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優里亜は大企業勤めとはいえ、一般職。転勤がない代わりに住宅補助も無ければ、社員寮に入ることもできない。給料も総合職に比べればかり低い。
美馬に一般職の募集はない。いわゆるコネ入社枠と、妊娠してから仕事を続ける為に働き方を変える人の為に一般職が存在する。コネ入社は、ほんの少しだけ美馬にいて、寿退社する裕福な家庭のお嬢さん。ここも、片手に収まるほどもいない。
自力でまともな職を見つけれなかった優里亜は、誠也に泣きついてのコネ採用。
義母が稼ぎ頭の実家には居座れず、綾は郊外に1kのアパートを借りている。都内に住みたかったが、優里亜が払える家賃では、女性が一人暮らしする為の条件を満たす物件が無かった。
終電を逃しては誠也が住むこの寮に泊まっていたが、もう、できなくなると告げられた。
懲戒解雇となれば、退職金は支払われない。あの狭いアパートすら借りれなくなる。
派遣で働くしかないの?
美馬グループの社員という肩書きが無くなることの恐ろしさが、一気襲ってくる。
懲戒解雇処分も、誠也がなんとかしてくれると思っていた。でも、美馬グループ本社の社長である敦也の台詞では月曜日までに正当な理由の申開きをしないと、そのまま手続きが済んでしまう。
正当な申開き。
裁判が覆るような事実。優里亜が靴のデザインを盗んだのではないという証拠を出すこと。
無理よ。無理。
懲戒解雇の通知が来た時、智がさっさと諦めて少しでもマシな条件で辞めれるようにシフトしたのは聞いていた。
『優里亜、さっさと認めて自主退職にできないか相談して、新しい職を探した方がいいぞ』
と、智に言われたが、誠也がなんとかしてくれるとたかをくくっていた。
頬を腫らし、呆然としている誠也。
先ほど、誠也も僻地へ飛ばされるかもと聞いたばかりだ。
「誠也お兄ちゃん、どうしよう、私、明日、本当に辞めさせられるの?そんなことしたら、生きていけないよぉ」
可哀っぽく胸を押し当てながら腕にしがみついて、上目遣いで見上げる。
「そうだよな。優里亜は家に居場所が無いっていうのに、何でこんな酷いことができるんだ?綾なんか、恵まれているんだから、職くらい失ってもなんともないだろ?クソ、今からでも、訴えを退けるように話を付けてくる」
誠也は優里亜が持ってきた保冷剤で殴られた頬を冷やす。




