第24話 コミュ力炸裂
こんなことは初めてだぞ。信じられない。
これは夢でも見ているのでは?
黒豹を見ると、他の友達と喋りながら、チラッと俺を見ていた。
手元はさり気なくサムズアップをしている。俺も黒豹に合図を送り返す。
今まで……1番いい仕事だ、黒豹!
偶然を装った合流に、話題のパス。俺を自然に星城院さんとの会話の輪に入れた鮮やかな手腕は称賛に値する。
黒豹のコミュ力はすごいと思っていたが、まさか星城院さんのグループとも仲良くなっていたとは。
とんでもない働きだ。想像以上だぞ。
俺ひとりじゃ、絶対にこの状況は作れなかった。
さすがだ……黒豹!!
◆
星城院さんのグループと別れた後、俺と黒豹は商店街で合流した。
「黒豹っ! お前、やっぱりすごいな! あそこまで自然に星城院さんと話せたのは初めてだぞ!」
「でしょ~? アタシってすごいんだから~。感謝しなよ?」
「あぁ、これは素直に感謝するしかないな。ほんとうに大したもんだ……夢のような時間だったぞ!」
「よかったじゃん。星城院ちゃん、真面目くんのこと『面白い人ですね』って言ってたよ」
「なんだと? 面白い……のか。そうか、俺は面白いのか」
「本の話してる時、楽しそうにしてたからね~。キラキラが出てたよ」
「キラキラだと……? 俺が?」
「うん。……よかったね」
ん、なんだ?
黒豹の様子がいつもと違うような……
気のせいかもしれないが、あんまり嬉しくなさそうだな。
本心から笑っていないような。
いや……考え過ぎだろう。気のせいだ。
「黒豹、ほんとにありがとな。お前のおかげだ」
「いーよいーよ。それよりさ、勉強もっと優しく教えてくれると嬉しいんだけど……」
「そうか、任せろ。今回の功績を称えて、今後は特別に丁寧に教えてやる」
「うわ、その笑い方怖いんだけど……機嫌いい時の真面目くんってなんかキモいね」
たしかに俺のテンションは高い。
しかたないだろっ、憧れの星城院さんとこんなに話せたのは初めてなんだぞ!?
だが……ひとつ言っておこう。
「キモくねぇし! ったく、せっかく人が感謝してるってのに」
「だってホントなんだもーん!」
人をバカにしてニヤニヤするんじゃねぇ!
まあ、黒豹の様子はいつも通りみたいだ。さっきの違和感は、やっぱり気のせいみたいだな。
今回の出来事は、星城院さん攻略における大きな一歩だ。
この調子で黒豹と協力していけば、本当に星城院さんと付き合う未来もあるかも知れない。
ちなみに夜恒例の勉強タイムだが、約束通り丁寧に教えることにした。
「ここはな、さっき教えたやつの応用だ。落ち着いて考えれば解けるぞ」
「え……あ、わかった。こうでしょ?」
「正解だ。やっぱりお前って、やればできるんだよな」
「真面目くん、今日やさしーね。キモいんだけど♡」
「もっと素直に喜べないのかよ、お前ってやつは……」
キモいって……褒め言葉じゃないからな?
「だってさぁ、普段がスパルタすぎるんだよ。そりゃギャップにビビるよね!」
黒豹がペンをクルクル回しながら笑っている。
そうか?
俺としては留年しないように気合を入れているだけなんだがな。
なにせ黒豹は1が6個もあるのだ。スパルタにもなろうというものだ。
「お前は見た目が黒ギャルだから、もっと学力も壊滅的かと思っていたが、この調子なら普通に進級出来ると思うぞ」
「別にアタシだって生まれた時から黒ギャルじゃないんだけど。中学の時は普通だったし。成績も別に悪くなかったからね」
「もしかして……中学で何かあったのか?」
流せばいいのに、つい聞いてしまった。
「まあ、生きてると色々あんのよ……」
「なに年寄りみたいなこと言ってんだよ」
聞かれたくないことだったのだろうな。かるく流されてしまった。
あの親のことだ。多分、家庭の事情だろう。
そう考えると、今回は流してもらって助かったかもな。
――それから数日後。思いも寄らない事件が起こった。




