ。思い切って、炎に近付いて見るべきだろうか。もちろん、周りのコンテナに最大限の注意を払いながら。



隠れて相手の出方を窺うのを止めることを決め、ゆっくりとコンテナを出る。心臓が高鳴る。どこのコンテナの陰から彼女が飛び出してくるか分からない。最大限に耳を澄ます。勝ちたい、勝ちたい。私だって、勝ちたい。一歩ずつ踏みしめる様に炎に近付く。炎を正面にし、より耳を澄ます。当たりのコンテナからは何の異音も聞こえない。もしかしたら、本当にもう倒れていて____。




「ラぁああヴィいいいいい゛い゛い゛い゛!!!!!!!」


そう思った瞬間、燃え盛る炎の中から、彼女が、ミスリードが、既に高出力状態になった『シュガールの稲妻』を携え、飛び出してきた。あまりに予想外の奇襲に対応しきれず右肩を少し抉られる。それでも、痛みを堪えなんとか両手で自分の『天装』を持ち次の攻撃を防ぐが、奇襲で抉られた右肩が足を引っ張り全く攻めに転じる事が出来ない。おまけに刃を防ぐ度に、高出力状態になった『シュガールの稲妻』が纏う赤い電流が身体に奔り、全ての神経に、心臓に、ダメージが来る。


雨の中とは云え、まだ身体はところどころ燃えているし、爆発でコンテナの破片をモロに喰らったのか、左目が完全に潰れ眼孔から血を流している。それだけじゃない、左半身を中心に身体もグズグズだ。それなのに、彼女は笑いながら何でもない様に武器を振う。


「あははははははっはははっは」

「_____ッ」

猛攻が止まらない。負けたくない、負けたくない。強くならなきゃいけないのに。強くならなきゃ、強くならなきゃ、誰も守れない!!!


「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

渾身の力を込め、彼女を押し返す。


「いいわ、いいわ、いいよ、ラヴィ!!!」

左の眼孔から血を流し、未だ消えぬ炎で身体を燃やしながら彼女が楽しそうに言い、再び襲い掛かってくる。化け物、化け物だ!!!駄目だ、もう肩がもたない!!!


せめて、せめて、最後に無茶な大技で、良ければ同士討t______。

「ムォ、チャオレイ」


あっ、死んだ。高出力状態の『シュガールの稲妻』から赤い電撃が一気に当たりに放出され、私の身体を貫く。心臓が弾けたような衝撃とほぼ同時に私の意識は飛び去った。







「残念、惜しかったね」

2連敗し戦闘シュミレーターを出た私を目の細い黒髪ロングの美少女が迎える。彼女がミスリードだ。


「・・・・・あっ、あんなの、めっ、滅茶苦茶だよ」

「それ、『メリジューヌ』の酸の霧に毎回自ら突っ込んで行くあんたが言える事?」

「・・・・・・たっ、確かに」

「滅茶苦茶な事するのは、自分だけじゃないって勉強になったでしょ」

「・・はっ、はい。とっ、とっても怖かったです、はい」

「ヒヒヒヒヒっ。惜しかった記念に、何か驕ってあげる」

「いや、そっ、それは、わ、悪いよ!」

「いい、いい、今日はそういう気分だから」





結局、お言葉に甘えて玄関の横の自動販売機スペースまで来てしまった。相変わらずだが、都会の駅でもこんな沢山の自動販売機が並んだ場所はないだろう。飲み物の自動販売機はもちろん、アイス、お菓子、カップ麺にパン、だいたいのものがある。


「あんたがいつも飲んでるのは?」

「えっ、えっと、あっ、あんまり使わないけど、そっ、その、『優しいヨーグリナ』を、たまに、飲むかな」


「ふーーーん。なんかあんたらしいチョイスだね」

彼女はそう言って、『優しいヨーグリナ』のある自動販売機の前に立ち、カードをかざして、それを買ってくれた。なんだかんだで、ミスリードに少しだけ認めて貰えた気がして嬉しい。こうやって、少しずつBクラスの皆と、打ち解け、、



「悪くないね」

ミスリードは、少しも悪びれる様子もなく『優しいヨーグリナ』を自分で飲んで言った。そんな、馬鹿な。新手の虐めだったなんて!!!



「何? 私が買ったものを、私が飲んで、何か、問題でも?」

「・・いえ、あのっ・・・・・でも・・・・いや、何でもないです。もっ、もう、帰ります・・・きょっ、今日は、そのっ、対戦、ありがとうございました」

「あはっ、嘘、嘘。ほんと、あんたはモコと同じでからかいがあるよ。ちょっと、まだ帰らないで」

彼女はいつもの意地悪な笑みでそう言って、自動販売機でもう一度飲み物を買い、それを投げてきた。



ドクターペッパー・・・・これは、ミスリードがしょっちゅう飲んでるやつだ。


「あっ、あの、わっ、私・・・・・・炭酸、苦手で、そのっ」

「苦手で?」

「きk、気持ちは、あのっ、嬉しいけど・・・・・」

「苦手だから、相性が悪いから。そうやって、挑む前から諦めるんだ。いいよ、交換しよ。どうせ、まだ一口しか飲んでないから少し拭けば平気でしょ」


「・・・・・・」


「ほら、交換しよ」


「・・・・・・・・・・・やっぱり、自分で飲む」


そんな事、そんな事、言われたら飲むしかないじゃないか。そうだ。苦手でも、相性が悪くても、逃げたらいけない戦いはきっと絶対来る。最初から諦めちゃ、逃げちゃ駄目だ。覚悟を決めないと。大丈夫。もしかしたら、コーラが駄目なだけで、ドクターペッパーは大丈夫かもしれない。それに、よく考えたら、コーラを吐いてしまったのも随分昔の話だ。


今なら、今なら・・・・・もしかしたら・・・・・。




「・・・・・・美味しい。美味しいよ、ミスリード!!」

私は言った。思ったよりも、全然飲める、それどころか、美味しい!


「あら。煽って飲ませて、マズいって言わせたかったのに、残念」


ミスリードはオーバーにやれやれのポーズを取りながら言った。口ではそう言ったが、もしかしたら、彼女は私に逃げない事の大切さを説いてくれたのかもしれない。虐められた事もあったけど、センスレスと同じで根は良い人なのかも。自滅覚悟で滅茶苦茶な事をしてくるのは自分だけじゃない事、逃げないで立ち向かう事。勝負には負けたが、今回得たものは大きい。



「あっ、あのっ、きょっ、今日は、本当に、ありがとう!」

私は心の底からの感謝を彼女に告げた。


「はーーマズいって言って苦しむ顔が見たかったのに、つまんないの」

彼女はいじめっ子の体でそう言い、私に背を向け自動販売機コーナーを後にする。




「ニーイーランクェイージェンチャン」


そして、最後に『優しいヨーグリナ』を持った片腕を上げ背中でそう言った。中国語はさっぱりだが、多分、褒められた気がする、多分!!


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