↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きと言うには近すぎた  作者: 桔梗鹿々
今までどおり
PR
3/36

第一章 今までどおり 二

 私と葉子は、高校へ入学してから二年間、同じクラスだった。

 一年生のときは偶然だと思った。二年生でも同じ名簿に名前を見つけたときには、二人で笑った。中学からこの高校へ進んだのは私たちだけだったので、先生が気を遣ったのではないかと葉子は言った。

 本当のところは知らない。

 ただ、知らない人ばかりの教室で、葉子の姿を見つけると安心した。

 二年生の教室では、私の席が廊下側の後ろから二番目。葉子は窓際の前から三番目だった。離れていても、顔を上げればすぐに見える。

 朝のホームルームが始まる前、葉子は自分の席へ鞄を置き、こちらへ来た。

「英語の課題、今日だっけ」

「昨日だよ」

「嘘」

「嘘。今日」

 葉子は安心したように息を吐く。

 私は机の中からプリントを出して渡した。葉子は自分のものと見比べ、最後の問題だけ空欄なのを確認する。

「桜、ここ分かった?」

「分かったけど、答えは教えない」

「聞いてない。考え方だけ」

「それを聞いたら答えも分かるでしょ」

「友達が困ってるのに」

 昨日までなら、そこでプリントを引き寄せて説明していたと思う。

 でも、友達という言葉に反応してしまった。

 葉子は私のことを友達として好きだと言うたび、嘘をついている気がしたと言った。

 今、どんな気持ちでその言葉を使ったのだろう。

「桜?」

 呼ばれて我に返る。

「何でもない。ここは先に時制を見ればいいよ」

 問題文を指しながら説明する。葉子は私の机へ手をつき、少し身をかがめた。

 髪から、いつも使っている石鹸の匂いがした。

 近い。

 そう思った途端、説明していた単語が頭から抜けた。

「それで?」

「……あとは自分で考えて」

「急に投げた」

 葉子は不満そうだったが、すぐに自分の席へ戻っていった。

 その背中を見送りながら、私は机の下で手を握る。

 昨日までも同じ距離だった。葉子が私の机へ寄りかかり、ノートを覗き込むことなど何度もある。

 私が意識していなかっただけだ。

 朝のホームルームが始まり、担任が終業式までの日程を説明した。

 教科書の持ち帰り。ロッカーの整理。春休みの課題。三年生のクラス発表は始業式の朝に行われるという。

「次のクラス、誰と一緒になるかな」

 前の席から振り返った友人が言った。

 教室のあちこちで同じ話が始まる。

 二年間同じだった友人と別れることを惜しむ声。担任が誰になるかを予想する声。受験科目によってある程度分かれるらしいという話。

 私は窓際の葉子を見た。

 葉子もこちらを見ていた。

 目が合うと、少しだけ笑う。

 二年間同じだったのだから、三年生も同じになるような気がしていた。

 そうでなければ困る、とまでは思わない。ただ、葉子のいない教室を想像できなかった。

 昨日の告白がなければ、そんなことも深く考えなかったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。