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さようなら  作者: 加羅
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「お兄ちゃんどうしよう」


 電話の向こうから、優里亜の泣き声が聞こえる。綾の家にあったデザイン画を自分の名前で、アユラの企画部に出したら商品として採用された。


 せっかくだから、雑誌に掲載して貰ってアピールした。


 綾の会社から盗作だと訴えてられて、今、懲戒解雇処分の通知が会社から内容証明で送られてきた。便宜を図ってくれた智から、自分も懲戒解雇の通知がきていると連絡を貰った。


 的な内容をグズグズ泣きながら話してくれた。


 嘘だろ...


優里亜はそうでなくとも、出勤停止処分でやらかしたことがフルネームで、いや、下手したら、顔写真付きて(社内広報誌に社名と部署、フルネーム入りで優里亜は載ったことがある)広まっているって、いうのに、そこに盗作で懲戒解雇。


 もう、株式会社美馬グループでは働けないばかりか、美馬の関連企業での就職も厳しい。


 あっ、SNS...


「優里亜、SNSのアカウント全て消せ!急いで!顔出してるショート動画も全て!」


 嫌な予感がする。可愛いから、インフルエンサーになっちゃった❤︎なんて、騒いでいたことを思い出した。


 SNSを開いてみれば、案の定、大炎上している。優里亜がアカウントを消しても、過去にあげた内容がスクショされていて、それが拡散されてしばらくは燃え続けるだろう。


「あんなにフォロワー増えたのに消さなきゃならないの?」


 この後に及んでも、承認欲求の塊である優里亜はアカウントを消すことを躊躇う。


「急いで、消せ!今も、フォロワーが鰻登りで増え中だ!全て敵意と悪意を持った人ばかり!」


 優里亜は可愛いが、結婚するにはスペック的に釣り合いが取れない。


 今回のやらかしも、マイナス点だ。だが、切り捨てきれない。


 はあ、助けてやりたいが、今、オレがそれどころじゃない。


 綾へ電話するが、繋がらない。電話を代えてかけても出る気配がない。


 クソ!!


 こっちも、我慢の限界だ!!いつまでへそを曲げれば気が済むんだ!籍を入れてやるって言ってるじゃないか!それで、満足しろよ!!


 まさか、指輪が問題なのかよ。


 あの時、婚約指輪を優里亜がふざけて持って帰った。SNSに指輪を付けた写真をあげていた。はあ、取り返せばいいのか?自分で指輪外して、投げ付けたよなぁ、綾のやつ。新しく新調すれば満足か?


 何よりイライラするのが、


「竜崎のお嬢様、今、フリーなんだろ?ワンチャン行けんじゃね?」


「長男さんとこの坊ちゃん、大学生4年だよな?狙うよな?多分」


「お前、イケるんじゃないか?営業成績上位、顔良し、学歴良し。上手くいけば、社長になれるかもよ?」


 なんて、言葉を社内で散々耳にすることだ。


 だが、問題はこいつらじゃない。あの時、一緒に居た男は、誰だよ。


 居ても立っても居られず、もう一度、綾の携帯を鳴らす。呼び出し音はなるが、出る気配はない。そのうち、プツと切れた。切れては鳴らし、切れては鳴らし、イライラしながら画面をタップする。


 クソ!


 イライラしながら、シャワーを浴びる。


 洗面所に置いてある何とかっていう、金木犀の香りのハンドソープが目に入った。優里亜が高いやつ!!って、ウキウキで使ってたっけ。


 こうなると、綾が持ち込んだ物がやたらと目に付く。


 フューザー、肌触りの良い国産タオル、コーヒー豆、どれも綾のお気に入りだ。どれも、しっかりとしたクオリティで、選んだ人の育ちの良さが伺える。

 

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