第21話
僕はロドスを確認する。
ロドスが早く動ける理由は、彼の各場所に魔術式を施し、命令によってそれを発動させているからだ。
魔力石をフルにし、魔術式に不備がないか確認していく。
「ロドスはここで待機。エンバーといっしょにね。僕とミアに何かがあった場合、あった場合……」
僕は言葉に詰まる。
少なくとも魔術師が関わっている以上、宿舎にもどって上官に報告しろとも言えない。
逃げろと言っても、どこへ逃げればいいのか……
天涯孤独なのは僕も一緒だった。
帰る家がないのは、逆に目的地を失いやすいともいえそうだ。
「それでしたら、うちの工房へエンバーと戻り、《《弟》》を連れてくればいいのでは」
「ご兄弟が多いんですね、ミアは」
「……あら!」
ミアは顔を赤らめながら、俯いた。
「……この事件が解決しましたら、ご説明しますわ。少し複雑なのです」
しかしながら、僕とミアが何かあった際に頼れる相手がいるのは心強い。
「イジェスに感謝を」
僕がつい癖で呟くと、ミアは苦く笑うので、つい謝った。
「そういった物事への感謝は大切ですわ」
大人っぽく微笑んだミアだが、彼女も準備があると、部屋に戻っていった。
思えば、ミアの部屋は問題ないのだろうか。
「エンバー、ミアを一人で部屋に戻して大丈夫だったかな」
『問題ねーよ。ミアだしな』
エンバーと部屋に待機できるようにロドスの準備を整えていると、ミアの部屋から大きな物音がする。
すぐに飛び出し、ノックをするが、『もう少しお待ちになって』ミアの声が返ってくる。
「いえ、時間は問題ないのですが、何かあったならと……」
『心配ご無用ですわ』
ミアの明るい声が聞こえてくる。
廊下で待つ間、ドアに耳を当て、様子を伺うが、もう静かな物音しか聞こえてこない。
さらには数分も待たずにドアノブが回る。
「お待たせいたしました」
出てきたミアは、足首までの黒く長いドレスをまとい、髪の毛は下ろされていた。
大きく開かれた肩は美しい鎖骨の曲線が見え、胸元も大きく開き、大人びた印象のドレスだ。
緩やかな胸を形どりながら、脇から下がスカートとなっている。
胸とスカートの境には、レースがあしらわれ、背中には大きなリボンが添えられている。
ボリュームが少ないスカートのためか、かなりか弱く見えるシルエットだ。
いや、元からか弱い少女なのだが、今までのドレスとはかなり印象が異なるシンプルさがある。
「見惚れてくださいまして?」
「……ええ。とても大人っぽくて……あ、いや、その」
「嬉しいですわ」
するりと僕の腕を取る。
だがこれはエスコートしなければならない雰囲気だ。
僕はそのまま歩き出す。
「緊張してらして?」
「ええ。あなたにも、これからにも」
「まあ」
長い廊下を歩きながら、これがどこへ続いているのか僕自身、わからない。
だが、進まなければ。
進まなければ、僕が老騎士になる道はないのだ。




