第19話 デート童貞
俺は黒豹のアドバイスを受けながら、少しずつ星城院さんへのアプローチを進めている。
その甲斐あってか、少しだがまともに話せるようになってきた。
だが……学校での作戦と並行してデートのプランも考えた方がいい、と黒豹から提案があったのだ。
「いい? 真面目くん。いきなり告白しても普通に無理だからね?」
「なんだと!? 告白にはなにか作法があるのか?」
もしや……給料3ヶ月分の指輪とか、先祖代々が使っていたタンスとかを用意するのか?
「告白する前に、まずデートに誘って少しづつ仲良くなるんだよ」
「デート……だと?」
ばかな……それは付き合ってからするものじゃないのか?
「そう。デート。2人で出かけて……キラキラした時間を過ごすの♡」
おい、うっとりしてんじゃねぇよ。
どういうことか説明してくれないと分からんだろ。
俺は軽く咳ばらいして続きを促した。
「女の子だってさ、あんまり仲良くない人から突然告白されたって困るわけ。どういう人かわからないのに付き合いたくないし。やっぱり、ある程度親しくないとね」
「なるほどな……」
女子と付き合うためには、ある程度の信頼関係を築く必要があるってことか。
言われてみれば納得できる。
「ところでさ、デートはどうしたら良いかくらい知ってるでしょ?」
「当たり前だ。知識としてだけどな」
「知識って……真面目くん。もしかして今までデートしたことないの?」
「当然だ。彼女が出来たことないと言っただろ?」
「そっか、ごめんね……デート童貞だったんだ」
「おい、『童貞』を乱用するな!」
よく分からんが精神的なダメージがデカくなるだろうが!
「あはは。付き合う前のデートはね、ノープランじゃイマイチなんだよ?」
「そうなのか?」
「付き合ってからなら全然良いけど、彼氏じゃない人がノープランで誘って来たらアウトでしょ!」
「なるほど……それは一理あるな」
計画性のないただのアホ……だと思われてしまうってことか。
「そそっ、どこ行って何するか決めといた方が良いってこと」
「計画なら俺の得意分野だ。そこは任せておけ」
翌日。
俺はリビングのテーブルにノートパソコンを広げ、黒豹に披露した。
「見ろ。これが完璧なデートプランだ」
画面には、エクセルで作成したデートの予定が表示されている。
時間軸に沿って、移動手段とその時間、訪れる場所の滞在時間、飲食店の候補とおすすめのメニューとその評価、会話のネタまで網羅した、渾身の計画表だ。
「…………」
黒豹が画面を覗き込んで、無言になった。
ムリもない。ここまでパーフェクトなプランなど見たことないだろうからなっ!
「どうだ。隙がないプランだろう?」
「うわぁ、キモぉぉ……こんなのデートじゃないよ。囚人の時間割じゃん!」
「……何だと?」
「いやだって、『14:00~14:15 公園のベンチにて休憩。会話のネタ:読書について(候補:最近読んだ本、好きなジャンル)。想定所要時間14分』って……なによこれ!」
「ふっ、具体的でいいだろ。いかに効率的に最大の効果をだせるか。そのための最適解を導き出してある」
「だーかーらっ! 恋愛に最適解とかないんだっつーの!」
黒豹が呆れたようにため息をついた。
そう言われても、わからんものはわからんのだ。
「最後のこれ『16:30 解散。所感メモの作成(15分)』って……解散後にメモ取るの!? なにこれ、仕事かなんか? どこの営業の人だっつーの?」
「変か?」
「変を通り越して狂ってるよ!」
そんなにおかしいのだろうか。
忘れないうちにメモを取っておいたほうが次回に活かせると思うのだが。
「ねえ真面目くん。デートってのはさ、気になる相手と楽しい時間を過ごすことが目的なんだよ? 計画を予定通りにこなすことが目的じゃないんだよ?」
「だがこのプランなら、その『楽しい時間』とやらも最大化することもできると思うが?」
「最大化ってw この人、本気で言ってるぅぅ! もう……なんなのマジで……お腹痛いんだけどぉ!」
何がそんなにおもしろいのか、黒豹は腹を抱えて笑っている。
どうやら俺の考えた計画はイマイチだったらしい。
「自信作だったんだが……だめか?」
「うーん。あっ……使えそうなのがあるじゃん」
「どれだ?」
「これだよ、純喫茶。星城院ちゃんはぜんざい好きだし、駅前の純喫茶も通ってるんだからここは外せないでしょ!」
「そうだな。この店はネットの評価が良いから組み込んでみたんだ」
「でもさ、お店の雰囲気とかって実際に行ってみないとわかんないじゃん?」
「まあそうだな。事前調査は重要だ」
「でしょ? じゃあ、下見に行こうよ。アタシも付き合ってあげるからさ」
「下見……お前とか?」




