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2部 第4話【 試練の予感 】(上)

穏健派の中枢星系「フェリクス統治区」

と呼ばれるようになったその宙域では、

この頃、

目覚ましい発展が見られていた。


「宰相閣下、

新たに加わった三つの星系連合が、

独自の文化交流市を開いております」


補佐官の報告に、

フェリクスは、静かに目を細めた。


「良いことだ。異なる文化が、

互いを尊重し合いながら、共に栄える——

これこそが、俺の目指す統治の姿だ」


市場には、

龍脈技術を応用した美しい建築物と、

辺境の民が持ち込んだ独自の芸術が、

混然一体となって花開いていた。


子供たちは、

異なる星系出身の者同士で、

屈託なく遊び回っている。


「陛下から受け継いだ理念を、

この地でこそ、

実現できていると思います」


フェリクスの言葉に、補佐官は頷いた。


「軍部の方々にも、この光景を、

一度ご覧いただきたいものです」


「……そうだな。

だが、彼らには彼らの正義がある。

無理に押し付けることは、

しない方がいいだろう」


一方、強硬派の前線——

「エーデルシュタイン管区」

と呼ばれる版図の最先端では、

まったく異なる光景が広がっていた。


「新たに攻略した星域、

資源採掘の効率化を急がせております」


レオンハルト・クラウザーの報告に、

ヴァルデマールは満足げに頷いた。


「良い。この調子で、あらゆる宙域から、

最大限の資源を引き出すのだ」


「ですが総司令官、現地の民からは、

採掘量の急激な増加に、

不満の声が上がっているようです」


「不満など、いちいち気にしていては、

この広大な宇宙を統(す)べることなどできぬ。

多少の犠牲は、

拡張の代償として、やむを得まい」


そんなある日、両陣営の境界に位置する、

新たに発見された資源豊富な星団を巡って、

初めての摩擦が生じた。


「この星団は、我が軍が先に発見した。

当然、

エーデルシュタイン管区の版図に組み込む」


ヴァルデマールの使者が、そう宣言した。


「お待ちください」


フェリクスの側近が、すぐさま異を唱えた。


「この星団の民は、

既に我らとの対話を望んでおります。

武力による接収は、

彼らの意思を無視することになりましょう」


「意思など、

後からいくらでも従わせられる」


「それは、暴力による支配と、

何が違うのですか」


両者の主張は、平行線を辿った。


その決断に、

セレスは、僅(わず)かに眉をひそめた。


「よろしいのですか。

放置すれば、対立は、

さらに深まるかもしれません」


「分かっている。

だが、俺が安易に介入すれば、両者とも、

自らの信念で問題を解決する力を、

失ってしまうかもしれない。

今は、見守る時だ」


星団を巡る摩擦は、結局、

フェリクスとヴァルデマールの間で、

一時的な妥協案——

星団の資源は共同開発とし、統治権は

現地住民の意向を尊重するという、

玉虫色の決着で収まった。


だがこの一件は、両陣営の間に、

拭いきれない不信感の種を、

確かに植え付けることとなったのである。

本日 18:30 に投稿します。

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