第1部(1) 第3話【 バース神の十二宮を巡る星脈 】
「これより先は、
どの航路図にも載っておりません」
副長の声が震えていた。
目の前に広がるのは、
無数の隕石が渦を巻く「不動の暗礁宙域」。
恒星の光すら届かぬ、死の海だった。
「構わない。
俺たちに必要なのは、地図じゃない」
オリオンは瞑目し、拳の星屑を握りしめた。
バース神の十二宮を巡る星脈が、
瞼の裏に浮かび上がる。
「……見えた。あそこに、凪の航路がある」
艦は木の葉のように揺れながらも、
風を知る者だけが辿り着ける岩陰へと、
静かに滑り込んでいった。
雌伏の日々が続いた。
「隊長、また新たな将が合流したいと」
「通せ。誰であろうと、拒む理由はない」
かつてオリオンを見限った者たちも、
暗礁の奥深くに
秘密艦隊が育っているという噂を聞きつけ、
一人また一人と戻ってきた。
「タタリア星団の海賊艦隊が、
隣の星系を攻めているようです」
副長の報告に、オリオンの目が鋭く光る。
「好機だ。アルゴ殿に助勢を求めよ。
今度こそ、俺たちの力を示す時が来た」
奇襲は、
恒星風を味方につけた角度から仕掛けられた。
「馬鹿な、こんな航路から……!」
タタリアの指揮官が
驚愕の声を上げた時には、
すでに勝敗は決していた。
艦隊は瞬く間に撃滅される。
「敵の恒星風すら、己が力に変えるとはな」
戦果を聞いたアルゴが、
感嘆の声を漏らした。
この一戦を境に、
荒野の氏族たちはオリオンを、
宇宙そのものを味方につける者として
畏れ始めるのだった。
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本日、16:30 に、第4話を投稿します。




