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少し飲み過ぎたのだろう、綾がトイレのために席を立つ。
廊下から庭に目を向けると、紅葉の木が青々と茂っていたら。その下に苔むした丸い大きな石と、獅子おどし、そして、鯉が泳ぐ池。
紗代子とよく餌をやった鯉達。
トイレから出て、長い渡り廊下を戻ろうとしたら、柱に誠也が寄りかかりこちらを見ていた。綾が無視をして、通り過ぎようとしたら、不意に腕を掴まれた。
「おい、あれはなんの真似だ?」
ドスのきいた不快感をあらわにした誠也の声。
「離して!」
綾は誠也を睨みけ、手を振り解こうとしたが、体格の良い誠也と細身の綾では力の差は歴然て、その手を振り解くことは出来なかった。
「兄さんと結婚した?ヤケでも起こして兄さんに結婚を迫ったのか?」
綾を見下して嫌味ぽく鼻で笑うと誠也は身を反転させ、
壁へ綾を押し付けると、逃げられないようにもう片方の手を綾の顔の横の壁に付けると、距離を縮めた。
誠也の息がかかるほど詰め寄られ、綾は不快感と恐怖を覚え眉間に皺を寄せる。
「尊おじいさまが説明した通りよ!これでいい?離してよ!!」
顔を背けると、顎を掴まれ、目を合わせられる。
「は?兄さんから?そんな訳ないよな?どうやって誑かした?兄さんには、小百合さんがいるんだぞ?兄さんからの提案だとしても、お前は、会社を安定させるための駒でしかないんだ!綾、目を覚ませよな?」
ねっとりと懇願と狂気に満ちた視線が絡んでくる。
誠也は「小百合さん」と言う言葉に一瞬動揺した綾を表情を見逃さなかった。
「綾、もしかして、小百合さんの存在を知らなかったのか?」
馬鹿にするような口調て、勝ち誇ったような表情を浮かべる誠也。
「兄さんも酷いよな、小百合さんの存在を隠して籍を入れるなんて」
誠也はしっかりと綾の目を見据えると、目を逸らそうとする綾の顎をグイッと持ち上げた。
カタン
獅子おどしが音をたて、風が紅葉の葉を揺らす。
足音が聞こえ、誠也が手を離した。
「兄さんと別れたくなったら、電話して。小百合さんは兄さんがパブリックスクール時代からの付き合いだ。自分で調べてみたらいい」
そう言うと、誠也は玄関の方へ去って行った。
綾の頭の中は、『小百合さん』でいっぱいだ。
厳格で厳しいと噂のパブリックスクール、全寮制の男子校だったはず、なら、いつ出会ったの?




