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ハズレ召喚者Re:ライフ 〜異世界ほのぼの生活(仮)〜  作者: 四方末いそじ
第2章 ハズレ召喚者、拾われる。

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第4幕 君が知らない物語。⑨


「……のう、兄さん。あんた、死ぬつもりなんか?」

 沈黙を破るマリィの問いに、グレイスとセロはギョッとした。

 『助けた』のに『死ぬつもり』 ーーいきなり何を言い出すのかと。

 焦りと困惑と突拍子の無さ。そんなトリプルコンボが脳天を揺らす。


「……え? いえ……そこまでは……多分……」

 そんなグレイスとセロの事などお構いなしに、清寿は頭を捻って悩み出した。

 その答えに、2人は再びギョッとする。


 その煮え切らない返事と、事も無げな素振りが、2人の困惑を加速させる。

 ーーだから一体、何を言い出すのかと。

 もはや理解の範疇を越え、幻聴でも聞いているのかと不安にすらなる。

 そして2人は金縛りにでも掛かったように微動だにすることもできず、その場でフリーズしてしまった。


 そんな2人に触れる事なく、マリィは問いを重ねる。

「なら、何で生きる術を捨てるんじゃ?」

 怒っているワケでもない、悲しんでいるワケでもない。淡々と真剣な表情で聞いてくる。


 ただし、目だけは清寿を捉えたまま。

 お為ごかしの答えなど聞くつもりはないのだろう事は見て取れた。

 

「ワシはのう。あんたを見つけた時から、ちいと違和感があったんじゃ」

 マリィの視線に捕縛され、清寿は逃げることが叶わない。

 言葉にしなくても、真っ直ぐな目が本心を晒せと訴えてくる。

 

「違和感……ですか?」

 清寿は不思議そうな表情を浮かべ、脊髄反射のようにオウム返しをしてしまった。

 ーーけれども、それも致し方ない。

 残念ながら、彼が求める『本心』は、清寿にも分かっていない。

 むしろ、どう言語化したら正確に伝わるのか、清寿の方が悩んでいる有り様だ。


「ほうじゃ。驚きはしとったかもしれんが……」

 思い出しているのか、言葉を選んでいるのか。

 マリィは少し間を空け、静かに続きの言葉を口にした。


「あん時、アンタは怯えとるワケでも、テンパっとるワケでもなかった。寧ろ、微動だにせんで他人事のように見とったじゃろう?」

 清寿はマリィの言葉に押し黙った。


 ──『他人事』……ではなく、『現実逃避』の方が近い気がする。


「それにのう、話を聞いとったら、賢い兄さんじゃ。あの時、自分の置かれた状況が分からんような馬鹿じゃあるまいしの」


 ──分かっていたからこそ、受け入れた。


 現実逃避だろうか、それとも自己防衛だろうか。

 果たして、あの心情を的確に伝える言葉があるのかも分からない。


「……どう言うことじゃ?」

 怪訝そうな顔のセロから漏れた言葉は、マリィに問うたのか、自身に向けてなのか。

 冷静でいて、状況が分かっていたはずなのに動かない。

 セロにとっては、その理由があまりにも不可解で、真意が見えないのだろう。


 それでも答えてくれない清寿に、マリィは自身の確信を『問い』と言う形で口にした。

「兄さん。アンタ、自分の置かれた状況分かって、あのまま殺されるつもりじゃったんじゃろう?」


 ビリリとした空気が走り、その衝撃かセロは身を乗り出すように吠え立てる。

「はぁ!? なんじゃ『殺されるつもり』っちゅうんは!? んな馬鹿言うなや、そがーな匂いはしとらんかったぞ!?」

 自身の経験則から、あの場にそんな最悪のシナリオが横たわっていたとは、考えてもいなかったのだろう。

 その青天の霹靂に、思わず感情が抑えきれなかったようだ。

 

 ──正確に言えば、殺されるつもりではなくて、全てを諦めただけなのだが……。


 そんな事は些細な問題だろう。とどのつまり、結果は同じなのだから。

 清寿の顔に、思わず苦笑が漏れる。


「……なんじゃぁ……どがーになっとるんじゃ……」

 清寿の肯定とも取れる表情に、セロは口をあんぐりと開け、唖然とするしかなかった。

 グレイスも気持ちは同じようで、こちらは随分と渋い顔をして口を開いて固まっている。


「のう、兄さん。深く突っ込む気は無いが……」

 マリィは、そう静かに切り出した。

「ワシらが折角助けた命じゃ。死ぬ理由までは言わんで良いが、財産を放棄する本当の理由くらい聞いても、ワシらにゃバチは当たらんと思うがのう。……違うか?」


 ──そう言われてしまえば、こちらも誠意を見せないといけないか……。


 『助けた命』と言われてしまえば、全てを濁す事は不可能だ。

 それに、きっと彼らの目には、今の清寿の態度が『自暴自棄』に映ったのだろう。

 ――清寿的には、そう言うワケではないのだが……。

 けれど、ここをボカしたまま終わらせると、お互いにとってよろしくなかろう。特に、彼らにとって寝覚めが悪い形になってしまうのだから。


「先ほど、お話を聞いて確信した事もあるんですが……」

 清寿はそう切り出して、次の言葉を言い淀む。

 それから少しの沈黙の後、覚悟を決めたように重い口を開いた。


「私は、この世界では、生きていけない」

 先程まであやふやに答えていた清寿が、言い切る形で留める。

 それは『推測』ではなく、『確信』故の事だからだろう。


「多少の差異はあっても、どのみち長く生きていけない。例え大金を持っていたとしても。……それが一番の理由です」


 『助かった』と言う過去の話ではない。

 『生きている』と言う現在の話でもない。

 『生きていけない』と言う、必ず来る近い未来の話だ。

 遅かれ早かれ、バッドエンドが不可避な世界。

 だから、清寿は『運命に委ねる』と言う選択肢を選んだのだろう。


 そして、部屋には再び重い沈黙が降り積もった。

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