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好きと言うには近すぎた  作者: 桔梗鹿々
第五章 葉子の目に映る私
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第六章 見ていてほしい人 六

 夜、ベッドへ入ってから、葉子が見せてくれたスケッチを思い出した。

 ゴール後、笑っている私。

 葉子を見つけたあとの顔。

 私は携帯電話を開き、今日の記録を確認した。自己記録を更新した数字が表示されている。

 嬉しい。

 でも、数字だけでは今日を思い出せない気がした。

 観客席を探したこと。

 葉子の姿を見つけた瞬間、身体が軽くなったこと。

 走り終え、最初に葉子のところへ行きたかったこと。

 その一つ一つのほうが、記録より鮮明に残っている。

 葉子から写真が届いた。

 競技場の外で撮った夕方の空と、その下にあるトラック。

 ――今日は描かせてくれてありがとう。

 私は返信を打つ。

 ――見に来てくれてありがとう。

 それだけでは足りない気がして、もう一文を加えた。

 ――次も来てほしい。

 送信する前に少し迷った。

 葉子に期待させるかもしれない。

 でも、昼間に約束した。

 見てほしいときは、ちゃんと言う。

 私は送信ボタンを押した。

 すぐに既読がつく。

 葉子から返事が来た。

 ――うん。次も行く。

 短い文章だった。

 私は画面を閉じ、枕元へ置いた。

 葉子を好きなのかは、まだ分からない。

 それでも、次の大会にも葉子がいると思うと嬉しかった。

 それはもう、ただの習慣ではない気がした。

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