第132話(4-11-13)
「あっ、あのっ!!」
私は言った。いや、目ぇ恐っ、この人。
「エーデルが届けて欲しい『物』があるって_____」
「・・・・エーデル??? 誰???」
「えっ、えええーーーーあっ、あのっ、この子に見覚えは??」
私は慌てて、背中でぐっすり眠っているエーデルを女に見せた。
「なんだ、プリンセスじゃん。あーーーーそういえば、プリンセスの名前がエーデルだったの様な気がするね、そういえば」
エーデルの姿を見た途端、女から殺気がフっと抜けた。良かった。それにしても、エーデルはなぜ『プリンセス』って呼ばれてるの・・・・・まぁ、確かにプリンセスって呼びたくなるくらい可愛いけど。
「んで、何、届けたいものって、お前自身?」
「違います、これです」
私はそう言って、アタッシュケースに詰めた四肢を捥がれた少女の形をした怪物を女に見せた。
「わお。酷い事するね」
「こいつはエーデルの教会の友達を殺した『魔女』です。こいつは、邪悪な『魔女』ですが、遠くから『魔女』を呼び出す固有魔法を持ってるみたいなんです。それで、エーデルは憎いけど、こいつが『ヴァルプルギスの夜』の皆に役に立てるかもしれないって言って・・・・」
「へぇーーー面白いじゃん」
女はそう言って、怪物を両手で抱き上げた。
「って、何コイツ、キモっ・・・・・何で右目が口になってんの?」
「それは、謎です」
「まぁ、いいや。とりあえず、『物』は受け取った。後はプリンセスに聞くから。誰だか知らないけど、お疲れ様。もう帰っていいよ。タクシー代は後でプリンセスの相方から貰うから」
「まっ、待って下さい。エーデルは病院に連れて行かないと!!」
「それなら平気。うちにチートレベルの再生魔法使える人がいるから。さっ、プリンセスを渡して」
「・・・・・」
「・・・・・何? 早く渡して」
「あのっ、今から電話番号書いた紙を渡すので、落ち着いたらエーデルに電話貰えるように言っておいて貰えませんか!?」
「えっ、嫌だけど。あーでも、ソウルティア1個貰えたらやる気になるかも」
「最低」
私はそう言いながら、鞄からソウルティアを1個だし彼女に渡した。
今日は沢山あるし、背に腹は代えられない。
「あれ。冗談だったのに。毎度あり」
「冗談だったなら返して下さい!!」
「嫌。これはもう私の物だから」
「・・・・」
「・・・・」
私、この人、だいぶ嫌いだ。
「まぁ、とにかく書くならさっさと書いて」
「言われなくても。はいっ!」
「はい、確かに。それじゃあ、さよなら、誰かさん」
「待って!!」
「まだ何か!?」
「エーデルから『ヴァルプルギスの夜』は『罹人』の仲良しクラブみたいなものって聞いたんですけど、本当ですか!?」
「・・・・・・現状、否めない」
女はしばしの沈黙の後、渋い顔でそう口にし、エーデルと怪物の入ったアタッシュケースと共にボシュンっと音を立て黒い煙となり消えてしまった。
少し引っ掛かる物言いだったが、少なくとも今はエーデルの言う通り『仲良しクラブ』の一面が少なからずあると云う事だ。それなら、私やヴァレリアやミンディがグループに入れて貰える余地はあるかもしれない。幸い私たちは強い『魔法』に恵まれ、ソウルティアに困る事はあまりない。でも、完全にない訳ではない。どこかにセーフティーネットのような物が必要だとずっと考えていた。『ヴァルプルギスの夜』は私たちのセーフティーネットになってくれるかもしれない。今度、エーデルに2人を合わせた上で相談してみよう。
とりあえず、エーデルはもう大丈夫だろう。後は、ランマルだ。突然、置いてかれて気が狂ってないか心配。急がないと。私は全速力でランマルを置いてきた公衆トイレに向かった。
は??????
ランマルがいない!?!?!
嘘、嘘、嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!!!
「ランマル!!!ランマル!!!どこにいるの!?!?」
「ここですよーー」
「うわっ、ビックリした」
後を向くと、ランマルを連れたミンディが立っていた。
「良かったわねぇ。おねーちゃん戻って来たよ」
ミンディはそう言いながら、ランマルの顔をくちゃくちゃに撫でる。
「有難う、ミンディ。結界、見つけちゃって・・・・・・」
「でしょうねぇ。そんな傷だらけになって、それに、その右脚・・・・・」
「あっ、あー、『罹人』には傷消しも義足もバレバレだね。ちょっと、しくじちゃって」
「そんななに手強かったのね」
「うん。まあね、でも_______」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!!」
私が話をしようとすると、ヴァレリアが公園の入り口の方から全く人目を憚る事なく大声を上げながら走ってきた。
「はぁ、はぁ・・はぁ。めっ、メロエ・・・・・良かった。無事で良かった」
「ヴァレリア、あなたこそ大丈夫?」
「僕は大丈夫。ちょっと、全力疾走で君を探し回ってただけだから。はぁ、うん」
「心配掛けてごめんなさい。今から二人に何か驕るよ」
「そんなのいいよ。それより、酷い怪我じゃないか。それに右脚・・・・・今回の魔女はそんなに強かったのかい!?」
「うん。凄く強かった。でも・・・・」
「でも?」
「続きは、何か食べながらにしない? 頑張ったからお腹減った。2人は何か食べたいものはある?」
「私は、2人に合せるわ」
「うーーん。僕も、2人の食べたい物でいいんだけど、まあ強いて云うならテキサスバーガーが食べたい気分な事もない事もないね」
「そう。じゃあ。ネクストバーガーで決まり」
「イエス!!」
「じぇさー、ひゃっきのひゅじゅきなっ___」
「ヴァレリア、お口が終わってから喋りなさい」
公園のベンチで口をモゴモゴしながら喋るヴァレリアをミンディアが叱る。いつもの光景。全然学習しないヴァレリア。
「ゴクン。うん。それで、今回は何があったの?君がそんなに傷を負うなんて」
「こいつらと、戦ってた」
私はそう言って、鞄一杯のソウルティアを二人に見せた。
「えっ、何コレ、ヤバイ!!!」
「凄いわねぇ、これは」
「これ、全部、1人でやったのかい!?!?」
「それがね、1人じゃなかったのよ。誰と一緒に戦ったと思う!?」
「まさか、・・・・・・メロエ、あなた・・・・・・」
「そうなの、エーデル!!!エーデルが一緒に戦ってくれたの!!!」
「嘘でしょ!?エーデルちゃんは『テンプル騎士団』なんだよね!?それなのに共闘したの!?」
「そう。そう!!しかもね、しかも!!!お腹の傷の事を正直に話したら、事故だったなら、気にしないって言ってくれたの!!」
「待って待って待って。いくら何でも妄想がすぎるよ、メロエ。ミンディアもなんとか言ってやってよ」
「うーん、仮にその話が本当だとしたら、かなりマズいわね。もうその子があなたの事を教会に報告しちゃってるかも」
「大丈夫、エーデルはそんな事しない」
「ええーーー!!何、その自信、恐い!!」
「エーデルは、『テンプル騎士団』だけど、『ヴァルプルギスの夜』って云う『罹人』のグループのメンバーでもあるらしいの、だから、本当にそれは大丈夫」
「待って、待ってよ。じゃあ、その子はその『ヴァルプルギスの夜』って云う組織から『テンプル騎士団』にやってきたスパイだったって事!?」
「そうじゃないらしいけど、どうして危険を冒してまで『罹人』のグループに入ったかは聞けてない」
「はぁ・・・・・・・・・・つまり、あなたが好きになった相手はただの『テンプル騎士団』より更に難儀な子だった訳なの?」
「うん、ごめん。でも、今回の事で、もっと好きになっちゃって・・・」
「あちゃーーー」
「どうせ本気で止めても諦めてくれないのよねぇ?」
「・・・・・・うん。好き。結婚したい。もっと一緒にいたい」
「剥ぎコラ作って、●●っちゃうくらい好きだもんね」
「その話したら殺すって言わなかったっけ??」
「ごめん、つい」
「まぁ、それはそうとして。少しその子と話をしてみたいわね。『テンプル騎士団』が罹人のグループに入った理由も含めて。今ある情報だとあまりにも得体が知れないもの」
「それは言えてるね」
「それなら、丁度良かった。今度、私もエーデルに『ヴァルプルギスの夜』の事を色々と聞こうって思ってたから。罹人同士の相互扶助組織なら、私たちも仲間に入れて貰えないかって。セーフティーネットはあって困るものじゃないでしょ?」
「確かにそうね。会うのが楽しみだわ。でも、大事なところを暈したり、嘘をつくような人間なら、諦めるってそれだけは約束して」
「・・・・・・・」
「お願い、約束してメロエ」
「・・・・・わかった、約束する。エーデルはそんな人じゃないから」
「そうである事を私も願ってる」
「ねぇ、メロエ。ところで、ランマルに少しお肉を分けてあげてもいいかい?」
「駄目!!!人間の食べ物はあげないでって何遍言えば分かるの!?!?」
「だって、見てよ、この物欲しそうな目!!!」
「負けないで!!!」
「ふふふふっ、」




