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ハズレ召喚者Re:ライフ 〜異世界ほのぼの生活(仮)〜  作者: 四方末いそじ
第3章 ハズレ召喚者、思い立つ。

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第11幕 Connect by ⑤


「持って来たよ~」

 明るく張りのある声が背後から聞こえる。

 後ろを振り返れば、木板と小枝を小脇に抱えたユルの姿。

 先程頼んだ荷物を持って戻ってきたようだ。

 

「……って、エヴァ、嬉しそうだけど、何か良い事あったのかい?」

 顔を赤らめモジモジしているエヴァが目に入ったようだ。

 不思議そうに首を傾げると、清寿に目線を移した。


「今、彼が仕事のできる良い子だって褒めてたんだ」

 笑っている清寿に、ユルは満面の笑みを返すと、嬉しそうに口を開いた。

「うん! そうだろう!? エヴァが予定とかの管理をしてくれるから、助かってんだよね!」

 自身が褒められたように少し誇らしげで、自慢げな様子だ。


 その言葉で、赤みが収まりかけたエヴァの顔がポンッと再び熱を帯びる。

 嬉し恥ずかしと言った風で、身体が小さく身悶えた。


「しっかし、キヨは凄い奴だな。入ったばっかりなのに、ちゃんと分かるんだ?」

 ユルは「あははは」と笑いながら、親指と人差し指で清寿を指すと、軽いウインクひとつ。

 嫌味なくキザな仕草をやってのけるユルに、清寿もつられて笑いが込み上げる。


「まぁ、数ヶ月間何もせずに、みんなを見ていただけの暇人だからな。よく分かったよ」

 清寿には珍しく、少し戯けたように返したのは、ユルの軽い空気に当てられたからかもしれない。

 

 ーーけれど、『ワーカーホリック』から『ホリックワーカー』へ移行したに過ぎない気もする。

 何はともあれ、それでも清寿にとっては喜ばしい変化だ。


「やるぅ!! 本当にスキル無しなのか疑っちゃうぜ!!」

 楽しそうに笑うユルが、空気を明るく軽くしてくれる。

 先程まであった、少し重く湿った空気は綺麗に消えていた。


「おっと、頼まれた物持って来たけど、これで大丈夫?」

 当初の目的を思い出したらしいユルが近くの作業台へと移動し、ガサツに荷物を下ろす。

 軽く埃が舞う様子は、まるで作業台が役目を全うできていない事を無言で主張しているかのようである。

 

「ああ、流石だなぁ。凄く助かるよ」

 作業台の主張は見なかった事にして、持ってきてくれた荷物を確認し始める。

 木板は少し小ぶりだが、今日の作業には申し分ない。

 それに、荒くだが表面を削ってくれているようで、思ったよりも作業がしやすそうだ。

 小枝は理想的なサイズが揃っている。


 断片的な希望しか伝えていないにも関わらず、思いがけず用途に適った材料が揃った。

 ユルの気遣いに感謝だ。


「じゃあ、俺も『よく出来た良い子』だって事で、オッケー?」

 満足そうな顔をした清寿の反応に気を良くしたのか、自身を親指で指しながら称賛を強請る。勿論、ウインクは忘れずに。

 北部の山間地方出身だと言っていたが、それが嘘じゃないかと思うくらい陽気で軽快な男だ。

 

「勿論。君もよく出来た良い子だな」

 清寿は、グッと親指を立てて賛辞を送る。

 どうにも、ユルのノリは伝染してしまうらしい。先程から完全にユルのペースに持っていかれっぱなしのようである。

 

「あっはは! キヨってば最高!! 本当に良い奴だな、アンタ!!」

 清寿の普段とは違う返しに、ユルのテンションが急激に上がる。

 感情を抑えきれなかったのか、清寿にガバッと抱きつき、キュウキュウ締め付けながら頬擦りをし始めた。


 だが、筋肉ダルマの抱擁は、なかなかに激しくて情熱的だ。

 本人は手加減しているのかもしれないが、締め付けが強くて潰れてしまいそうだ。


「ユル、苦しい、苦しい」

 ギブアップの意味も込めて二の腕をペシペシ叩くと

「おっと? 悪ぃ悪ぃ!」

 大袈裟にホールドアップしながら、おちゃらけた。

 ペロリと出した舌も、充分に様になる。


 流石はコミュニケーション強者のパリピである。

 清寿には、どう足掻いても到底無理な芸当だ。

 ――腹芸はできてもパリピにはなれない、ビジネスコミュ強なのだから。



「夕飯、楽しみにしとくぜ! じゃ、残りの仕事、さっさと片付けてくる!!」

 ユルは押し引きの加減も上手いようで、サラリと空気を切り替えた。

 お調子者のように見えて、空気を読むのが上手いのだろう。

 

「ああ、気をつけて」

 手を振るユルに清寿は手を振り返す。

 ユルからの返事は、勿論ウインクだった。


 足音が遠のき、調理場には軽くなった空気が残る。

「な。言っただろう?」

 相変わらずモジモジと身悶えているエヴァに、清寿が笑いかけた。


「……はい」

 口ごもりながら、エヴァも照れ隠しに思わず抱きついて、ユルの真似をしてキュウキュウ締め付ける。

 ただ、本人は一生懸命だろうが、ユルと違って可愛いものだ。


 そんなエヴァの背中を優しくポンポンと叩き、微笑む。

「さ、続き。手伝ってくれるかい?」

「はい!!」

 エヴァは赤みの残る満面の笑みで返事をした。


 先程の清寿を真似して、藁を一握り。

 記憶を辿りながら、必死に手順を進めていく。


「できた!」

 エヴァの手元にあるのは、ヨレヨレで不揃いな藁タワシ。

 出来上がった事に満足していたエヴァだが、少し冷静になったのか、笑顔が徐々に苦笑へと変わる。

「……けど、不格好ですね」

 清寿の出来栄えと見比べながら、そう言って眉根を少し下げた。


「心配しなくて大丈夫。最初はそんなもんだよ。あとは慣れれば上手くなるさ」

 不格好であっても、事足りれば問題はない。

 清寿は遠い記憶を思い出し、あの時父から言われた言葉をエヴァに送る。

 そして「えへへ」と、くすぐったそうに笑うエヴァに幼い自分を重ねた。

 

「それで、この切った方を使って、洗っていくんだ」

 ジャガイモをひとつ水から出して、作ったタワシで洗ってみせる。

 清寿の手の中で、こびりついた泥が柔らかく広がり、ジャガイモの皮を汚していく。

 それを丁寧に水で流すと、綺麗になったジャガイモが姿を現した。


 清寿の隣に並び、エヴァも見よう見まねで作業を始める。

「わ! ジャガイモの凹んだ場所も洗いやすい!!」

 なくても問題ないが、あれば便利で良い。生活用品とはそう言う物だろう。

 無駄な手間を省くのは手抜きではなく、負担軽減と言う名の優しさだ。


「キヨさん、凄いですね!!」

 エヴァの笑顔に、少しだけ達成感が垣間見えた。


「これで食器も洗えるよ。これでも、2、3日は使えるから。今度、しっかりしたヤツを作ろう」

 清寿は特別な能力を持っていない。世界を救う器量もない。

 今この場にあるのは、意識するには物足りない小さな改革だ。

 けれど、この小さな積み重ねが生活を豊かに変えていく事を願わずにはいられない。


 清寿はエヴァとユルの笑顔に背中を押され、自分ができる事をやると腹を決めた。


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