第25話 ただのクラスメート
俺が教室の自分の席で弁当を食べていると、クラスの男子が2人、ニヤニヤしながら近づいてきた。
「なあ画地野。お前ってさ、黒豹さんと付き合ってんのか?」
「はあ? なにいってんだ、お前ら」
なんで俺が黒豹と付き合う理由がある?
まったく持って現実味の無い質問に、俺は箸を止めた。
「だってよ~。お前らって廊下でよく話してるだろ。放課後も一緒に帰ってるの見たって聞いたしよ」
「ありえないな。あいつと俺はそんな関係じゃない」
俺は即座に否定した。
何もない。当然だ。あくまで契約上の関係で、それ以上でも以下でもない。
「えーマジで? あの黒豹さんだぜ? あの目を引くスタイルの良さ、それに顔だってかわいいのだろ。男だったら興味ないとかうそだろ?」
「そう言われても俺のタイプじゃないからな。黒ギャルとか興味ないんだよな」
「たしかに黒ギャルだけどよぉ。それもまたエロくていいじゃんかよ……」
「そうか?」
たしかに黒豹は中身も見た目もエロい。
……胸もデカいしな。そこは認めよう。
だが、付き合うかどうかは別の話じゃないか?
俺が2人に反論しようとすると、教室内の離れたところから黒豹の声が飛んできた。
「あははっ! ないないw アタシが画地野くんと? 絶対にないでしょ。ウケるんだけどw」
黒豹が友達に囲まれたまま、こっちに向かってケラケラ笑っている。今日は一段と笑い声が大きい。
ほら見ろ。もっと言ってやれ。
俺たちはそういう関係じゃないのだ。
「黒豹さんも否定してるってことは、違うのか……?」
「だから、そう言ってるだろ?」
「そっか……わりぃな画地野。俺たちの勘違いだったわ!」
でもさっきの黒豹の笑い方、なんか雑だったな。
いつもの黒豹のノリとちょっと違う気がする。
でもまあ、いいタイミングだった。お陰で噂は否定できたぞ。
その……はずだった。
問題は、その日の放課後に起きた。
廊下を歩いていると、前方に星城院さんの姿があった。
彼女は俺に気づいて、にこやかに近づいてきた。
「画地野くん、ちょっと良いですか?」
「せ、星城院さん……! はい、もちろんです」
おお、星城院さんから話しかけられた!!
でも、なんの用だろうか……?
前ほど緊張しなくなっているとはいえ、まったく緊張しないわけじゃない。
「この前は楽しかったですね。画地野くんって、とても本に詳しいんですね。知りませんでした」
「い、いえ……星城院さんこそ、かなりの本好きですよね。正直、感心しました」
「ふふ、そうですか。……あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
「……はい。なんでもお気軽にどうぞ」
「画地野くんって、黒豹さんと仲良いんですか?」
はあぁぁぁっ? なんだってぇぇ!?
さっきの奴らもそうだったが、俺と黒豹が付き合ってるみたいな噂が広まっているのか?
これはマズイ。マジでマズイ!
「いっ、いえ! 全然そんなことないです! 黒豹は、あいつは……ただのクラスメートですから!」
あっ、焦って声が裏返った。
星城院さんに誤解されたら大変だからと、必死になりすぎたか。
「そうなんですね。なんだか最近よく一緒にいるって聞いたので……」
「それは多分偶然ですよ。帰る方向が同じだからじゃないですか? ははは」
「ふふ、そうですか。じゃあ、また本のお話聞かせてくださいね」
「は、はいっ! ぜひ! お願いします!」
「やっぱり、画地野くんって面白いですね」
星城院さんが微笑んで去っていった。
……上手く誤魔化せたか?
俺は「ただのクラスメート」と答えた。
嘘じゃないし、それが事実だ。黒豹は友達でも彼女でもない。
契約上のパートナーであって、それ以上でも以下でもない。
それなのに……言った後で後ろめたい気持ちが出たのはなぜだ?




