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2部 第3話【 穏健派と強硬派 】(下)

フェリクス率いる

文官たちが治める宙域では、

対話と共存を重んじる、

穏やかな統治が広まっていった。


一方、

ヴァルデマールとレオンハルトが

采配を振るう辺境の戦線では、

これまで通り、力による拡張が、

絶えることなく続けられていった。


謁見の後、アンタレスは、

一人、展望室へと向かった。


「これで、良かったのだろうか」


拳の紋章に、静かに問いかける。


返事はなかった。


だがその静けさこそが、彼にとっての、

唯一の答えのように思えた。


「俺は、これから、

この帝国が二つに分かれていく様を、

ただ見守ることになる。


それが、正しい道であることを、

願うばかりだ」


星々の海は、今日も変わらず、

静かに、

しかし確実に、広がり続けていた。


数ヶ月後、宰相フェリクスの元には、

各地の穏健派の統治者たちから、

次々と

協力の申し出が届くようになっていた。


「宰相閣下、辺境の三つの星系連合が、

我らの統治体制を範として、

自らも対話による共存を進めたいと

申しております」


補佐官の報告に、

フェリクスは、静かに頷いた。


「良いことだ。だが、急いてはならぬ。


一つ一つの信頼は、

時間をかけて築くものだ」


「陛下の親政を辞めるという決断、

宰相閣下は、どうお考えですか」


補佐官の問いに、フェリクスは、

しばし窓の外を見つめた。


「勇気ある決断だと思う。


だが、同時に、

非常に危うい決断でもある」


「危うい、とは」


「二つの理念が、並び立つ間は良い。

だが、いずれ、そのどちらかが、

相手を否定し始める時が来るかもしれぬ。


その時、この帝国は、

真の試練を迎えることになるだろう」


一方、

ヴァルデマールとレオンハルトの

戦線でも、拡張は着実に進んでいた。


「また一つ、

新たな星域を、版図に加えました」


レオンハルトの報告に、

ヴァルデマールは、満足げに頷いた。


「良い。この調子で、

宇宙の膨張に負けぬ速さで、

版図を広げ続けるのだ」


「宰相殿の宙域は、

随分と穏やかにやっているようですな」


「ふん。

あちらはあちらのやり方があるのだろう。


俺たちは、俺たちのやり方で、

この帝国を支える」


ヴァルデマールの声には、僅かながら、

フェリクスの穏健な路線への、

静かな対抗心が滲んでいた。


こうして、第八帝国は、

表向きは一つの旗の下にありながら、

その内実は、

次第に二つの

異なる色を帯びていくことになる。


穏健派の宙域では、文化と交流が花開き、

強硬派の宙域では、軍事力と版図が、

絶えず拡大を続けていった。


「陛下、両陣営の均衡は、

今のところ保たれております」


その夜、報告に訪れたセレスに、

アンタレスは、静かに頷いた。


「今のところ、な」


「懸念しておられますか」


「宰相フェリクスも、

同じ懸念を抱いていると聞く。


二つの理念が、

いつまでも並び立つとは限らない、と」


「陛下は、その時が来たら、

どうなさるおつもりですか」


アンタレスは、

しばらく黙り込んだ後、静かに答えた。


「その時こそ、俺が、

この帝国の始祖から受け継いだ想いを、

もう一度、この手で示す時だろう」


その言葉には、いまだ形を成さぬ、

遠い未来への、

確かな覚悟が込められていた。


星々の海は、今日もなお、静かに、

しかし着実に、二つの潮流を抱えたまま、

広がり続けていた。

明朝 7:30 に投稿します。

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