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さようなら  作者: 加羅
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 月曜日、綾が出社すると回線がパンクしそうなほど電話が鳴り響いていた。アユラ社長の謝罪が某ファッション誌に掲載されたことが原因だ。


 該当社員とデザインを盗んだグループ会社の女子社員の懲戒解雇。解雇した社員のことは、今後、彼らの人生があるのて掘り下げれない為、質問は受け付けない。


 これがアユラからの説明。


 なら、その真相を知りたいマスコミ、ジャーナリスト、一般市民は?そう、綾が勤めている会社へ...


 アユラがそう声明を出している以上、こちらは話せないと突っぱねると、靴に関する取材をとファッション雑誌から、靴をデザインしたデザイナーへの取材依頼。あの手この手で情報を引き出したいライターやジャーナリスト達に広報部はヘキヘキしていた。

 

 美馬の縁戚からデザインを盗まれたデザイナーはいったい、どんな人物なのか?その縁戚女性との関係は?皆が知りたい情報は靴のデザインより、そのデザイナーの


 綾は同僚達に申し訳なかった。


 あの、アユラの社長が美馬の縁戚女性より、綾を優先した。これで、綾はこの会社で色眼鏡で見られる存在となった。


 すれ違う先で、チラチラ見られる。色々と聞きたそうな同僚達。会社の上層部が廊下ですれ違う時、平社員の綾に会釈をする異様な光景。


 もう、この会社には居れない。


 綾は悔しさで胸が張り裂けそうだった。大学で4年間デザインを学び、大好きなこのメイカーに就職できた。小さな会社ではあるが、そのコンセプトが自分に合っていて、その会社で働けることになったときは、もう、天にも昇る心地だった。一生懸命に食らいつき、努力し、やっと自分デザインが商品化されるようになり、これからって時期のこの事件。


 優里亜と誠也に、自力で築き上げた居場所を奪われたようなものだ。


 ははは、馬鹿みたい。なんであんなやつ好きになったんだろ?


「竜崎さん、部長がお呼びよ。第二打ち合わせ室へ来るようにって」


 つんけどに、企画部の女性社員にそう告げられる。彼女の表情は貴方のせいで、迷惑しているんだけど?という感情が、ありありと浮かんでいる。


 社の外線は今、自動音声対応となり、各種関係者にはメールか個別の社用携帯にご連絡下さいという、通知を一斉メールしたようだ。


 第二打ち合わせ室には、企画部長、営業部長、マーケティング戦略部の部長と新規戦略担当課長が待っていた。


「竜崎さん、座って下さい」


 言われるまま座ると、担当課長が企画部長と目配せをした後、口を開くいた。


「雑誌の取材を受けませんか?」


 老舗和菓子屋『竜崎』の名前を出せと言われているのだと、綾ら理解した。和菓子屋『竜崎』の会長と『美馬』の会長が懇意なことは各界で有名だ。その『竜崎』の孫娘がデザインしたという話題性と、今回の盗作騒動での上がった自社ブランドの知名度、それを一気に飛躍させ、騒動を上手く丸めたい上層部の思惑が透けて見える。


「雑誌の取材ですか....。あの、私、今月一杯で退職するつもりなのですが...」


「退職ですか?こうして、丸く収まりそえなのですから、辞めるのは時期尚早ではないかな」


 営業部部長の媚びるような視線が気持ち悪い。


「大原さん」


「わかりました。いや、もしかしたら、と、思うのは致し方ないでしょう。わかってますよ。竜崎さんが雑誌の取材を喜んで受けるような方なら、わざわざ、我が社に入社しないことくらい。アエラなら、入りたいと言えば入社できたでしょうし、それこそ、望めば大々的に和菓子屋『竜崎』の名前を出して、本人の顔写真付きで特集を組めるでしょうし、デザインした靴もそのページに掲載して貰うことなんか朝飯前でしょうし。それがわかってての足掻きですよ。まあ、わかるでしょう。私はパイプと、知名度が喉から手が出るほど欲しいんですよ。貴方もそうでしょう」


 営業部長が企画部長へ冷めた視線を向ける。


「そりゃぁ、そうでしょう。もしかしたら、と思うのは致し方ないじゃないではないですか?まあ、今回のことで、ブランドの知名度な上がったんですから、竜崎さんはおきになさらないで下さい。貴方のデザイン、好きだったので残念ではありますが」


「ありがとうございます」


 現実的で合理的、売る為なら使えるものは使う。しかし、何より社員と社の名誉を損なうことを嫌う営業部長らしい言葉だ。


 綾はデザインが好ましいと褒められたことは、単純に嬉しかった。


「話は粗方終わったかしら?なら、私にも時間を頂戴。あゝ、私は引き止めるとか、そんな話じゃないの。少し確信したい事があるだけだから」


「なら、我々はお先に失礼するよ」

 

 皆が出て行ったのを確認すると、マーケティング部の部長が、ポケットからスマホを出してた。


「竜崎さんのデザインを盗んだのは彼女ですよね?」


 優里亜のSNS画面のスクショが、彼女のスマホに映し出されている。


『アエラから、私がデザインした靴が売る出されそう!!みんな、買ってね!』


 問題の記事を掲載した雑誌を片手に、可愛くポーズを決めた自撮り写真がアップされている。


 綾は首を縦に振った。


「そうだと思ったわ。彼女、全く変わってないのね。残念だわ」


「優里亜さんを知ってるんですか?」


 マーケティング部部長は、なんとも言えない表情をする。


「私がシングルなのは知ってるわよね?」


 綾は頷く。


「彼女、我が子の同級生なのよ。娘が執拗に虐められたわ」


 苦々しく吐き出す部長は、企業人ではなく怒れる母親の顔をしてる。


 綾は何と声をかけていいかわからず、言葉を探すように彼女の顔に視線を向ける。


 優里亜は昔から、性根が腐っていたのね。


「今も、その後遺症で生活に支障をきたしているわ」


 どれだけ手酷くやられたのだろう。


「あの、いつの頃の同級生ですか?」


「中学ですよ。原因は公立校推薦枠。彼女のせいで、高校に入学前には引っ越す羽目になったのよ。まあ、それは置いといて、ありがとう。事実確認がしたかっただけだから、流石に嫌悪してるからって、無実の人をこの業界から排除はできないでしょう?」


「あ、は、はい」


「しかし、ギリギリの線だったのね、最初雑誌広告も」


 部長はそう言うと、ニャッと不敵に笑った。


 美馬の縁戚。美馬と言えば世間一般的に尊を思い浮かべるが、今回の美馬は浩二と誠也を指す。読み手と記事には乖離があるが、間違ってはない。

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