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マスコミ、入学希望者、金の卵を探しに来た各種関係者、在校生にOB、近隣の住人、推しに会えると、イベントを見つけたファンの子達や、バズる為の配信者。
イベントには沢山の人が集まった。入り口には募金を呼びかける学生達や、チケットを売る学生達、呼び込みをする学生達で賑わっている。
キッチンカーや、模擬店が出て、広場ではダンスサークル、チアサークル、軽音サークル等が交代で催しをしている。
お祭りムード全開で賑わっている。
大教室ではトークショーが開催され、推しを生で見れると集まったファン達を学生スタッフが誘導している。
綾は茉莉と控え教室で入念な衣装合わせを受けていた。卒業制作や、課題で作成した服な為、サイズはモデルが服に合わせるスタイルだ。だから、モデルでない人もランナウェイに上がる。
ここ数日、服の手直しに明け暮れたている服飾科の生徒達の目の下には濃いクマができて疲れきっていたが、目は爛々と輝いていた。
綾は手直しされたドレスのサイズ確認を受けていた。
「ウエスト、だいぶ細いデザインなんだけどまだだいぶ余裕があるなんて!!ああ、もう、最高!!理想が具現化したようなモデルがOBから見つかるなんて!もう、夢のようよ!!ああ、エスコートしてくれる人が見つかれば文句なかったんだけど...」
「美里ったら、本当にテンションが高い」
横でサイズ確認をしていた学生が呆れたような声を出す。
「そりゃぁ、そうよ。このドレス、着てくれる人が見つからないかもって、諦めていたところにマリカ先輩からの連絡よ!で、合わせてもらったら、イメージもサイズもピッタリ!!もう、興奮しないわけにはいかないでしょう!!3日前のフィッティングの日から、寝不足と興奮でアドレナリン出まくりよ!」
3日しか手直しの時間がなく、ほぼ徹夜でドレスの手直しをしていた美里の興奮は最高潮だ。
ドレスを纏い、ヘアメイクを施されていく綾を前に里美は、美容科の同級生に指示を出しながら、「可愛い!!」「あゝ素敵」「もう、最高」と大絶賛の嵐だ。
「はあ、もう、泣きそう」
全てが整った綾を見て、美里は泣き出してしまった。
このドレスは彼女の大学生活の集大成だ。
美里はパシャパシャと写真を撮る。この写真を引っ提げて、自分を売り込むのだと涙を拭きながら意気込んでいる。
綾は美里がここまで喜んでくれたことで、引き受けて正解だったと思った。後は、ランナウェイを上手に歩ききらなきゃならない。
綾が意気込んでいると、茉莉がスーツをビシッとカッコよく着こなしてやってきた。
「WOW、素敵じゃない!!」
「マリカは流石ね!ふふふ、パリコレモデルに褒められると、照れるわ。デザイナーの腕が良かったのよ」
綾が恥ずかしそうに笑うと、茉莉もにっこりとした。
「茉莉先輩、順番です。お願いします」
茉莉は3回着替えるらしく。バタバタと出ていった。
茉莉がランナウェイに登場すると、キャー!という黄色い声と、オーという感嘆の声が聞こえる。
それは別で何やら控室入り口で揉めているような声が聞こえる。それが気にはなったが、綾は自分のことで精一杯でそれどころではなかった。
綾の順番が来て、ステージの袖に上がる。ランナウェイのまわりには沢山の人。
綾は気を引き締めてて一歩を踏み出した。
端まで歩き、ターンして戻ろうとしたときステージに液体が撒かれた。綾は滑りバランスを崩して倒れた。
「キャー」
と叫ぶ女性の声。
不敵な笑を浮かべる優里亜の姿が綾の目の端に映った。
綾はなんとか起き上がり、ステージ袖へまで歩ききる。
高いヒールを履いていた為、捻挫しているみたいだった。無惨にもドレスには液体がこびりつき、急いで脱いで洗ってもらっているが、落ちる気配がない。
ステージも清掃が入っていると聞いた。液体はノリのような粘着力のあるもの。
腫れた足を保冷剤で冷やしていると、控室のドアが勢いよく開いた。
「ねえ、何で私、モデルとして出れないの?」
優里亜だ。
控室の空気がピリくつ。
「あの、今回はこちらで服のサイズとイメージに合った卒業生や在校生の方にお願いしてまして」
「私に合う服が無かったってこと?」
沈黙が控室を支配する。
優里亜のサイズの服が無かったわけではなく、誰も、優里亜を選ばなかった。ただ、それだけ。
優里亜がゆっくりと控室を見渡す。
「それとも、私を選ぶなって、誰かに言われたの?」
優里亜の視線の先に、綾が居た。
「それはあり得ません」
対応している学生がはっきりと否定する。
「ふーん、そっか。なら、あの人の代わりに私が出てあげる」
優里亜の視線の先には綾がいた。美里はビクッと身体を震わせる。
「ドレスがダメになったから、服はないわ!!」
「綾、ドレスダメにしちゃったの?作成した子、可哀想じゃない」
優里亜はさも、綾が悪いことをしたようにゆっくりと綾へ近づいてくる。
綾が事実なだけに、何も言い返せないでいると、美里が牙を剥く。
「綾先輩が悪いわけじゃないわ!ステージに変な液体ぶちまけた奴が悪いのよ!!」
ドレスと、ランナウェイを歩く自分のドレスを着た綾、その大事な時間をダメにされた美里は、疲労感も相まって、もう、限界だった。
自分に綾のために用意した服を着せろと詰め寄る優里亜に気を遣える余裕なんて、1ミリも残っていない。
ギリっと優里亜を睨みつける。
「そうだとしても、学生にとってこのチャリティーイベントは凄く力を入れたもので、大切な物でしょう?服、着てくれる人がいなきゃ、お披露目できないでしょう?」
綾が着る予定だった服はそれだけじゃないでしょう?さ、私に頼みなさいよと言わんばかりの優里亜。
申し訳なさでいっぱいの綾。
怒りと疲れで今にも倒れそうな美里。
ランナウェイの掃除が終わったのか、モデルと服飾科の生徒、メイクアップアーティストを志す学生達がバタバタっ忙しく動き出す。
綾が今日、着る予定の服はこのドレスのみ。だけど、明日は別の服を着ることになっている。下手なことは言えない。
ガヤガヤと控室入り口がうるさい。
ドアがガチャリと開いて、運営委員の学生達が必死で止めるのを振り切り、男達が乗り込んできた。
「優里亜!」
目の前には誠也と、その取り巻き達。
綾はげんなりとする。誠也の側に運営委員会のメンバーの姿が見えた。
「倉田さん、これはどういう事なんですか?」
誠也が運営委員会のメンバーを問い詰める。
「そう、言われましても...。モデルは作成者が選ぶことに...」
「難しいことじゃないだろ?優里亜に合いそうなサイズの服を並べて、その中から、一点、優里亜が選ぶ。それだけのことがなぜ、できない?」
騒がしかった控室がシーンと静まりかえる。
服飾科の生徒達は自分に矛先が向かないか、戦々恐々としながら一気に視線を逸らしたが、意識が誠也へ集中していることが窺える。
誠也の言葉をニマニマしながら、聞いている優里亜を気持ち悪いと、綾は感じた。
「はあ?それだと、この女の我儘のために、誰かに生贄になれ!って聞こえるけど?」
茉莉の生贄という言葉に、優里亜の顔がカッと赤くなったのが見てとれる。
「そんな言い方はないだろ?」
「じゃぁ、犠牲?」
くすくす笑いながらそう言う茉莉を誠也は睨みつける。
「おい、綾、碌でもない友達とつるむな!」
足を保冷剤で冷やしている綾を、誠也が見つけた。
「従姉妹のために、美馬の名前を汚してる貴方より、まともだと思うけど?」
黙っていようと思っていた綾は、矛先を向けられ仕方なく口を開いた。
「綾、お前!」
誠也が綾に怒鳴ると、優里亜の表情が喜色に変わる。




