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ハズレ召喚者Re:ライフ 〜異世界ほのぼの生活(仮)〜  作者: 四方末いそじ
第4章 ハズレ召喚者、踏み込む。

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第16幕 夢見るglow starter。③


 清寿はおもむろに立ち上がると、手洗い場の方に移動して、何かを持って席に戻ってきた。

 手には使いかけの石鹸。

 そう。マリィ自身が『質が落ちた』と評している、マリィ手製の石鹸である。


 そして、その石鹸と水の入ったボウルを持って、マリィの席まで移動すると、マリィの目の前に2つを並べた。


「この水で、石鹸を泡立ててみてくれ」

 清寿の言葉には半信半疑ではあるものの、マリィは言われるがまま、黙って行動に移した。


 腕を捲り上げて、石鹸を水に沈める。

 そしてゆっくり取り出し、手の平で包み込んで、転がし擦り始めた。


 いつしか、マリィの周りには人だかり。

 その誰しもが、事の行方に注視している。


 石鹸は、数度転がしただけで、見る見るうちに泡が立つ。

 そのまましばらく続けると、泡は細かくなり、白さを増す。


「おっ……おおおぉぉぉおおぉぉぉ!!」

 泡と一緒に湧き上がる歓声。

 目の前の変化に目を奪われ、驚きが心も一緒に泡立てた。


「凄い……何これ……」

 アズはキラキラと輝く瞳で、食い入るように見つめる。

 マリィの手の平には、今まで見たことがないほどの豊かな泡立ちが生まれていた。


「本当じゃ!! こがーに違うんか!?」

 当のマリィも満面の笑みで感嘆の声を上げる。

 なんたって、目の前に広がる風景は、薬法の魔女としての沽券が保たれていた証である。

 そんなもの、嬉しくないはずがなかろう。


「見てみんさい! 手のくすみが消えとる! 流石はワシの作った石鹸じゃ!!」

 マリィは濡れた手から落ちる雫も気にせずに、泡を洗い落とした手を悠々と掲げた。

 僅かに光を反射する水滴はマリィの心を映して、誇らしげだ。


「マリィ、俺もやってみたい!」

 アズはその光景にウズウズが抑えられなかったのか、弾けるように身を乗り出した。

「俺もやってみたい! イリーニャ。お水、もう少し浄化して!」

 レニーも好奇心に負けたらしい。

 イリーニャに手を合わせると、お願いのポーズをしながら目を輝かせている。


「良いよ~。お安いご用でーす! ちょっと待ってて!」

 えへへ。と、少し照れながら。だけど、少し誇らしげ。

 イリーニャは近くにあった空の小さな水桶を手に取ると、そそくさと水瓶の方に走って行った。


 そこから、スゥも加わって、イリーニャの用意した水桶の周りで押し合いへし合い。

 ワーワーキャーキャー言いながら、楽しそうに手を洗い出した。


「しかし、イリーニャにはスキル表示が無かったはずで……」

 そんな光景を見ながら、考え込むようにアルが呟いた。

 能力に納得いかないと言うわけではなく、このシステムイレギュラーに納得いかないと言ったところなのだろう。

 同じように、グレイスとセロも腕組みしながら頭を捻っている。


「ここからは俺の憶測も混じるから、確信は無い。完全な想像だけど……」

 清寿は慎重に言葉を選ぶ。

 純然たる推測と、希望的観測。

 今ここを最初から混同してしまうと、折角敷いた土台が虚構に傾いてしまうからだ。


「多分メインの能力でない、細かい付属スキルか後天的スキル。もしくは、メイン能力に影響を及ぼさないスキル。……そう言うものは、表示されない可能性があるんじゃないかな?」

 最初に並べた推測は、根本的な可能性。

 何せ、清寿はこの世界のルールシステムを把握できていない。

 だから説明よりも先に、まずは自身の根拠を前提として置く事にしたようである。


「え? どう言う事ですか?」

 アルの反応は、然もありなんだ。

 疑う事すらなかった前提に、異を唱えられた状況になっているのだから。


「例を挙げれば、知識だけの物だとか、経験や自力で知識を取得したスキル。あとは、イリーニャみたいに元々あっても、魔法能力に直接関係ないスキルだとか」

 ここは清寿自身の状況を鑑みた推測でもある。

 清寿のスキル表は、資格などの来歴を何ひとつ拾ってくれずに真っ白だった。

 だから、まず魔法に関する事と、本人自身を強化、補強する恩恵的な能力以外は、記入されていない可能性を考えたワケである。


「確かに。マリィさんは、火の魔法属性に浄化のスキルが付属してますから、特殊スキルとして表示されてますものね。僕の魔法も、本来の水属性とは別に、氷の副属性が表示されていますし……」

 リッカの言葉が、図らずも清寿の推測を補強した。

 マリィも口に出さずとも思うところがあったようで、目の前のボウルに目線を落としたまま、じっと考え込んでいる。


 そして、魔法の能力に関して言えば。


 マリィは火『で』浄化が出来る。

 イリーニャは水『が』浄化出来る。


 マリィは魔法発動で他の物を浄化出来るが、イリーニャは水限定で、それ以外の対象物には浄化の作用は影響しない。

 それに多分、イリーニャの能力は、攻撃・防御・補助どれにも影響を与えないし、受けもしない。

 要は、戦闘に影響する能力ではない気がするのである。


 それを踏まえると、リッカの副属性も同じ定義ではないだろうか。

 リッカもマリィ同様、副属性が攻撃・防御・補助のどれにも影響を与えているはずだから、スキル表には記載されている、と。


 そもそも、イリーニャの能力を紐解いて推測すれば、『浄化能力』ではなく、多分『浄水能力』なのだ。

 本人も、現段階で水の浄化は出来ると認めているが、他の物を浄化出来るとは一言も言っていないのだから。


 イリーニャの能力自体、いわゆる『ニッチで個人的な特技』。

 この世界の『スキル』と言うものを指す『定義』。そこから外れている能力と言ったところだろうか。

 ーー正解は闇の中ではあるが、状況を鑑みると、清寿の見解はそこまで的外れではないと思う。


「俺が見る限り、多分他にも、スキル表には載っていない特技を持っている人が居ると思うんだ」

 清寿は、もう一段階掘り下げる。

 周りをチラリと見回しながら、今度は少しだけ希望的観測も混ぜてみた。


「……そんな事、本当にあるんすかね? スキル表に載ってないスキルなんて」

 眉を顰めるアーリーは、イマイチ推測を飲み込めずにいるようだ。

 鼻から息を長く吐き出しながら、納得してない表情で腕を組んでいる。


「そうだよなぁ。スキル表ってんのに、肝心なスキルが載ってねぇなんて、矛盾してねぇか?」

 アヴィも似たようなもので、脳内整理が上手くいってないらしい。

 難しい顔をして、頭をしきりに左右へと動かし悩んでいる。


「ほうじゃが……現に、イリーニャは浄化能力があるようじゃしのう……どがーになっとるんじゃ……」

 結局セロが言うように、目の前の事実が余計な混乱を招くのだろう。

 今まで疑うことすらしなかった前提と、目の前に提示された状況。その乖離が埋められないのだ。


 まぁ、しょうがなかろう。

 誰しも、当たり前を否定されれば、当然の反応だと思う。

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