第8幕 floppy discord。
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──いやぁ、しかし。
アヴィに担がれたのは、なかなかに良い体験だったな。
俺は先日の出来事を思い出し、思わず笑ってしまった。
体格は悪くないと思っていたんだが、190cmを超えているだろう3人には、完敗だった。
勿論、身長だけじゃなく、身幅も筋肉もだ。
それに多分、アヴィは2メートルを超えてる気がする。
まぁ、確信はないが、目線の高さ的にそんな気がする。
──いや、訂正だな。
俺の場合は、あくまで身長だけの話だな。
セロだって筋肉質だし、グレイスやマリィに至っては、細身なのに筋肉質だ。
しかも、養殖ではなく、天然物の。魅せる筋肉ではなく、用の美の筋肉だ。
それに今の俺は、昨今の不摂生が祟って貧相なものになっているし……
そして、反省。
いくら気力と体力が完璧に戻っていないからと言っても、今の俺の腑抜けっぷりは大問題だ。……ちょっとどころではなく、お粗末すぎる。
まさに、アーリーとの一件が最たるもので、アレではただの『迷惑外国人』ではないか。……担がれた事を、思い出し笑いしている場合じゃなかった。
いつまでお世話になるかはさておき、このままじゃ非常に不味い。
基本情報の整理が必要だな。
そして、最低限のリスペクト。
これが、異文化交流を図る上では必要不可欠だから。
──認識の乏しい国への海外出張。
それなら、数は多くないが経験がある。
最初は『海外出張』とは比べられないと思っていたが、この前提ならどうにかなりそうだ。
それに、このアプローチの応用、活用できれば、その他の想像外の場面でも、身近なものとして置き換え思考が可能だ。
『未知』よりは『難題』
そうであれば、心理的ハードルが一気に下がる。
これは、かなりありがたい。
だが、その前に。情報収集には骨が折れそうだが。
スマホもパソコンもないのが痛い。
……いや。正確に言えば、ある。
だが、電源が切れた電子機器なんて……いや、ここも訂正。電源が確保できたって、ネット環境がない。
まぁ、理由はどうであれ、使えない結論だけは確定したから、この脳内整理は一旦横に置いておく。
──そんなくだらない事より、今は目の前に揃った情報の整理が先だ。
まずは、おさらい。
ここはミリヤド帝国管轄下にある、小ミリヤド公国。
そこの王都から南方に位置する、町? 領地? の、ようだ。
ただ、散策してみた限り、この居住区に居る人間? 以外は見当たらなかった気がする。
推測するに、廃村に住み着いている感じに思える。
そして、人種。
人属種と亜人種がいるらしい。
獣人、エルフ。今のところは、そのくらいまでの情報。
ただ、ファンタジーの小説やゲームを参考にすれば、ドワーフ、アンデッド、魔族なんかもいるかもしれないな。
それから、この『黄昏の方舟商会』
やってる仕事は、傭兵、警備、役場の下請け、内職作業。
──えーっと。やっぱり、俺の知っている『商会』と違うんだが?
自分の中の概念に無理やり当てはめた結果、1番似た業態が『派遣業』。
派遣される側ではなく、派遣する側。母体となる会社の方だ。
……けれど、そこにも収まりが悪い気がする。
もっと雑に言ってしまえば、『よろず屋』……ただ、この業種の実態を俺は詳しく知らないから、フィクションの中に出てくる『よろず屋』だ。
──まぁ、方舟自体が、地味に謎多き部分でもある。
あとは、ここに所属する人々。
総数25名。
思ったよりも多くて驚いた。
内、現在遠征で不在の者が2名。所属者は全員男性。
グレイスが方舟の代表。セロが副代表。
マリィは内勤の稼ぎ頭のようだ。
この3人は……
──多分、昔馴染みか、初期のパーティメンバー。
雑で口の悪い会話、それでいて、雰囲気が悪いと言うわけではない空気感。そう言う気の置けないやり取りを見るに、そんな想像をしている。
彼らと俺は同じ29歳。
ちなみに、あまり話したことがないが……細面でシュッとした、人の良さそうな『クオン』。そして、アヴィも同じ歳だったな。
そして、この5人が方舟の最年長組になると言ってたはずだ。
えーっと、あと、ユルが1つ下の28歳。アーリーは4つ下の25歳。
アーリーは……まぁ、アレだ。思った以上に年下だった。申し訳ない。
アーリーとスゥが同じ歳だと気がついた時に、プチパニックになったのは内緒にしておかないと。
……言い訳させて貰えば、160cm有るか無いかで童顔なスゥと、巨体で威圧感のあるアーリーだからな。誤認してしまうのも不可抗力……だよな?
まぁ、自分に言い訳しても進まんな。仕切り直そう。
で、エヴァとイリーニャが同じ歳で27歳。
金銭管理を任されているアルバートこと、『アル』。そして、下請け内勤作業の要であるエドワルドこと、『エディ』が同じ歳だと言っていた。
アルとは、一言二言の雑談と、連絡事項程度の会話はするが、エディとは、ほとんど話した事がない。
元々大人しい性格か、無口な性格。
そこに加えて、俺を不信がっている感情もある気がする。
その証拠にいつも遠巻きに見られていて、近付いては来ないからな。
エディと行動する事が多い、『ルリ』と『コハク』もそんな感じだ。
つるんでると言えば。
アズたちからの情報。メビウスこと『メイビー』と、セドリックこと『セディ』は魔法使い。
そこに、レナードこと『レニー』も加わって、仲の良い3人組がある。
……の、だが。レニーは一体何者だろうか?
魔法が使えても、魔法使いにならない者もいる。確か、そんな事も言っていたはずだ。
だから、もしかすると、彼もそんな人物かもしれない。
3人とも気さくさは持っているが、アズたちが『魔法使いは階級格差がエグい』と言ってたから、聞きにくい部分だしな。
ここはもう少し、みんなと距離が縮んだ時にでも聞いてみよう。
リッカの事も同様だ。
アズと同じ歳だとは話して分かったが、アズほどグイグイくるタイプではないので、彼とは様子を見ながら会話している。
そして、初見のインパクトが未だに忘れられない。
とんでもなく、美少女……もとい、美青年。
アズも中性的な部分があるが、筋肉の付き方や骨格をよく見れば、男性だと言う事を理解できた。背だって、そんなに低くない。
けど、『ボーイッシュな女性ですよ』と、言われればそれはそれで納得するレベルの美貌は持っている。……こう、某歌劇団のトップを張れるくらいの……
だが、リッカはそれと対極だ。
彼も身長こそ低くないが、お人形さんのような中性感。銀糸の長髪も相まって、少し浮世離れした感じ。
はっきり体の線が出るような服装ではない事を引いても、『女性です』と言われれば、素直に信じたと思う。
……まぁ、それもあって、距離を計っている部分も正直ある。
馴れ馴れしいオッサンと思われると凹むからな。
だから、新人女性社員への接し方がベスト。……だと言う、自答だ。
──ダメだな。まだちょっと思考回路が怪しいようだ。
整理と言っておきながら、連想ゲームになって、とっ散らかっている。
まぁ、でも大まかには反芻できた気がする。
それに残りの人物は、ルリたちの認識と同じく、至極ぼんやりの情報だ。
話した事がないか、当たり障りのない表面上の会話。
名前自体も呼称くらいしか知らない。
真面目さが滲み出る、クールな正統派イケメン。『ラフィ』
「サボり魔」と呼ばれる事もある、アイドル系イケメン『カッツェ』
高身長、細身で筋肉質。一筋縄では行かなそうな雰囲気の『マサムネ』
そして、俺を完全に拒絶している事が丸分かりな『アッシュ』
以上。
今のところは、こんな感じか。
思ったより、情報が少ない。もう少し、真面目に情報収集せねば。
明日からは、アプローチの仕方も考えてやってみるか。
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