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月に1回催される美馬家の食事会に、綾は敦也と共に参加している。
尊が会社を継いでから、必ず行われてきた慣習の一つだ。この食事会に招待されるのは、美馬の家族と、尊と一緒に苦楽を共にし、美馬を支えてきた初期からの従業員達。彼らは今や顧問や代表取締役、相談役、執行役員とすて美馬に携わっている重鎮。
綾は幼い頃から、ちょくちょく、紗代子に「綾ちゃん、美味しいご飯食べにおいでー」と誘われて、食事とその後に出るデザート目当てに参加していた。
紗代子が参加できなくなってからは、流石に場違いな気がして、断ってはいたが....
「久々の全員参加、嬉しく思う。さて、今回は2つ皆に重要な報告がある。一つは誠也の社長就任取り消し、そして、もう一度は敦也の結婚だ。皆、それぞれの方法で綾が誠也と別れたことは耳にしているとは思うが、敦也が別れたその日に説き伏せて籍を入れよった」
誠也が目を見開く。
今日の尊は上機嫌で饒舌だ。
「やっと、綾を我が孫として、迎えることがでにたことを非常に喜ばしく思う。これで、紗代子の遺言を守ることができた。わしが受け取った、紗代子の遺品はみな、綾へ譲った。面倒だったで、別荘ごとな。この先、綾が紗代子のドレスや着物、宝石を身に纏うことになることを理解してほしい。綾、申し訳ないが、紗代子の服や宝石、バッグを使ってやってくれ。これは生前の紗代子の願いでの、明日から、仕立て屋をよこすから、ザイズ直しに付き合ってくれ、老先短いこの年寄りの最後の頼みと思うて付き合って欲しい」
誠也の顔色が変わる。
「え はぁ?兄さんと結婚した?え?式は?来月だったんだぞ?どうゆう事だ?おい!綾!!」
尊が誠也を睨みつける。
「式はワシがキャンセルしておいた。招待客にも、再度、相手と日取りが変わったと、ワシから連絡を入れておる」
「クソだろ...」
怒りでワナワナと震える誠也だが、流石に、尊にくってかかることはできずに、ただ綾を睨みつける。
それとは別に、誠也は祖母の遺品が全て、綾にいくことも納得がいなかなった。
母の麗香が、いつ自分のものになるのだろうと理不尽な扱いにも、それを楽しみに耐えしのんできた品々だ。それが母の手には一切渡らないという事実を突きつけられた。
綾、母さんが欲しがっていたのを知っていて、なぜ、譲ろうしないんだ。強欲な。
「尊、良かったな」
「紗代子さんも、あの世でやっと安心できるってもんよ」
口々に綾が敦也と結婚したことを喜ぶ重鎮達に、誠也は吐き気がした。
「そういやぁ、秋夜もそろそろ大学卒業だろう?尊、秋夜はどうするつもりだ?」
「おお、そうじゃな、秋夜、どの会社に配属されたい?」
秋夜は長男の息子だ。誠也を目の敵にしている節がある。
「おじいさま、ateがいいです」
誠也は怒りを抑えきれず秋夜を睨む。重鎮達と敦也は面白そうに尊の言葉を待ち。綾は思わず、目を見開いたまま、誠也へ視線を向け、尊の二人の息子達は互いに非常に気まず気に顔を伏せた。
「ateか」
「はい、いずれ、ateの社長の椅子に座れるように精進致します」
自信満々に誠也を挑発する秋夜。
「おじいさま、わざわざ、俺と同じ会社に入れなくても」
誠也がたまらずに、口を開いた。
「切磋琢磨しようと、可愛い従兄弟が言ってるんです。それも、誠也兄さんの庭で、広い心で迎え入れてくれたら良いではないですか?」
秋夜が挑発的に誠也を煽る様子に、敦也と尊は楽しそうだ。
「ははは、そうか、そうか、同じ土俵で競いたいか!」
「はい、僕も敦也兄さんと同じように、他の新入社員と同じ扱いからのスタートでお願いします。時間外に他の研修や視察を入れて貰えたら、それで充分です」
誠也の顔がカッと赤くなった。
誠也は『俺は社長候補なんだぞ、新入社員研修なんな受けれるか、雑用なんかできるか』と、駄々を捏ね入社して直ぐに秘書を要求した。
「中々、ハードだがこなせる自信があるのか?」
尊が期待を込めた目で、秋夜を見る。
「勿論です。歯を食いしばって、寝る間を惜しんでも食い付いてやりますよ!じゃなきゃ、株主総会スッポがした後に、ビヤガーデンで花火大会楽しめる程余裕がある人とは競えませんから」
嫌味たっぷりに誠也を挑発する。
「はっははは、期待しておるぞ」
「はい」
誠也の父も秋夜の父も下を向き、居た堪れない様子だ。
綾はどうして、ここまで誠也に突っかかるのか気になり、ついつい、敦也の袖を引く。敦也は「後でな」とそっと耳打ちしてくれた。
尊が二人の息子に視線を向けた。
「お前らも、敦也と秋夜を少しは見習って、もう一踏ん張りしてみたらどうじゃ」
尊は少しの呆れと少しの期待、そして、親としての不甲斐なさが入り混じったような顔をした。
誠也は怒りに震え食が一向に進まない様子だった。
「ふう」
と、軽く息を吐いて
「おじちゃん、申し訳ないですが、今日はこれで帰ります」
と、告ると、部屋から出て行った。




