第28話 期末テスト
ファミレスでの仲直りを経て、俺たちの関係は以前よりもほんの少しだけ柔らかくなった気がする。
だが、そうこうしているうちに2学期の期末テストが迫ってきていた。
俺たちの……いや黒豹の勉強の成果が試される時が来たのだ。
赤点を回避し、いい点を取れれば”1”の数だって減るはずだ。だが、もし赤点があったらその教科の成績はおそらく”1”のまま。
そうなると、黒豹の留年に王手が掛かってしまう。
もし黒豹を3年に進級させることが出来なければ、俺は契約を果たせなかったことになる。
……いや、契約とかそういう問題じゃない。
この期末テストには、黒豹の人生がかかっていると言ってもいい。
あいつは「諦めた」と言っていたが、なりたいもの……夢もあるみたいだしな。
――だから俺は本気で教えた。
毎晩の勉強時間を2時間に延長し、週末は追加で昼間の時間も使った。
教科書の内容を精査して、黒豹がわかるレベルまで噛み砕いて説明する。
理解できていない部分の復習から始まって、国語や英語の文法、歴史の流れまで。
全教科をカバーするのは正直しんどかったが、人に教えるということは俺の勉強にもなる。
しかもこれは勉強。俺の得意分野だ。
「ほら、ここはこの前教えた公式の応用だろ。思い出してみろ」
「えーっと……あ、これか。xに2を代入して……」
「そうだ。で、次は?」
「……あれ、ここからどうするんだっけ」
「おいおい、3回目だぞ。もう1回最初からやってみろ」
「もういーじゃん。ムリだよ……アタシほんとバカだから……」
黒豹がペンを置いて、テーブルに突っ伏した。
教科書とノートが散乱しているが、黒豹の頭の中もグチャグチャのようだ。
「黒豹。お前は……バカじゃない」
「バカだよ。こんなの何回やっても覚えらんないじゃん」
「違う。お前はやり方を知らなかっただけだ」
俺は黒豹の目の前のノートを指差した。
「これを見ろ。2週間前にやった問題だが、お前は普通に正解している。この数学の小テストも半分以上解けている。俺が教えた解き方をちゃんと覚えてるってことだ。決してバカじゃない」
「……え」
黒豹が顔を上げた。
なんだそのポカ~ンとした顔は。
事実を言っているだけだぞ、気づいてなかったのか?
「いいか、お前は頭が悪いんじゃない。勉強する環境がなかっただけだ。だから環境は俺が整えた。あとは、お前がやるだけだ」
「…………」
「赤点なんかとらせない。俺が教えてるんだぞ? 学年トップクラスの俺が教えてるんだ」
「ウザっ……真面目くん、そういうのって普通は自分で言わないよ?」
「だが事実だろ?」
「ウザいし、キモい~w でも真面目くんのそういうとこ……おもしろいよね」
黒豹が嬉しそうに笑ったところを見ると、機嫌は直ったみたいだな。
「テストまでもう少しだろ。出来る限りやってみようぜ」
「……うん。じゃあ、もうちょっとだけ頑張ってみる」
「いいぞ、その調子だ。まだ時間はあるからな。それが終わったら英語の単語テストやるぞ」
「うげぇ……マジ?」
いい顔するじゃねえか、黒豹。まるで芸人みたいだぞ。
◆
そしてテスト当日。
俺は自分のテストよりも黒豹の出来が気になって仕方がなかった。
自分の試験は余裕で終わったが、残り時間はずっと黒豹のことを考えていた。
俺が教えた範囲の問題も出ていたし、あの問題はさすがに解けたよな?
途中で使う公式は忘れてないよな。英語のスペルは間違えてないか?
ったく……なんで俺がこんなに心配してるんだか。
そんな感じでそのままテスト最終日が過ぎ、あっという間に1週間が経った。
今日で全教科の答案が返却された。後は結果を聞くだけだ。
学校の帰り道、家の近くで黒豹と落ち合った。
「真面目くん…………」
「テスト……どうだったんだ?」




