第1部(1) 第2話【 敗北こそが、 長い道程(みちのり)の、 真の始まり 】
「オリオン、お前のやり方は間違っている」
ヒドラは苛立ちを隠さなかった。
「奴隷上がりの男に艦を任せるだと?
血筋も知れぬ者にどうして兵を預けられる」
「血筋がなんだ。
俺は、戦場で功を上げた者に応えているだけだ」
オリオンは静かに、しかしきっぱりと言い返した。
「その者たちの働きを、
俺は自分の目で見てきた。
お前の言う『血筋』とやらより、
よほど信用に値する」
ヒドラは唇を噛み、
それ以上何も言わなかった。
だがその夜以来、
二人の間には見えない溝が広がっていった。
「牧場を移す時季について、意見が違うようだな」
ある朝、ヒドラはそう告げると、
自らの陣を割いていった。
表向きの理由は、それだけだった。
だが二人が思い描く未来そのものが、
水と油であったことを、周囲の誰もが察していた。
「風は、血の貴賤を選ばぬのか……」
旧き氏族長の一人が、
そう呟きながらオリオンの旗の下へと去っていく。
ヒドラの陣営から兵が流出していく様を見て、
彼の胸に燃え上がったのは、かつての義兄弟への憎悪だった。
「十三の氏族を糾合せよ。
あの男に、力の差というものを教えてやる」
ヒドラの号令のもと、
大艦隊がオリオンへと差し向けられる。
ダラン・バルジュトの荒野で激突したこの戦は、
兵力に勝るヒドラ側の圧勝に終わった。
「退け! ここで死ぬわけにはいかない!」
オリオンは辛くも戦場を脱するが、
燃え落ちていく味方の艦を振り返り、
拳を強く握りしめた。
「……次は、俺が勝つ」
敗北の屈辱を骨の髄まで刻み込んだこの日こそ、
後の大宇宙統一へと続く長い道のりの、
真の始まりであった。
©2026 [風風風]. All rights reserved.
本日中に、第3話~第6話を投稿します。
第3話の投稿は、16:00 を予定しております。




