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ハズレ召喚者Re:ライフ 〜異世界ほのぼの生活(仮)〜  作者: 四方末いそじ
第3章 ハズレ召喚者、思い立つ。

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第10幕 ポーキュパインな僕ら。②


「キヨは、ほんに真面目じゃのう」

 ーー今日も通常運行。

 そう言う事なのだろう。

 その証拠とばかりに、騒がしい空気を放置し、マリィは清寿の側に寄って来て笑いかけた。


「真面目と言うよりは、性分だな。手持ち無沙汰が苦手なんだよ」

 この言葉は、リップサービス半分、本音も半分と言ったところ。それが清寿の心情だ。

 

 性分なのは本当だし、手持ち無沙汰も好きではない。

 ただ、清寿はそれ以上に『自分だけが楽をしている』と言う状況が苦手なのだ。

 ーー特に、集団の中においては。


「……ほいじゃが、ワシも興味はあるけぇ。折角の申し出、頼んでもええじゃろうか?」

 マリィはニンマリと口角を上げて、少しだけ悪い笑みを浮かべる。

 彼も一応心遣いは見せたものの、やはり興味があるらしい。


「だな。金も入れてもらってんのに悪りぃ気もするが、異世界の料理ってのが興味をそそる。正直、食えるってんなら、食ってみてぇなぁ」

 いつの間にか側に居たアヴィも同じようで、ガハハハと豪快に笑いながら同意した。


「ありがとう」

 感謝を述べながら周りを見回すと、清寿とグレイスの近くに人が集まっていた。

 スゥたちが騒いでいたせいで、話の内容が筒抜けになってしまったらしい。

 集まった者たちの目は、『興味津々』と言った感じで、清寿に向いていた。

 

「……ただ、口に合うかどうかは分からないんだけどな」

 清寿は苦笑いを浮かべながら、保険がわりの言葉を口にする。

 勿論、元来の謙虚さもあるが、若干の不安から保身に走った事は否めない。

 興味を示してくれた事は素直にうれしかったのだが、意図せず無駄に上がってしまったハードルが怖くなってしまったのだ。だから、一旦下げておく。


「せやけど、俺も楽しみや。異世界の料理食べるとか、そんな機会普通あらへんしな」

 黒い長髪をオールバックにして、ビシッと後ろで結んでいる彼、『クオン』も、人好きする柔らかい表情で笑いながら会話に加わって来た。


 彼もまた大陸とは違う島国、元々マリィたちと同じ『アマハラ三国』や『西方地域』と呼ばれる島国が出身で、関西圏の……ニュアンス的には京都の方言に似た言葉を使う。

 そのせいか、彼からは何処となく上品な感じを受けるのだ。

 塩顔で温和な喋り方をする、人当たりの良い『いいとこのお坊ちゃん』と言った感じの青年である。


 そして、この場には不在の彼の弟『リッカ』も同じ。

 特に、リッカの場合は、お人形さんのような様相や振る舞い、そして喋り方も相まって、雑々とした方舟の中では、異質のオーラを放っていた。

 2人の顔は、パッと見では似ているとは言いがたいが、笑うと『兄弟だな』と思う程度には似ている。


 ちなみに、マサムネも同じような言葉を話す。

 ーーただ、こちらは随分と『いけず』寄りの喋り方だが。

 ヒョロリと長い体型に、鋭い眼光。

 そんな彼は、清寿の事を警戒しているようで、用事以外では近づいて来ない。

 故に、清寿はマサムネとほとんど喋った事がないのである。


 そう言えば。方舟内では、ほとんどの者からマサムネは『マーシャ』と呼ばれている。

 清寿の名前と同じく、どうにも発音がしづらいようだ。


「素朴な疑問ですが、材料とかは大丈夫なんですか?」

 不意に降って来た疑問に、周りの者たちがハッとする。

 アルバートこと、『アル』は、インテリ眼鏡のブリッジをクイっと上げながら、こちらを伺うように首を捻る。

 アルの言葉で気が付いたのか、一斉に落胆の声を吐きながら、渋い顔を浮かべた。

 

「食材は、そこまで変わりないように思うんだ。ただ、調理法が若干違うかもしれないけどな」

 そう、清寿が言うように、食材の大きな違いはないのだ。

 正確に言えば、同じような野菜が見て取れたと言った方が良いかもしれない。

 ジャガイモ、豆、トマト、タマネギ……の、ような物。そんな感じだ。

 そこら辺の食材は、ここに来てから出して貰っている料理に入っていた物である。


 食べた感想としては、『味は大体一緒』。

 後の物は食べた記憶が薄いので定かではないが、探せば馴染み深い食材があるのではないかと踏んでいる。

 流石に初っ端から汚点は作りたくはない。そこは、重々考えてからの提案だ。


「んじゃ、明日にでも買い物に行くかぁ?」

「いや。今日は、有る物で作るよ。もし、口に合うようなら、後日改めて。……と、言うのはどうだろう?」

 せっかくグレイスが気を利かせてくれたが、今日は気持ちだけ受け取っておく。

 清寿は、食材の推察はしていても、確信を得た訳ではない。

 だから、もう少々保険を掛けておく事にしたようだ。


「余計な手間が掛かるが、キヨはそれで良いんか?」

 今まで黙って聴いていたセロが口を開いた。

 

「俺は構わないんだ。ただ、口に合うかどうかが一番心配だから。折角の材料を沢山ダメにするのも忍びない」

 確かに手間は掛かるが、清寿は『必要な手間』だと判断した。

 理由を述べた通り、『手間』より『確実』に重きを置く。

 ーー実に、清寿らしい判断だ。

 ノリや大見得で『できらぁ!』などと言えない男。それが清寿である。


「ほうじゃが……あるモン言うても、大したもんないが。大丈夫かのぅ?」

「そうか。とりあえず、材料みて考えようかな……」

 セロのダメ押しで、清寿は途端に不安が募る。

 最低限の備蓄はあるだろうと言う前提で提案したのだが、そこにも不安材料が埋まっているとは思いもしなかった。

 ここは日本ではないと自身に言い聞かせていても、こう言う些細な事で(つまず)いてしまう。


「だったら、俺が案内しますね」

 苦笑いしている清寿に、エヴァが案内役を買って出てくれた。


 清寿は、そっと胸を撫で下ろす。

 アーリーとの一件があって、少し慎重になっている節があるのだ。

 ある程度認知してもらうまでは、むやみやたらと1人で倉庫などは覗かないようにした。この曖昧な状況での物色は、誤解を招く恐れがあると思い知ったからだ。


「ありがとう。あと、火の取り扱い教えてもらっても良いかな?」

「はい!」

 ついでにお願い事もしてみたが、エヴァはそれも快く引き受けてくれた。

 勿論、ここにはどう見たってガスコンロなどは無さそうだから、そこも聞いておかねばなるまい。何せ火の取り扱いによって、できる料理が変わってしまうからだ。


 善は急げとばかりに、清寿は早速立ち上がる。

「……あの……それで」

 そんな清寿に、エヴァはモジモジとして何か言いたげだ。

 どうしたのかと首を傾げて見せれば

「もし良かったら、横で作業を見てても良いですか?」

 との事だった。

 言い出すのに勇気がいったのだろうか。エヴァの顔には緊張が見て取れる。

 

「ああ、勿論。取り扱いや材料の分からない事があったら、教えてくれれば助かるかな?」

 清寿の言葉に、エヴァの顔に大輪の笑みが咲いた。

「はい!!」

 そう元気に返事をするエヴァの笑顔が、清寿には眩しく映る。

 ふと、数人の若い部下の顔が、頭をよぎった。


 ──彼らは、元気にしているだろうか。


 エヴァの笑顔と同じ眩しさを持つ、自分を慕ってくれた彼らを思う。

 彼らを置いて辞めざるを得なかった事に、胸が小さく痛む。


「キヨさん! こっちですよ!」

 先に扉の方へ移動していたエヴァが、大きく手招きをしていた。


「じゃあ、いってきます」

 清寿の周りに集まっていたグレイスたちに声を掛けて、席を後にする。

 彼らは口々に期待の言葉を投げ返しながら、清寿を見送ってくれた。


 帰る事は不可能だと知っている。けれど、帰りたいとは思わない。

 幾ら後悔しても、自分の居場所に戻る事は叶わないのだから。


 だからこそ、清寿はここで前に進む事を決めたのだ。

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