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Magia Lost in Nightmare  作者: 宇治村茶々
第4章 落日の哀歌
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第125話(4-11-6)

「エーデル、腰の方に力を込めてみて」

メロエに言われた通り、腰にグっと力を込めてみる。


しかし、何も起きない。


「流石にフロートエンジンは無理か。友だちの『罹人』は出せたけど、やっぱり、元々の魔力がないと駄目なのかも」

「なっ、なんか、ごめんね・・・・・・」

「大丈夫。それに、よく考えたら初見で扱うには少し難がある装備だし」

「そっ、そっか」

「うん。だから、普通に歩いて行こう」


メロエはそう言って。私の手を取り、出口の商店がある方へ一緒に歩き出した。




「だれかいるの????」



当たりをくまなく警戒しながらゆっくりと歩みを進めていると、不意に出口の通りに続く大通りの方から男の子の声が聞こえた。


「エーデル、今、男の子の声が!」

「待って、メロエ、多分・・・・・・違う」

私は男の子の声のする方へ駆けだそうとするメロエの腕を引っ張り彼女を引き止めた。


「どういう・・・・」

「めっ、メロエと会う前に、そのっ、メロエの声を真似した、魔女に会った。多分、そいつだと思う。こっ、この空間に入った人の声を真似出来るの、かも。いっ、一応、万が一のために、角から、ちょっ、ちょっと覗いてみよう」

私はそう言って、メロエと一緒に薄暗い建物の陰に隠れながら、こっそり通りを覗いた。



「めろえ、めろえ・・・・・おねがい、たすけて・・・・うごけないの」

通りを優雅に泳ぐ巨大魚が私の声で言っている。


「なっ、何、アレ・・・・・気持ち悪っ」

「・・・・・うっ、うん」


あいつがメロエじゃなくて、本当に良かった。本当に。



「それじゃあ、面倒くさいけど大回りしましょう。出来るだけ戦闘は避けたいから」

「そっ、そうだね」

そうして、私たちは別ルートを行く事を決めた。


歩いている最中、また『絶叫の魔女』の咆哮が灰色の空に轟いた。



「この魔女はこんなに『魔女』を集めて、教会と戦争でも始めようとしているの?」

「・・・・・・たっ、多分、こうやって、きょっ、敵の拠点の近くに分かり易い出口を作って少人数ずつ確実に削って行こうって・・・・・作戦なのかも」

「知性がある『魔女』ってのは、本当に厄介ね」

「うん・・・・・でも、私が外に出れば、教会の強い人たちを呼んで来れ・・・あっ」

「?」

「えっ、あっ、うん。ごめん。何でもない。2人で絶対脱出しようね」


「ええ、もちろんよ。私たちのためだけじゃない、この街に住む全ての人のために」


そうだ。自分で言って気付いた。もし私が脱出出来たら当然この事を教会に報告し、強い人を送り込んでくる事は向うも分かっているだろう。つまり、向こうからしたら意地でも私だけは外に出したくないはず。それなら、やっぱり、いざとなったら・・・・いや、駄目だ。駄目だ。誰も悲しませたくない。意地でもメロエと生きて帰るんだ。




決意を新たにしてから数分経ったが、不気味なほど何の襲撃も受けていない。もしかしたら、さっきまで私たちがいた方向に『魔女』が集結して、こちら側は手薄になっ、、、心の中でそう述べようとした瞬間、プシュンっと何かが撃たれた音とバチンとそれを弾いた音がほぼ同時に聞こえた。横を見ると、メロエがチェーンソーを構え向かいのビルの屋上のコンテナのひとつを睨んでいた。えっ、もしかして、今、チェーンソーでスナイパーの銃弾を弾いた!??


「そこか!!」

コンテナから一瞬赤い頭部が顔を覗かせた瞬間メロエは声を上げ、いつの間にかチェーンソーの代わりに持っていた四角い変わった形の銃でそこをダダダダダと銃撃するが、すぐ頭を引っ込め避けられてしまう。


「隠れても無駄だから!!」


しかし、メロエは全く諦める様子なく怒ったように叫び地面に四角い銃の銃口を叩き付けた。すると、四角い銃はガチャガチャと音を立てながらみるみるうちに厳ついロケットランチャーへと形を変えた。そして、それを何の躊躇いもなく向かいのビルの屋上のコンテナに向け、ミサイルを一発、二発と撃ち込む。雷が落ちたような爆音と、眩い閃光を受け一瞬手で目を覆う。



手をどけると、向かいのビルの屋上が火の海になっていた。



「・・・・・」


あまりの壮絶な攻撃を目の当たりにし、私は炎を見ながら固まってしまった。

そして、その後、恐る恐るメロエの方を見た。


「あっ、ごめん。ビックリさせちゃったよね。狙撃されたから、ちょっと、やり返しただけだから。多分、仕留められてないと思うから早く行こう」


「えっ、あっ、、・・・・うっ、うん」


私は気圧され気味にそう返事した。次々と武器を出したり変形させたりするメロエの魔法も凄いが、死角からの狙撃をチェーンソーで弾いたり、そこからすぐに武器を変形させ反撃に転じたり、メロエ自身の振る舞いも相当だ。一体、どれほどの修羅場を潜ってきたのだろうか想像も出来ない。とにかく、足手まといにならないように努めないと。




「・・・・メロエ、大丈夫?」

走って出口の商店に向かっている途中、なんとなくメロエの顔が曇って見えた。


「・・・ねぇ、教会に真っ赤なアフロの人っている?」

「・・・・・いっ、いないと思う。すっ、すっ、少なくとも私は、しっ、知らない」

「はぁ、なら良かった。反射的に反撃しちゃったけど、人っぽかったから」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「ただの人型の魔女よね?」

「・・・・・・そっ、そうだと思う!!」

「そっ、そうだよね!!あのタイミングで私を狙撃しようとするなんて、完全に『魔女』側の振る舞いだよね!!」

「うっ、うん!」

私は肯定したが、首筋に嫌な汗が伝っていた。もし・・・・・いや、魔女だ。魔女に決まってる。深く考えるな。今は進む事だけを考えないと。もう少しだ。もう少しで、あの商店に戻れる。メロエも私も無事で、『絶叫の魔人』の邪悪な計画も終わりになる。この通りを曲がれば、もう例の商店がある大通りに出る。でも、少し上手く行きすぎている気がする。確かにさっき狙撃に遭ったが、主にやった事と云えば巨大魚との戦闘を避けただ大回りしてきただけだ。私が無事脱出してしまえば、ここまで集めた魔女が全部無駄になってしまう。それなのに、こんなにみすみす帰してくれるだろうか。


そう思ってしまった。


もし、私が、彼女の立場なら・・・・・・







「まぁ、待ち伏せ。してるよね」



メロエが言った。メロエの視線の先には沢山の等身大の宇宙飛行士の人形が折り重なって出来た巨大な球体が通りのど真ん中に堂々と浮いていた。そして、その不気味な球体の上に絶叫の魔女が乗っており、これ見よがしに私たちを見下ろしている。



『縺薙m繧サ!!!縺薙m繧サ!!!縺薙m繧サ!!』


絶叫の魔女が球体の上に乗ったままそう3回咆えると、球体からどんどん宇宙飛行士たちがフワフワと離脱していき、次々と道路に降り立っていく。そして、横に展開しながら各々が白い銃を取り出し、私たちにじりじりと迫ってくる。そうしてあっという間に通りが封鎖されてしまう。



「エーデル、私の後ろに!!!!」


一瞬の沈黙の後、メロエが叫び私は反射的に彼女の後ろに隠れた。

刹那、聞き馴れない近未来的な発砲音と共に宇宙飛行士たちのレーザー銃から真っ赤な光の線が放たれ、それらが一斉に私たちに襲い掛かる。


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