お宝探しは中止?
あと、物作り妖精のおじいちゃんが銅鉱石が欲しいとお願いしていた。
また、精銅とかやらされるのかな?
いや、我が家にも還元されるから文句は言えないんだろうけど……。
そんなことを考えていると、蟻さんが前脚を差し出してきた。
ん?
あ、種ね。
それを受け取ってみる。
黒い――あ、この種、見たことある!
「何の種?」
とイメルダちゃんが覗いてくるので「多分、果物の種だよ!」と答える。
じゃあ、と言うことでイメルダちゃんが指定した場所に種を植え、白いモクモクを被せる。
「育てぇ~!」
いつも通り声を上げると、ムクムク育っていく。
蔓がにょきにょき伸びて行き……。
丸くて緑の縞の入った実が出来る。
やっぱり、スイカだ!
まさに、前世日本で見たまんまのスイカが出来た。
「凄い凄い!
蟻さん、これからの季節にぴったりの種だよ!」
喜んでいるわたしを見ながら、なんとなく、蟻さんも嬉しそうにしながら顎をカチカチ鳴らした。
スイカは凄く嬉しいけど、まずは用事を済ませなくてはいけない。
取りあえず、スイカをいくつか蟻さん達に持たせて上げる。
蟻さんは満足げに帰っていった。
イメルダちゃんに「じゃあ、町に行ってくるよ」と言うと「目立たないようにね」と注意される。
「うん」と頷きつつ手を振り、改めて出発をする。
ケルちゃんが付いてきたそうに近づいてきたけど、まだまだ、目立たない方が良いから「今日はイメルダちゃん達を守って上げて」と撫でておいた。
不満そうにしたけど、致し方が無いと思ったのか、イメルダちゃんの元に戻って行った。
結界を出ると、早速とばかりに白狼君達が合流してくる。
荷車がないので、付いてくるのは白狼君を含む、足に自信のある子達だ。
森を駆け、川を飛び越え、更に駆けて平原に出る。
いつもの木の陰で、赤ライオン君が大きな欠伸をするのを横目に走る。
ん?
あれは、ハイエナ君だ。
前世の大型犬を一回り大きくした魔獣で、十頭ほどのそのそと歩いている。
彼らは前世と同じく、死んだ魔獣の腐肉を食べたり、獲物の横取りをしたりするので、良いイメージはない。
もちろん、フェンリル一家の獲物を奪うなどという命知らずではないので、わたし達が実害を受けたことはないけど……。
遠出をした時、サーベルタイガー君とかと揉めているのは見たことがある。
食べても美味しくないので、特に気にする必要は無いかな?
なんて思っていると、突然、咆哮が聞こえた。
視線を向けると、赤ライオン君がハイエナ君を睨んでいた。
ハイエナ君は気圧されたかのように、後ずさりをする。
ひょっとしたら、何か揉めたのかもしれない。
赤ライオン君に絡むなんて、なかなか無謀なハイエナ君達だなぁ~
なんて思いつつ、そのまま進む。
今度は上空に気配を感じ、視線を向ける。
ん?
おや珍しい。
上空には獲物を掴んでいる灰色ハヤブサ君が飛んでいた。
しかも、一匹じゃなく、何十羽もだ。
灰色ハヤブサ君は群れることはないので、大量の獲物が居たから、自然と集まったって事かな?
よく見ると、灰色ハヤブサ君が持っているのは、軍隊雀君かぁ~
灰色ハヤブサ君にとっては、軍隊雀君達も格好の餌の様だ。
まあ、二メートル級サイズの上、天空から超高速で急降下する灰色ハヤブサ君にとって、軍隊雀君などただの雀より的が大きい分、狩りやすい相手なんだろう。
などと考えていると、嫌な視線を感じる。
そちらを向くと、灰色ハヤブサ君が灰色の矢のようにこちらに向かって突っ込んでくるのが見えた。
軍隊雀君を取り損ねた一匹かな?
なんて考えつつ、それに合わせて「てい」と右足で回し蹴りっていうんだっけ? とにかく、キックをした。
軽く合わせただけだけど、灰色ハヤブサ君はそれだけで横に吹っ飛んで行く。
そして、地面に体を何度も擦りながらぶつかり、転がり、最終的には止まった。
ま、速いといっても所詮この程度、ママの洞窟近辺に住む風切り竜君に比べれば、遅いし、威力もぬるいよね。
なんて思っていると、白狼君達が地面に落ち、ピクリとも動かない灰色ハヤブサ君の元に駆ける。
でも、それを咥えようとするも、白狼君達はビクっと震え、わたし達が来た方を向く。
ハイエナ君達が向かってくるのが見えた。
うなり声を上げて白狼君達を威嚇している。
どうやら、横取りする気満々のようだ。
白狼君が前に出て、睨んでいるけど……。
白狼君は5頭に対して、ハイエナ君は10頭、しかも、速度重視の白狼君に対して、なかなかがっちりとした体格のハイエナ君では、分が悪いよね。
とはいえだ。
あれは、白狼君のじゃなく、わたしの獲物だ。
『あっちに行って!』
がうがう! と叫ぶと、ビクッと震えたハイエナ君達は止まった。
……だけど、こちらを嫌な目で見てくる。
なにさ、やるつもり!?
ハイエナ君のくせに生意気な!
わたしが歯を強く噛みしめ、ギロリと睨むと、またしても震えたハイエナ君達は、致し方が無いというように去って行った。
狩りぐらい自分でやりなよ!
全くもう!
わたしがハイエナ君達の背を睨んでいると、白狼君が側に来て〝まったく、ろくな奴らじゃないですよね、主様!〟というように、がうがう! 吠えた。
……。
いや、君たちも自分で狩りをやってないからね!
わたしにくっ付いて、おこぼれを貰っているだけだからね!
わたしがジト目で見るも、厚顔無恥な白狼君は〝どうしました、主様?〟という様に小首を捻るだけだった。
林に到着したので、白狼君達は帰っていく。
我が家にはお肉が有り余っているので、灰色ハヤブサ君はまるごと彼らにあげた。
なので、満足だろう。
林を駆けていると、気配を感じ、木に上る。
領主様の兵士さん達だと面倒だと思ったんだけど、顔見知りの冒険者のおじさん達だった。
蜘蛛っぽい魔虫を何匹も縛って運んでいる。
木から下りると、「お~い!」と手を振り近づく。
わたしに気づいたおじさん達は相好を崩し、手を振り返してくれた。
「ねえねえ、町の様子はどう?
まだ、お宝探しは続いてる?」
訊ねると、おじさん達は困惑したように顔を見合わせた。
「いや、実は宝探しは中止することになったんだ」
「中止?」
「ああ、理由はよく分からないけどな。
だから、こうやって魔虫狩りの依頼が受けられている訳だ」
他のおじさんも分からないらしく、「あんなに必死だったのに、どうしたんだろうな?」とか首を傾げていた。




