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さようなら  作者: 加羅
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 気になり出したら止まらないのが人間というものだ。


 あの日から、綾の頭の中は『小百合さん』でいっぱいだ。敦也が電話をしている時はつい聞き耳を立ててしまっている。


 メールも覗きたい衝動にかられる。


 敦也本人に聞こうにも、どう切り出したら良いか重巡し上手くいかない。


 敦也は相変わらず、優しく、こちらのペースに合わせてくれてはいるが...


『小百合さん』と密会している形跡は今の所見つからないけど、四六時中何をしているかなんて観察はできていないから、絶対とは言い切れない。


 敦也は仕事が終われば直ぐに帰って来ているようだし、終わらなくても、家でできる仕事であれば持ち帰り、書斎やリビングでしている。


 どちかというと、なるべく自分の視線が届く所に綾を置いておきたいような、そんな雰囲気すらある。


「綾、指輪だが、良い石が手に入ったんだ。カットも素晴らしい品でね」


 綾の左手の人差し指を撫でながら、指輪のデザイン画を渡してきた。


 数枚あるデザイン画は、婚約指輪と結婚指輪のもの。重ね付けしても使えるようになっている。


 ペアで装身具を付けたい人なのかもしれない。いや、私が誠也と交際していたから、その印象が強くて、結婚したのは自分だと主張するためなのかもしれないけど...


 ニュースで美馬の社長がピンクダイヤを落札したと流れていた。まさかとは思うが綾の胸は期待に高鳴った。


 綾の心はまだ、会ったこともない『小百合さん』のせいで浮き沈みが激しい。


「これ、いいわね。この中央のはピンクダイヤなの?」


 いやらしいとは思いつつも、それとはなく探りを入れる綾に、敦也はクスリと笑った。


「ニュース見たのか?サプライズにしたかったんだけどな。まさか、あそこまで騒がれるとは思わなかったよ。石は指輪用だから、小ぶりだが、カットと質が良くてね。一生に一度のプレゼントだから、どうしても特別なモノを贈りたかったんだ」


 敦也のこの言葉に綾は『小百合さん』の存在を疑い始めた。大々的にニュースになるようなダイヤを綾の為に購入したのだ。『小百合さん』が敦也と交際していたのなら、敦也と喧嘩になっているだろうし、敦也も、『小百合さん』をこんなニュースで不愉快ない気持ちにさせたくないだろうから。


「このデザインいいわね」     


「あゝ、綾の指に似合いそうだ。そうだ、指輪と合わせたデザインのネックレスとピアスも作ろう」


 敦也の手が綾の耳朶に延び、そのまま首へ滑り落ちる。


「なら、ピンクダイヤは一つじゃ足りないわ」


 クスクス冗談ぽく言う綾に敦也の熱っぽい視線が絡む。


「あゝ、最低、後3つ必要だ」


 敦也の唇が綾の首筋に当たり、綾の目が見開く。


「何、真っ赤になってるんだ、奥様」


 揶揄われたと思った綾は、顔を真っ赤にして、敦也をポカポカ軽く真似をした。





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