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さようなら  作者: 加羅
8/28

8

 綾は敦也の腕の中で目を覚ました。敦也の体温が心地良く冷え性の綾は気持ちよく眠れた。


 ぐっすりと眠れたお陰で、すっきりとした気持ちで起き上がると、敦也が声をかけてきた。


「おはよう」


「あ、おはよう」


 少し照れながら挨拶をする綾を敦也は少し眩しそうに見つめた。


「よく眠れた?」


「ええ、お陰様で」


「なら、ベッドとしては合格ってことだな」


 楽しそうにそう言いながら起き上がる敦也を、顔を真っ赤にして綾が睨みつける。


「こんなことで照れないで早く慣れてくれよ、奥様。オレは早く子供を持つ関係になりたいんだから。お祖父様も俺たちの子を楽しみにしているはずさ」


「もう、バカ!」

 

 綾のスマホが鳴る。画面にはまたしても知らない番号。


 綾は誠也かも?とは思ったが、仕事の電話の可能性がある以上、出ないわけにもいかない。


「おい、郷司をどうしたんだ?」


 綾が声を発する前に、誠也の棘のある若干焦ったような声がスピーカーから聞こえる。


「郷司がどうしたの?」


「え、何も知らないのかよ。郷司が今シーズン出演停止になった」


 誠也の声は急に弱々しくなり、テンパっている様子が受話器越しに伝わる。


「何が原因なの?」


「わからない。今、法理部に呼び出されて行ってる」


「綾、先にシャワーを浴びてくる」


「お、おい、そこに男か居るのか!誰だ!」


 スピーカーが拾った敦也の声が誠也に聞こえたのだろう。誠也の苛立ちと怒号が混じった声が耳を劈く。


「誰だろうと、貴方には関係ないでしょう?もう、婚約者でも、恋人でもないんだから、強いて言えば、お祖父様同士が仲良しの幼馴染ってところかしら?」


「そんなに婚姻届を出す日を延ばされたのが嫌だったのかよ。それは申しなかった」


 誠也の駄々っ子を宥めるような言い方に、綾はカチンときた。


 言い返そうとしたとき、敦也がスマホを取り上げる。


「別れたんだろ?もう、電話はかけてこなでくれ綾はオレのものなんだから」


「はあ、お前、誰だよ!!」


 電話の向こうから、誠也の怒鳴り声が聞こえる。


「誰だっていいだろ?関係ないんだから、まあ、そのうちわかるさ」


 そう言うと、敦也は電話を切った。


 郷司は優里亜が好きだ。優里亜もそれをわかっていて、都合良く郷司を連れ歩き、人を威圧したり脅したりするのに利用していた。昨日、綾を待ち伏せしたとときみたいに。そのどれかがチームや会社、マスコミにでもリークされたのだろう。


 敦也が出て行ったドアを見て、まさかね?と綾は思った。

 

 昨日の今日、それも早朝。流石に早すぎる。



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