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第2話「互いの距離が 確実に縮まる」

第5部

北方宙域。


リュージュ王国軍の

司令官の指揮の下、

三千隻の艦隊群が、

帝国領へ向けて進んでいた。


先頭を進むのは、

リュージュ王国軍一千隻。


その後方に、

ベイロン軍の残兵一千隻。


さらに、

ベイロン王国から派遣された

新たな一千隻が続いている。



リュージュ王国軍総司令部。


「北方艦隊より報告です」


通信士が、

受け取った情報を

総参謀長へ渡した。


「読み上げろ」


「帝国軍の北方防衛線に、

 艦隊移動を確認。

 規模は現在解析中です」


総参謀長は

作戦部へ顔を向けた。


「対応案は?」


「現段階では、

 現在の航路を

 維持するのが妥当です」


「情報部は?」


「帝国軍の移動目的を

 解析しています」


「兵站部」


「現状の航路なら、

 補給に問題ありません」


総参謀長は、

各部の報告をまとめた。


「総司令官へ」


報告書が、

総司令官のもとへ届けられる。


「帝国軍が動いたか。……」


「はい。

 北方防衛線の一部です」


司令官が作戦案に目を通す。


「まだ

 こちらから動く必要はない」


「では、

 現在の航路を維持しますか?」


「そうだ。各艦隊へ伝えろ」


「承知しました」


命令が

総参謀本部へ戻される。


「王国軍第一艦隊へ。

 現在の航路を維持」


「了解」


「第二艦隊へ。現在位置を維持」


「了解」


「第三艦隊へ。

 同じく現在位置を維持」


「了解」


三つの艦隊へ命令が伝達される。


その中には、

ベイロン軍も含まれていた。


「ベイロン軍

 先遣部隊から通信です」


通信士が報告する。


「繋げ」


画面に、

ベイロン軍の指揮官が映った。


「総参謀長閣下」


「報告を」


「ベイロン王からは、

 リュージュ軍の指揮下に入れ、

 と承っております」


「承知した。

 以後、総参謀本部からの

 作戦命令に従ってくれ」


「了解しました」


「ただし、

 貴軍内部の指揮系統は

 維持してもらう」


「承知しました」


通信が切れた。


総参謀長は、

作戦部長へ向き直った。


「ベイロン軍二千隻についても、

 現在の作戦配置に組み込め」


「はい」


「艦隊ごとの指揮官には、

 必要な命令だけを伝える」


「承知しました」


その頃。


王宮では、

総司令官から上がった報告が

リュージュへ届けられていた。


「帝国軍が

 北方防衛線を動かしたか。……」


「はい」


「こちらの艦隊は?」


「現在の航路を維持しております」


リュージュは報告書に目を通した。


「帝国軍が先に動くまでは、

 そのままでいい」


「承知しました」


総司令官が退室する。


王の判断は、

総参謀本部へ伝えられた。


「王命です。現在の航路を維持」


「承知しました」


総参謀長から各部へ伝達される。


作戦部が艦隊配置を確認し、

通信部が各艦隊へ命令を送る。


各艦隊司令官が、

その命令を受けて

自らの艦隊を動かす。


三千隻の艦隊群は、

進路を変えなかった。


その後、

情報部から

新たな報告が上がった。


「帝国軍の移動先が判明しました」


「どこだ」


「北方防衛線の外側です。

 こちらの進路を

 直接塞(ふさ)ぐ動きではありません」


作戦部長が戦略図を確認する。


「ならば、

 まだ交戦の意思はないと

 見るべきでしょう」


総参謀長が頷いた。


「総司令官へ報告する」


報告は

総司令官へ上がり、

さらに必要な情報だけが

王へ届けられる。


リュージュは

報告を読み終えると、

短く言った。


「監視を続けろ」


その命令が、

再び総司令官、

総参謀本部、

各艦隊司令部へと

伝わっていく。



北方宙域。


三千隻の艦隊群は、

なおも帝国領へ向かっていた。


まだ

砲火は交わされていない。


しかし、

双方の指揮系統は、

それぞれの持ち場で

次の戦いに備えて

動き始めていた。



北方宙域。


帝国軍では、

北方宙域の監視情報が

参謀本部へ集められていた。


敵艦隊の航路。


艦隊間の距離。


進行速度。


通信状況。


一つ一つの情報が整理され、

各担当部署で分析されていく。


「敵艦隊、

 進路を変更していません」


「補給艦の動きは?」


「後方に確認できます。

 現在のところ、

 補給線に乱れはありません」


「引き続き監視を」


報告は必要な系統を通り、

総司令部へ送られる。


ヴァルガスは

報告書に目を通した。


「敵は急いでいないようだ。……」


「はい」


「ならば、

 こちらも焦る必要はない」


その判断は

参謀本部へ戻され、

各艦隊へ伝達された。


帝国軍の艦隊は、

それぞれの担当宙域を維持する。


不要な移動はしない。


敵の動きを待つ。


一方、

リュージュ王国軍でも

情報が集められていた。


「帝国軍、

 現在位置に変化なし」


情報部から報告が入る。


「作戦部の判断は?」


「現状維持です」


総参謀長は頷いた。


「各艦隊へ伝えろ」


「承知しました」


命令が各艦隊司令部へ送られる。


「第一艦隊、了解」


「第二艦隊、了解」


「第三艦隊、了解」


三千隻の艦隊群は、

速度を変えずに進んだ。


その先には帝国領がある。


そして、

その帝国領を守る艦隊もいる。


両軍の距離は、

確実に縮まっていた。


やがて、

帝国軍の監視担当が

新たな光点を確認した。


「敵艦隊後方に、

 新たな反応です」


参謀本部に緊張が走る。


「数は?」


「まだ不明です」


「解析を急げ」


新たな光点は、

ゆっくりと増えていく。


リュージュ軍の後方。


さらに

別の艦隊が動いている

可能性があった。


戦場は、まだ静かだった。


だが、

その静けさは長く続かない。


帝国軍も、

リュージュ王国軍も、

それぞれの指揮系統の中で

次の報告を待っていた。

明朝 8:10 に投稿します。

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