↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
43/83

2 部 第10話【 礎(いしずえ)であり続けた憲法と裁判制度 】(下)

その言葉に、

フェリクスとヴァルデマールは、

互いに顔を見合わせた。


「宰相殿、あなたの理念に、俺は、

 これまで以上に、敬意を払おう」


ヴァルデマールが、静かに言った。


「総司令官殿の理念もまた、私にとって、

 決して否定すべきものではありません。

 共に、この帝国を支えていきましょう」


フェリクスが、応じた。


二人の間に、これまでにない、

確かな和解の空気が流れた。


——こうして、第八帝国の均衡は、

この最大の試練を乗り越え、

より強固なものへと

生まれ変わっていった。


以後、アンタレス憲法とその裁判制度は、

幾世代にもわたり、

この帝国の礎であり続けた。


拡張と対話、その両輪は、

時に軋(きし)みながらも、

決して壊(こわ)れることなく、この帝国を、

さらなる遠い未来へと、

運び続けていったのである。


それから、

幾百、幾千という歳月が流れた。


第八帝国は、皇帝アンタレスが示した

「両輪の哲学」を、代々受け継ぎながら、

マフェイ1銀河の隅々にまで、

その版図(hなと)と理念を広げていった。


拡張は続いたが、それは常に、

対話という手続きを経た、

確かな信頼の上に築かれるものであった。


かくして「第八帝国は、永く繁栄した」

——後世、この帝国の歴史は、

そう語り継がれることとなる。


だが、その繁栄の陰で、静かに、

しかし確実に進んでいたのは、

あの「宇宙の膨張」であった。


天の川銀河と、マフェイ1銀河との間の

距離は、世代を重ねるごとに、

ますます遠く隔たっていった。


そして、この二つの銀河を隔てるのは、

距離だけではなかった。


天の川銀河そのものの円盤——

無数の恒星と、

深く濃密な星間ガスと塵(ちり)の帯が、

地球から見たマフェイ1銀河の姿を、

少しずつ、しかし確実に、

覆(おお)い隠(かく)していったのである。


天の川銀河、本拠の宮廷天文台では、

ある夜、観測者たちが、こう記録した。


「マフェイ1銀河、本日の観測において、

 確認できず。

 銀河面の塵に、

 完全に遮(さえぎ)られたものと思われる」


その報告は、

遠い昔にこの銀河へと旅立った、

ケンタウルスの血脈の記憶と共に、

静かに、

記録の奥深くへと埋もれていった。


もはや、天の川銀河から、

あの遠い帝国の光を、

直接見ることは叶わない。


だが、それでも、あの帝国は、確かに、

今この瞬間も、どこかで、

その歴史を紡(つむ)ぎ続けているはずだった。


——そして、存在自体、見えなくなった。


それでも、マフェイ1銀河の内側では、

光華万華宮の尖塔に掲げられた帝旗が、

今日もなお、誇らしげに、

暗黒の虚空へと、

はためき続けているに違いなかった。


誰に見られることもなく、ただ、

その地に生きる者たちのためだけに。


その帝旗の下、代々の皇帝たちは、

始祖アンタレスが遺(のこ)した

「両輪の哲学」を、

絶えることなく語り継いでいったという。


ある時代には拡張が、ある時代には対話が、

より強く求められることもあった。


だが、その振り子が、

どちらか一方に大きく傾ききることは、

ついぞなかったと伝えられている。


(第2部 完)

読んでくださりました方々に篤くお礼申し上げます。

ありがとうございました。

ブックマーク登録、ありがとうございます。


9/24 12:20 に、第3部 第1話を投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。