第130話(4-11-11)
終わりだ。お前が!!!
私は『絶叫の魔女』をカッと睨み付け、右腕にメロエに貰った魔力を込める。信じた通り、あの時と同じように、私の右腕の肘から下が唸り声を上げチャーンソーに変わる。
「ああああああああああああ!!!!!」
私は叫びながら、スリーの仇のお腹を〝渾身〟の力で下から真っ直ぐに引き裂いていく。
『縺弱<繝、縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠縺ゅ≠!!!』
『絶叫の魔女』の本物の絶叫が灰色の空に轟き渡る。鼓膜を破壊されそうなほどの轟音に堪らず両耳を手で塞ぐ。それでも轟音は体中に、心臓にまで、響いてくる。これじゃあまるで音響兵器だ。でも、それは長くは続かなかった。唐突に絶叫が止み、『魔女』の身体が私の横に倒れ、ゆっくりと青い光に変わり、やがて一人の人間の少女に返った。
私は腕を元に戻し、飛ばされた『天装』を拾い直して、すぐさま彼女の元に戻る。
・・・・・・・なんだ、コイツ・・・・・・本当に『人間』??
私の前に倒れている少女は大方『人間』だが、明らかに『人間』とは違う部分があった。左目が、左目があるべき場所にもうひとつ口が斜めについているのだ。そっちの口からも血と涎を垂れ流している・・・・・・・恐い。なんだ、こいつ。
『よくも、よくも、・・・・よくも騙したな!』
目の方の口から地獄の悪魔のような低いエコーの掛かった気持ち悪い声がした。でも、逆に好都合だ。最初から人間じゃなかったのなら、余計躊躇わなくて済む。この臆病で、卑怯者の怪物は、優しくは、殺せない!!!
まず、両脚を切り落とす。
『天装』は恐ろしい武器だ。魔法など纏わなくても力を込めればたった一撃で無防備な少女の片脚など叩き斬れてしまう。獣臭くてドス黒い血が切断面から吹き出し、先ほどの絶叫ほどではないが、またうるさい悲鳴が上がる。人間と悪魔の声が重なった気持ち悪い声。でも、気持ち悪い、うるさいとしか思わない。次は、左脚。
こんなに誰かを憎いと思ったのは初めてかもしれない。
次は、腕を・・・・・
「まっ、待って!!!」
今度は人間の口の方が喋った。
私は無視して、右腕を切り落とし、彼女の背中にあるドス黒い血だまりを拡げる。
「おっ、お願い・・・・・・もう許して・・・・・」
右目から涙を流し、左目の口から涎を垂れ流しなら怪物が言う。めくれた黒いスカートから覗いた無地の白いショーツが灰色に湿っていた。恐怖でお漏らしもしてしまっているようだ。でも、関係ないし、許す気もない。スリーは、私にとって大切な、大切な、友達の一人だった。そんな彼女の命を、罠に嵌めて残酷に奪った。それをどうして許せるだろうか。
「しっ、仕方ないじゃない!!やらなきゃ、やられる!!それが『テンプル騎士団』と『魔女』の関係でしょ!!」
「お前のやり方も、自分だけすぐ逃げる姿勢も、全てが気に喰わない!!」
私は大声でそう言い返し、最後の左腕を叩き斬る。
「おっ、お願い、、命だけは、どっ、どうか、おっ、お慈悲を・・・・」
顔中を涙と涎でボロボロにしながら怪物が言う。
「黙れ、お前に慈悲はあったか!!」
私は『天装』の刃を怪物の首に当て叫ぶ。
「そっ、そうだ!!僕は、僕は、役に立てる!!だから、殺さないで!!」
怪物が言う。どこまでも生き意地まで汚いやつ!!
「何で、『テンプル騎士団』と『罹人』が仲良くしてんのか、知んないけど、僕の、僕の力を使えば、2人とも得を出来る!!」
「・・・・」
「ぼっ、僕が、魔女を呼んで、あんた達が、それをた倒すの。そっ、そうすれば、彼女はソウルティア不足で『魔女』に堕ちる事はないし、あんたは、お小遣い稼ぎが出来る!!『テンプル騎士団』って、ソウルティアを換金して貰っているんでしょ!?!?どう???どう???悪くないよね!?!?」
「・・・・・・腕も脚も全部斬られたのに、よくそんなに喋れるね」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・・ねっ、ねぇ、真剣に考えて。かっ、『罹人』にとって、ソウルティア生命線なんだよ!?あの子、あんたの大事なお友達なんでしょ!?!もしあの子が『魔女』に堕ちたら、間違いなく、今ここで僕を殺した、あんたのせいだよ!?それでもいいの!?!?ねぇ、僕たち、協力できると思わない!?」
「・・・・・」
答えに困っていると、エンジン音がしてメロエが飛んできた。
「メロエ、あの亀は?」
「なんとか」
メロエはそう言って、右手のノーブルティアを私に見せた。
『あーーーークソ、これだから黄色人種は。全然役に立たない!!』
怪物が目の方にある口で口汚く言う。
「何この不愉快で気持ち悪い生き物」
「・・・・・分かんない」
正直に言った。
「事情はよく分らないけど紛いなりにも人の形をしてるし、私が殺ろうか?」
「大丈夫、自分d」
「ねっ、ねぇ、青緑の髪のあんた、あんたはさ______」
怪物は私とメロエの会話に割り込んできて、メロエに私にしたのと全く同じ提案をした。
「いや、今日みたいにこんな大量に呼ばれたら堪ったもんじゃないんだけど。要らない、要らない。友だちに2人『罹人』がいるけど、それでも手に負えないかもしれないし。メリットがリスクに全然見合わない。まぁ、もっと多くの、それこそ、あんたが今日呼んだ魔女よりも多い『罹人』を集めた『罹人』のグループでもあれば、話は別だろうけど、そんなグループ私は知らないから」
メロエが言った。ん?? 今日呼んだ魔女よりも多い『罹人』を集めた『罹人』のグループ・・・・・・・『罹人』のグループ・・・・・フラン、ヴェンディさん、カーラさん、モロクさん、ワープさん、アリスさん、トランプさん、トゥワイスにモア、名前を忘れてしまったが、どこかの会社のCEOのお姐さん、ヨハナさんも『罹人』としてカウントしていいだろう。他にも名前を聞いてない『罹人』の人が一杯、一杯・・・・・。
『ヴァルプルギスの夜』ならこの怪物を使えるかもしれない。
この怪物がいれば、皆が救われるかもしれない。
あそこには怪物が呼んだ『魔女』を全て倒すだけの力がある。
でも、スリーの仇をこの手で逃がすなんて・・・・・・。
でも、あんなに私に良くしてくれた『ヴァルプルギスの夜』の皆がソウルティアを充分に分かち合えなくなって、仲間割れを始め、次々と『魔女』になる未来を想像すると・・・・多分、いや、きっと、この怪物は、本当に使える。役に立てる。でも、それはスリーの仇に、教会の宿敵に、生きる道を与えてしまうと云う事になってしまう。でも、でも、・・・・・・でも、でも・・・・でも・・・・。でも・・・・・・決めなければいけない、選択肢は2つしかない。決めなければいけないんだ、今ここで。
「エーデル、大丈夫? やっぱり、私が殺そうか??」
「ううん、平気。こいつは、この怪物は、、、」
「『ヴァルプルギスの夜』に引き取って貰う」
私は言った。言ってしまった。




