第126話(4-11-7)
お終いだ。
私が目を瞑ろうとした瞬間、メロエの肩や腰から白いアームが伸びそれぞれが半透明のシールドを展開し、パチュンパチュンと降り注ぐ赤い閃光を全て防いでいく。凄い!!凄過ぎる!!でも、このシールドどこかで見た事がある気がする。いや、今はそれどころじゃない。確かに攻撃は防いでいるが、こうやって防いでいる間にもまだまだ新しい宇宙飛行士が球体から降り立っている。このままではジリ貧だ。何か、私に出来る事は。
「エーデル、煙幕を焚くから私がいいって言うまで目を閉じて息を止めてて!!」
シールドがレーザーを弾く音の中、メロエの声が聞こえ私は目を瞑ってグっと息を止めた。それと同時にフシューーーとガスが漏れる様な音とバイクのエンジンを噴かすような轟音が響いた。何も見えないが、メロエが私をだき抱えてフロウエンジンで浮き上がったのが分かった。シールドがレーザーを弾く音がどんどん少なっていき、やがて、消える。
「もういいよ!」
目を開けると、私はメロエに抱っこされ知らない通りの遥か上空を飛んでいた。
「わっ、わっ・・・・わっ!!」
「ちょっ、ちょっと、暴れないで!!今、降ろすから!!」
「ごっ、ごめん・・・・・」
「・・・・・一旦、そこのスーパーで作戦を立てましょうか」
通りに降りた後、メロエが言った。
「はーーーーー、しんどい」
完全に廃墟となったボロボロのスーパーに入るなりメロエはそう言って、サッカー台にお尻を乗せそのまま横になった。
「・・・・・」
「・・・・・」
「ねっ、ねぇ、やっぱり・・・・」
「そういう意味で言った訳じゃないから。エーデルが死んだら、私、自殺するから、そのつもりでいて」
「そっ、そんな」
「マジだから。それに、私は、エーデルが信じてくれる限り負けない」
「・・・・・分かった。信じてるよ」
「ありがとう。それにしても、エーデル怪我は平気?」
「えっ、うん。今のところは・・・・」
「そう、それじゃあ、いまのうちに魔力を足すから来て」
「うっ、うん」
そう言って、サッカー台の方に行くとメロエはシュパっと身体を起こし、サッカー台に座ったまま私の頬に優しくキスをした。ただ魔力を送るための行為だと分かっていても、読モに選ばれるほどの容姿の子にキスされるのは、なんだか胸がドキドキしてしまう。
再び体に魔力が宿ったのを感じる。
「メロエ、メロエは大丈夫?」
「私? 私は大丈夫・・・・・いや、大丈夫じゃないかも」
「えっ?」
「エーデル、少しお願いがあっ・・・・ああああああああ、クソがああああ!!!」
メロエは話しの途中で鬼の形相になり、目の前の私を押しのけ天井にさっきの四角い銃を向け、それを乱射する。天井に張り付いていた体長2mほどの女鹿の頭を付けた巨大な蜘蛛がカチャカチャと気持ち悪い音を立てながら気持ち悪い動きでそれを避けていく。
「死ね死ね死ね死ね死ね!!!!」
メロエは天井を動き回る蜘蛛を追う様に撃つがまるで当たらない。
___ッ。そうしている間に宇宙飛行士が2体中に入ってきた。
「メロエ、あいつらは任せて!!」
私は四角い銃を乱射する音に負けないくらいの大声で言った。
「任せた!!」
一瞬だけこちらを見たメロエが言った。
メロエが「任せた」と言ってくれた。それだけで、嬉しかった。
私は、ただの足手まといじゃない!!私はメロエのくれた魔力を脚に乗せ、猛ダッシュで2体の宇宙飛行士の前に立ち塞がった。2人がレーザー銃を構える。でも、遅い!!!
「カマイタチ!!!」
私は叫び、2人が持っていたレーザー銃を同時に破壊する。これでクセがついてしまったら困る、と思う程、身体が軽く、無茶が利く。もしメロエから魔力を貰っていなかったら今の技だけでも腕がビリビリだっただろう。でも、今日は、今だけ違う。
銃を破壊された宇宙飛行士たちは脇のホルスターから青いビームサーベルのようなものを取り出し、構える。私は弾かれる様にその内の1体に斬りかかる。防がれるが、どうやらパワーはそこまでないらしい。これなら、このまま押し切れる!!!私は自分でも信じられない様な機敏な動きとパワーで2体のビームサーベルを同時に捌きながら隙を伺う。
「そこ!!」
1体の横薙ぎを伏せて避けながら、もう片方の左脚を斬る。倒れていない方の光の刃を受けながら立ち上がり、力任せに後ろに弾き飛ばし、戻ってくるタイミングに合わせて、
「迅雷!!!」
私は使い魔が防御態勢に入るよりも先に、高速で前方にジャンプし彼のわき腹に大きな一閃を入れた。息つくまもなく脚を斬った方の宇宙飛行士の頭部をローキックで蹴り飛ばし、仰向けに倒してから。ヘルメットに力一杯天装を突き刺す。すぐに、それを抜き取りもう一体の方にもトドメを!!
「らああああああああああああああああ!!!」
私は思い切りの力を込め、宇宙飛行士の首元めがけ『天装』を振った。すると、『天装』は再び唸りを上げ禍々しいチェーンソーとなり、宇宙飛行士の首を、防ごうとするビームサーベルの刃ごと攫って行った。
宇宙飛行士2体が光に帰ったのを見送り、すぐ戦闘音の聞こえる方に向かう。
音の先では女鹿の顔を持った蜘蛛が4本の脚を鎌のように使い、陳列棚を破壊しながらメロエに迫っていた。白いアームから展開したシールドが出る度に破壊され、メロエ自身も2本の脚をカッターナイフのような剣で防ぐので精一杯みたいだ。明らかに最初よりメロエのパフォーマンスが落ちているように見える。多分、多分だが、魔力を分けると云う行為は、メロエが私に伝えたよりもずっと消耗する行為なのかもしれない。きっと、気を遣わせないために・・・・・・だったら、私が、私が貰った分動かないと!!!!!倒せないにしても、私の『天装』のレーザービームで隙を作る!!
「こっちだあああああ!!」
私は『魔女』の気を引けるよう敢えて大声で叫び、メロエの魔力を受け変身した『天装』のスイッチを弾いた。すると、『天装』から獣の悲鳴のような甲高い音が鳴り、刀身がパカっと割れ、中から見た事のない禍々しい砲頭が姿を現し、そこから真っ白な極太レーザを放たれた。
えっ、何コレ?? 恐い
私が放った、真っ白な極太レーザーは、目眩ましどころか『魔女』の身体の大半を穿ち抜いた。残った身体の一部と、胴体の大半を失った6本の脚が無気力に床に落ちる。
「いっ、今の、エーデル?」
メロエが後ろを向き恐る恐る聞いてきた。
「たっ、多分」
「・・・・・『天装』って、凄いのね」
「えっ、いやっ、いつもは、あっ、あんなの出ないよ? めっ、メロエが魔力を分けてくれたお蔭、だよ」
「ふふふふっ、それなら尚更エーデルのお陰だね。エーデルが私の魔力を強く引き出せるのは、エーデルが私を信じてくれてるお蔭だよ」
「そっ、そうなの??」
「うん。話すと長くなるから省くけど『リンク』ってそういうものだから。ありがとう、エーデル、本当に助かった」
メロエは屈託のない笑顔で言った。笑顔が眩しい。
自分でも驚いたが、役に立てたなら良かった。
なんだか、少しだけ自信が湧いてきた。
私たちなら、私たちなら______きっと、この『灰色の街』を抜け出せる。




