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第6話 至福のアイス

――さて状況を整理しよう。


啓介のアホが僕の昼食をデンジャラスラーメンにした。

そのお詫びなのか席を探していた杏子と橘さんを呼び、四人で食事をすることになった。

おい啓介、僕は今からこのデンジャラスラーメンを食べるんだぞ?

真っ赤で明らかに辛そうなこのラーメンを。そのタイミングで呼ぶか普通?


啓介の方を向いて少しにらみつけると啓介がこちらを向いた。

ウインクしてテーブルの下で親指を立てている。

そんなやってやったぜ、みたいな顔するなよ……。


しかし、そんなことを考えていても仕方ない。

何か話題を、と考えていると啓介が口を開く。

「杏子、お前は昼飯何にしたんだ?」

杏子は自分のトレイを見せて答える。

「私はね、今日はオムライスだよ!啓介は何?」

「俺はきつねうどん。」


幼馴染の二人は和気あいあいと話している。ここは僕が橘さんに話しかける場面か……。

深呼吸してから意を決して話しかけた。

「た、橘さんは何にしたの?」

橘さんがにっこりと笑ってトレイを少し寄せてくれる。

「私はね、これにしたの。」


寄せてくれたトレイを覗き込んで僕は固まった。

いやいやいやいやいや!マジで!?

僕は丼と橘さんの顔を交互に見た。


啓介が僕の動きに気づいて話に入ってくる。

「おっ、橘さんは何食べるの?」

覗き込んだ啓介も固まった。


橘さんのトレイに乗っている丼、その中身は真っ赤だった。

まさか橘さんがこれを頼むとは。

「あ、あの橘さん、これって?」僕は丼を指さした。


橘さんがトレイを自分の方に戻しながら答える。

「デンジャラスラーメンだよ。」

まさかのデンジャラスラーメン!?橘さんが?デンジャラスラーメン!?!

橘さん、食べれるのか?ヤバい七大メニューだぞ!?


杏子が僕たち二人の表情を見て、笑いながら話す。

「二人とも驚いてるねぇ。私も見た時びっくりしたよ。」

橘さんが不思議そうな顔をしながら杏子に話しかける。

「そうかな、おいしそうじゃない?」


杏子が少し引いた顔をしながら答える。

「いやいや、そんなメニュー頼まないから。」

少し眉をひそめて橘さんが返す。

「そんなことないと思うけどなぁ。」


橘さんが僕の方を向いて話しかけてきた。

「藤宮君は何にしたの?」

僕は自分の丼を見せて答える。

「デ、デンジャラスラーメン……。」


杏子が驚いた顔をして話す。

「えっ、藤宮君も!?」

杏子は僕と橘さんを交互に見ている。

啓介はこの状況が面白いらしく、必死に笑いをこらえている。


杏子が橘さんの丼を覗き込みながら話す。

「へー。こんなメニュー頼む人二人もいたんだ。」

橘さんが口角を少し上げて、杏子の方を見て話す。

「ほら、頼んでる人いたでしょ?」


やめて、橘さん。そんなこと言わないで。事故ですって言い出せなくなる……。

啓介はもうこらえきれないのか、下を向いて肩を震わせている。

こいつ、後で覚えてろよ。


「趣味が合うのかもね。……とりあえず、冷めちゃうし食べましょうか!」

杏子はそういうと手を合わせた。

その言葉に啓介も起き上がり手を合わせた。

「そうだな、食べるか。」

それに続いて僕と橘さんも手を合わせる。

「いただきます。」

そういって各々食事に手を付け始める。


僕は麺を少し持ち上げて、デンジャラスラーメンを一口すすった。

辛い!!辛すぎるっ!……舌が痛いっ!こんなに辛いのか!


一口食べただけなのに汗が出てきた。これ、完食できる自信がないぞ。

僕は橘さんの方を見た。

橘さんは黙々と食べ進めている。

……嘘だろ。このラーメンをなぜそんな涼しい顔をして食べれるんだ?


啓介が橘さんに話しかける。

「橘さん、そのラーメンどう、辛くない?」

橘さんは涼しい顔をして答えた。

「おいしいよ。全然大丈夫。」


マジですか!?僕一口でも結構厳しいんですけど!?

啓介が続けて話す。

「へー、橘さん辛い物とか得意なの?」

橘さんは微笑んで答える。

「そうね、これくらいならおいしく食べられるよ。」

そういうとまた食べ進めていく。


啓介が僕の方を見てニヤニヤしながら小声で話す。

「だってよ。」

わかってるよ、聞こえてるからね!

そう思いながら啓介を睨みつけた。


僕は自分の丼を見つめて、息を整える。

ここで食べないわけにはいかない。勢いよく麺を持ちあげる。

縮れた麺がスープをよく絡ませている。こんな形状にしやがって!

こんなもの学食に置くなよ!そう思いながら一気にすすった。

むせそうになるのを我慢しながらなるべく味わわないように食べていく。


水が飲みたい、しかし橘さんが黙々と食べ進めていく。

ここで僕が飲むわけには……。そんなよくわからない意地を張って一気に食べる。

全身から汗が噴き出してくる。くそ、橘さんはどうなってるんだ……!

啓介は若干引いた顔をしている。杏子は僕と橘さんを見てポカーンとしていた。


そんなこんなで何とか食べ終わって、コップの水を一気に飲み干す。

橘さんを見ると、もう食べ終わっていた。

食べ終わっても汗一つかいていない。涼しい顔をしている。なんて子なんだ……。


僕が食べ終わったのを見て、橘さんが話しかけてきた。

「おいしかったね、このラーメン。」

いやいやいや、全然おいしいとかの感想出てこないです。

辛いと痛いしか感想出てこないんですけど!?


……と言えるわけもなく、笑顔を作ってこたえる。

「そうだね、僕はまぁまぁ辛かったかなー。あはは。」

今すぐにアイス食べたい。そう思いながら啓介と杏子が食べ終わるのを待った。


食べ終わった杏子が話しかけてきた。

「藤宮君も辛い物好きなんだね。」

流石にこんなに辛い物は好きじゃないぞ、と思いながら答える。

「ま、まぁね。それなりには?」


杏子が橘さんに話しかける。

「だってさー。辛い物好きなんだって!今度おすすめとか教えてあげたら?」


橘さんは少し考えて話し始める。

「そうね、今度おすすめのお菓子があるから持ってくるね。」

そういって僕の方を向いた。

「あ、ありがとう。楽しみにしてるよ。」

嬉しいと思う反面、少しの不安を覚えた。

橘さん、それ……普通に辛いやつですよね?激辛のことじゃないよね?


「さて、ご飯も食べたし、私たち行くね。」

そういうと杏子と橘さんが席を立った。

「啓介、席ありがとね。」

そういって二人はトレイを持って移動していく。

「おう、また教室でな。」

そういって啓介は手を振った。


二人を見送った後、啓介は僕の方を向いた。

「なぁ、良かったろ?」

顔がめっちゃニヤニヤしてる。感謝しろよと言わんばかりに。

でも、始業式以来に橘さんと喋ることが出来たし、結果的には啓介に感謝だ。

しかし今は……。


「啓介。」僕は啓介の肩を持った。

「なんだよ?お礼ならいいぞ。これでチャラだし。」

そういって笑っている。しかし、そんなことはどうでもいい。

「アイス……買いに行くぞ。」

僕は正直限界だった。さっきから口の中が痛すぎる。

水飲んだけど全然収まらない。アイスを食べたい。


「お、おう。」

僕の必死な顔を見て啓介は察してくれた。

素早くトレイを返却し、学食を後にし、自販機に向かう。

その後、アイスを食べて僕はようやく口の中に平穏が訪れた。

アイスをこれほどまでに求めたのはきっと人生で初めてだろう。

今日のアイスは一段とおいしく感じた。


――そして午後の授業が始まる。このあと悪魔の時間が僕を襲う。


お読みいただきありがとうございました。

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