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第11話「辺境惑星グラニスからの通信」

第4部

「ああ」


ディクティオンは

敵艦隊の光点を指した。


「千隻もの艦隊を

 帝国領外縁部まで

 持ってきておきながら、

 半日も攻撃しない。

 これは、

 攻撃そのものが目的ではない

 可能性がある」


「帝国軍の情報収集……」


「その可能性が高い」


「では、

 こちらの配置を見せ続けるのは

 危険では?」


「だからこそ、

 こちらも余計な動きをしない」


ディクティオンは

ヴァルガスを見る。


「敵に見せる情報を増やさない」


「承知しました」


そのとき、

参謀本部から報告が入った。


「ヴァルガス副官殿」


セルゲーヴだった。


「グラニス方面の

 解析結果が出ました」


「聞こう」


傍らにいる

ディクティオンの耳にも

届いていた。


「先ほど確認された

 十二隻の艦艇ですが、

 エイベル1689銀河団で

 確認されている艦艇と、

 船体構造が一部一致しました」


「一部?」


「完全な同型ではありません。

 しかし、

 推進系統と通信方式に

 類似性があります」


「つまり、

 敵側の艦艇である可能性が高い?」


「はい」


ヴァルガスは頷いた。


「グラニスから離れた十二隻は?」


「現在、追跡中です」


「どこへ向かっている?」


「外縁部の主力艦隊とは、

 別方向です」


室内に沈黙が落ちた。


ヴァルガス副官は、

星系図を拡大した。


十二隻の航路が

一本の線となって表示される。


その線は、

帝国領の奥へ向かってはいない。


むしろ、

帝国領を大きく迂回するように

進んでいた。


「……妙だな」


「はい」


「第二艦隊には?」


「追跡させますか?」


「いや。……」


ヴァルガス副官は

首を横に振った。


「追うな」


ヴァルガスが

目でディクティオンに

確認する。


「追跡を中止させますか?」


「監視だけ続けろ」


「承知しました」


「敵に、こちらの関心が

 どこへ向いているか

 悟(さと)らせるな」


「はい」


ヴァルガスが命令を伝える。


その直後だった。


「ヴァルガス副官殿」


通信士が立ち上がる。


「第一艦隊より、緊急報告です」


ディクティオンが振り返った。


「何だ?」


「敵艦隊の一部が、消えました」


室内の空気が変わる。


「消えた?」


「正確には、

 通常の観測装置から

 捉(とら)えられなくなっています」


「隻数は?」


「約二百隻」


「第二艦隊へ連絡」


ヴァルガスがすぐに命令する。


「はい」


「グラニス方面を確認させろ」


「承知しました」


しかし、セルゲーヴが口を挟んだ。


「副官殿」


「何だ?」


「その二百隻、

 グラニス方面ではありません」


「では?」


「敵艦隊の後方です」


ディクティオンが戦略表示を見る。


二百隻が、

敵主力艦隊から離れている。


しかし、

どこへ向かっているのかは

わからない。


「ステルス航行か。……」


「その可能性があります」


ヴァルガス副官は腕を組んだ。


敵は千隻弱。


その一部が姿を消した。


グラニスの十二隻も姿を消した。


そして、主力艦隊は動かない。


「……敵は、

 艦隊を一つの塊として

 運用していない?」


セルゲーヴが頷(うなず)く。


「複数の任務に分けていると?」


「そう考えたほうがいい」


ヴァルガスが尋(たず)ねる。


「では、

 帝国軍も部隊を分散させますか?」


ヴァルガス副官は即座に答えた。


「しない」


「はい」


「こちらが分散すれば、

 敵に

 こちらの対応能力を測られる」


ヴァルガスは戦略表示を見た。


「今は、敵に

 余計な情報を与えないことだ」


「承知しました」


総司令室に再び静寂が戻った。


戦略表示の上では、

敵艦隊の光点が

静かに動いている。


その一部は、

帝国軍の観測網から姿を消した。


しかし、

ヴァルガスは追わなかった。


まだ、

敵が何をしようとしているのか

わからない。


だからこそ、

焦(あせ)って動く必要はない。


「ヴァルガス」


「はい」


「各艦隊長官へ通達」


「はい。……」


「現状維持」


ヴァルガスが命令を伝達する。


第一艦隊。


第二艦隊。


第三艦隊。


いずれも動かない。


帝国軍は、静かに待っていた。


その一方で、

帝国艦隊の後方から姿を

消した二百隻は、

誰にも知られない航路を

進んでいた。


その航路の先に何があるのか。


まだ、帝国軍は知らなかった。

本日 20:10 に投稿します。

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