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好きな子を落とすために拾った黒ギャルに恋愛コンサルしてもらったら、なぜか俺にだけ激重で困っている件  作者: ちくわ食べます


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第9話 心がピュアな証拠

 俺はテレビなんぞ付けずに静かに本を読んでいたいのだが……


 黒豹はテレビに動画配信サービスを繋いで、ひたすら恋愛映画や青春ドラマを見ている。


「あーもう、なんでここで告白しないかなぁ! 絶対告白待ちでしょ! そのまま押し倒したらイケるって!」


「……他人の恋愛パターンを観測して、そんなに楽しいのか?」


 お前だっていっぱい恋愛してきたんじゃないのか?


 ……俺と違ってさ。


 こういうのって恋愛に憧れる女子が見るものなのかと思っていたが。違うのか?


「真面目くんもこれ見て、女の子のデリケートな気持ちを少しは勉強しなよ」


「はあ? ドラマなんてフィクションだぞ。しょせん創造の世界だ。リアルなデータにはならないと思うが」


「あのね~、リアルじゃなくても女の子はこういうベタな展開が大好きなの! これもコンサルの一環ですぅ。ほら、座って見る!」


 俺は腕を引っ張られ、強引にソファへ座らされた。


 そして、そのまま画面を一緒に見つめることになった。


 主人公の男女が、すれ違いを経て大雨の中で抱き合うシーン。


 黒豹は「最高……」と目を輝かせているが……俺はツッコミたくて仕方なかった。


 いや……傘くらい買えよ。すぐ近くにコンビニがあっただろうが。


 たとえ金がなくても、雨宿りできるところはあっただろう。せめてそこで抱き合え。


 ずぶ濡れになって風邪を引いたらどうするつもりだ?

 

 明日の予定が狂うだろうに……お前たちは先を読むことすら出来ないのか?


 そんなツッコミを心の中で入れ続ける苦行が小一時間続いた。


 くっつきそうだったのに離れてみたり……キスするのかと思ったらしなかったり。


 お前らはさっきから何をしてんだよ。


 ――全く理解出来ない。


 恋愛映画の意味不明さに……イライラが限界突破しそうだった。


 全ては隣にいる黒ギャル……黒豹のせいだ。


 コイツと生活していると、頭から煙が出そうだ。


 煙が出たところから毛が抜けたらどうしてくれるんだよ。


 若ハゲじゃねぇか。虚しいだろ。


 医者になんて説明すんだよ。「黒ギャルと同居したら禿げました」って言うのかよ。色んな意味で勘違いされるだろうが。


 ――それはさておき。黒豹と俺は全てにおいて正反対だ。


 陰キャと陽キャというだけじゃない。


 性別も趣味も、考え方から感性までぜんぜん違う。


 ……こんなやつと暮らすのは無理だったんじゃないか?


 今さらになって後悔の念が押し寄せてくるが、黒豹との契約はすでに交わしてしまった後だ。


 しかも、出ていこうとした黒豹を引き止めたのは他ならぬ俺だしな。


 自ら契約書を作ってまで同居させたのに、俺から契約を破るわけにはいかない。


 考えろ、これはあくまで取引なんだ。


 星城院さんとの恋愛を成功させるための、ビジネスライクな関係。


 黒豹のくだらん趣味も、散らかったリビングも、長すぎる風呂も。


 全部、星城院さんと付き合うための必要経費だと思うしかない。


 黒豹がまたテレビに向かってなにか言っている。


 まったくもって……くだらない。


 くだらないんだけど……1人でいた時よりは暇じゃないかもな。


 こんなやつでも、一緒にいるとチョット楽しいのかも知れない。


 ◆


 次の日、俺は予定通り美容院に行ってきた。


「おぉ、見違えたね真面目くん! 悪くない、悪くないよ!」


「そうか? 長さはそこまで変わってないと思うが……」


「分かってないなぁ~全然違うじゃん。すっごくいーじゃん。見た目だけは陰キャを卒業したね」


 違いはよく分からんが、褒められると悪い気はしないな!


「これで、星城院さんの印象も良くなるか?」


「うん、いい感じだよ。知らない人が見たら童貞に見えないかも!」


「基準そこかよぉぉ!」


 なんかニヤニヤしてると思ったら、そういうことか!


 童貞イジりやめろぉぉぉ! 


 童貞が、いや俺が可哀想だろうがぁぁ!


「いいか黒豹? 童貞は心がピュアな証拠でそれはつまり心身ともに――」


「これで次の段階に移れるんじゃない?」


「ん、次の段階……だと?」


 どういうことだ?


 そのニヤついた顔はなんだ?


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