第14話「前哨戦は、 帝国側の勝利に」
第4部
「左翼も後退しています!」
「中央も押されています!」
ベイロン側の艦隊司令部では、
次々と報告が入っていた。
「王へ連絡を!」
王宮へ通信が繋がる。
「王。
帝国軍の増援を確認しました」
ベイロンは戦況を見つめていた。
そこには、
皇后マリアと
皇太子シャルルの艦隊が
表示されている。
「……来たか」
ベイロンは低く呟いた。
「帝国軍の主力も動いています。
これ以上の戦闘継続は――」
「わかっている」
ベイロンの声は、
苛立っていた。
だが、判断は早かった。
「全艦、後退」
「王国へ戻るのですか?」
「ああ」
ベイロンは
戦況図から目を離さなかった。
「一旦、王国に戻り、
体制を立て直せ」
命令が各艦隊へ伝達される。
ベイロン側の艦隊が、
一斉に後退を始めた。
帝国軍は追撃しなかった。
参謀本部から各艦隊へ、
追撃を控える命令が伝えられる。
敵艦隊が、
次々と戦場から離脱していく。
やがて、
グラニス外縁に静けさが戻った。
戦闘終了。
帝国軍の損害は軽微だった。
戦艦には
一部損傷が確認されたものの、
航行能力に重大な問題はない。
そして――
「死傷者、ありません」
参謀本部から報告が入った。
副官・ヴァルガスは、
静かに頷いた。
「損傷艦の修復を急がせろ」
「承知しました」
マリアの艦隊も、
シャルルの艦隊も、
損傷はごく軽微だった。
三千隻を中心とした
帝国総軍艦群も、
戦列を維持している。
前哨戦は、
帝国側の勝利に終わった。
だが――
それは、
この戦いの
終わりではなかった。
むしろ、始まりだった。
戦闘終了から数時間後。
参謀本部へ、
新たな報告が入った。
「未確認艦隊、接近!」
セルゲーヴが振り向く。
「どこからだ?」
「エイベル1689銀河団、
北方宙域です」
戦術画面が切り替わった。
そこには、
先ほどまで存在しなかった
巨大な艦隊が、
次々と姿を現していた。
「数は?」
「確認できたものだけで、
五百隻を超えています」
参謀本部の空気が変わった。
「さらに増えています!」
「一千……」
表示される艦艇数が、
刻々と増えていく。
セルゲーヴは、
すぐに情報をまとめた。
「総司令部へ」
「はい」
ヴァルガスのもとへ報告が届く。
「元帥閣下。
北方宙域に、
大規模な艦隊が出現しました」
ディクティオンが立ち上がる。
「規模は?」
「現在確認できているだけで、
二千隻を超えています」
「所属は?」
「現時点では
確定しておりません。
ただし、
先ほどの敵艦隊とは
別系統の可能性があります」
ディクティオンは戦略画面を見た。
先ほどまでの前哨戦とは、
規模が違う。
「参謀本部に、
全軍の再編計画を
作らせろ」
「承知しました」
ディクティオンは続けた。
「各艦隊の損傷状況、
補給状況、
航路、
防衛範囲を
すべて洗い出すように」
「はい」
「皇后陛下と皇太子殿下の
艦隊についても、同様に」
「承知しました」
ディクティオンは
戦略画面を見つめた。
「次は、前哨戦とは規模が違う」
その言葉を受け、
参謀本部はただちに動き始めた。
第一艦隊。
第二艦隊。
第三艦隊。
皇后マリアの戦艦群。
皇太子シャルルの戦艦群。
さらに各方面の防衛艦隊。
それぞれの指揮系統を整理し、
重複する命令系統をなくす。
各艦隊長官は、
それぞれの担当宙域を受け持つ。
戦術判断は各艦隊司令部。
複数艦隊にまたがる作戦は
参謀本部が統合する。
そして、
帝国総軍に関わる
重大な判断は、
副官・ヴァルガスが担い、
その判断と結果について
元帥・ディクティオンが
責任を負う。
戦場の規模が拡大するほど、
指揮系統の乱れは致命傷になる。
そのため、
参謀本部は
一つ一つの役割を
明確にしていった。
やがて、
帝国全軍の
新たな戦略配置が完成する。
副官・ヴァルガスのもとへ、
最終案が届けられた。
「元帥閣下。再編案です」
ヴァルガスが報告する。
ディクティオンは、
最後まで目を通した。
「これでいく」
「承知しました」
その夜。
帝国軍の各艦隊へ、
新たな命令系統が伝達された。
そして北方宙域では――
巨大な敵艦隊が、
なおも帝国領へ向けて
進んでいた。
読んでくださってます方々に篤くお礼申し上げます。
ありがとうございます。
ブックマーク登録、ありがとうございます。
評価ポイント、ありがとうございます。
リアクション頂きまして、ありがとうございます。
只今、第5部を構想しております。
10/13 8:10 に第5部 第1話を
投稿します。
よろしくお願いいたします。




