第131話(4-11-12)
「『ヴァルプルギスの夜』って?」
メロエが言った。
「うっ、うーーん。かっ、『罹人』の、なっ、仲良しクラブ、み、たいな?」
「『罹人』の仲良しクラブ!?」
「あっ、でも、・・・・・ボスは男の人だし、『罹人』じゃない人も、いて、絵本の挿絵を、描いてるアンドロイドの人も、いて__」
「待って待って、何でエーデルが『罹人』のグループと関係があるの!?エーデルは『罹人』じゃないんだよね!?」
「うっ、うん・・・・・その、・・・・わっ、私に初めて出来た友だちが、『罹人』で、その、その子がグループに入る時、ついでに、私も、入った、みたいな・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「僕を、無視すっ______ぶぎゃ」
何かを言おうとした怪物がメロエにお腹を踏まれた。
まあいいか。
「つまり、エーデルはその組織から『テンプル騎士団』に偵察に来たスパイって事!?」
「・・・・・ちっ、違う」
「なら、どうして、そんな危険な真似を、そんなのバレたら即刻死刑じゃない!」
「そっ、その話は、あっ、後でいい?どっ、どうして私も、『ヴァルプルギスの夜』に入った、か、そのっ、くっ、詳しく話すと、なっ、長くなるから・・・・そのっ、私の身体が、動くうちに、この『怪物』を『ヴァルプルギスの夜』に届けないと・・・・・・」
「えっ、うん、分かった。まだ聞きたい事が山ほどあるけど、とにかく、その『罹人』のグループなら、この『怪物』を制して利用できるだけの力があるのね!」
「・・・・そっ、それは、間違いない、と思う」
「ふふっ、『ヴァルプルギスの夜』はあなたが仲間になって、とっても幸運ね」
メロエはそう言って、手元から手のひらサイズの鉄の箱を出し、それをカチカチと弄ってから地面に投げた。その箱はガキンガキンと音を立てながら変形して銀色の大きめのアタッシュケースになった。凄い。本当に何でも出てくる。
「あんた、まだ意識ある?」
アタッシュケースを出したメロエが『怪物』の襟元を両手で掴み上げながら言った。
「・・・・・こっ、殺しゃないで、くだしゃい」
「話聞いてた?殺さないから。でも、意識があると運びにくいから寝てて」
メロエはそう言って、『怪物』の頭を道路に何度も叩き付ける。
「寝た?」
「・・・・」
「寝たね。それじゃあ、運ぼうか」
メロエは四肢を捥がれ意識まで飛ばされた『怪物』を強引にアタッシュケースに詰め込み始める。メロエはメロエで中々乱暴だが、スリーの事を想い出すと、どうしても同情する気にはなれない。こいつは、私の大切な友達を奪った『怪物』。でも、この『怪物』が、私の『罹人』の友達を助ける事になるかもしれない。まだ心が揺れているが、もう決めたのだ。決めてしまったのだ。
「・・・ごっ、ごめんね」
私は言った。私は、私のせいで片脚が義足になってしまったメロエにおんぶして貰いながら帰り道を進んでいる。
「だーーーーかーーーら、エーデルが謝るのはなし!!全部、私のせいだから」
「そっ、そんな事・・・・・」
「あーもう!ミズカケロンになるからこれ以上この話はなし!!」
「みっ、ミズカケ、ロン?」
「えっ、ああ。お互い主張を譲らず一向に進まない議論って意味ね」
「そっ、そうなんだ・・・・・ごっ、ごめんね、わっ、私、学校に途中から、行かなくなって、だから、そのっ・・・・まっ、まだ知らない言葉が、沢山あって・・・・」
「マヂ?」
「まっ、まじ・・・・・・・」
「・・・・・色々あるんだね、エーデルも」
「うっ、うん」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・・・エーデル、生きてる?」
「・・・・」
「エーデル!?」
「わっ、はい!」
「良かった。急に静かになったから死んだかと」
「ごっ、ごめん・・・でも、凄く、ねっ、眠い・・・・・・」
「エーデル・・・・・」
「そっ、そうだ。わっ、私が気絶した、時のために・・・・先に『迎え』の呼び方、教えておくよ」
「『迎え』?」
「うん。『ヴァルプルギスの夜』の人に迎えに来てもらうための。ちょっと、降ろして」
そう言って、私は自分のポーチからスケジュール帳とペンを出した。
「・・・・・」
瓦礫をぶつけられた時の衝撃でスケジュール帳とペンが粉砕している。
「ペンなら、あるけど」
そんな私を見て、メロエがベルトから棒状のパーツを引き抜きそれをペンに変え私に手渡してきた。逆に何なら出せないんだろうってレベルで何でも出てくる。
「あっ、ありがとう」
私はそう言って、グチャグチャに潰れたスケジュール帳から白紙のページを千切り取りそこに『ヴァルプルギスの夜』のシンボルを描く。身体が痛い。眠い・・・・・・。
「エーデル!?」
メロエの声で、なんとか目を覚ます。
「ごっ、ごめん・・・・・そっ、それで、外に出たら、こっ、この紙に、魔力を込めて、そっ、そうすれば、むっ、迎えの人が来ると思うから・・・」
「わっ、分かった。それじゃあ、後は私に任せて。私が説明するから。エーデルは少し休んで」
「いっいいの?」
「当たり前」
「あっ、ありがとう。寝ている内に亡くなったら、ごっ、ごめんね」
「それは許さない」
「あっ、アハハハハ・・・ゲホっ、ゲホっ・・・・」
「・・・・・」
とりあえず、人目のない路地に出た。さっさと、化け物を組織に預けて、エーデルを病院に連れて行かないと。紙に魔力を込める。何でもいいから早く来い。早く、早く、早く・・・・あー遅い、遅い、早く・・・・早く、来い!!!!私は紙に力一杯の魔力を込める。
まだかまだかと待っていると、不意にボシュンっと音が鳴った。前を見ると、目の前に黒く禍々しい煙を纏った黒いフリルブラウスを着た女がこれ見よがしに両手を広げたポーズで立っていた。
「ったく。私を呼んだのは、誰かな?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「お前、誰?」
女が鋭い目つきで私を睨みつけながら冷たく言った。ノリノリで登場した瞬間とは打って変ってその眼には強い殺気が見える。ぜっ、全然、仲良しクラブのメンバーって感じじゃないんだけど、エーデル!?!?




