2部 第1話【 対等な盟友として 】(下)
同盟の証として、五つの星団の代表団が、
光華万華宮へと招かれることとなった。
「まさか、征服者の宮殿に、
こうして招かれる日が来るとは」
代表団を率いる若い女性——
先の通信に応答した、
星団の長であった——は、
純白と黄金に輝く宮殿を見上げ、
思わず呟いた。
「征服ではない。同盟だ」
出迎えたオーギュスト・ド・グラモンが、
優雅な所作で一礼した。
「陛下は、貴殿らを対等な盟友として
迎えるおつもりです。
物資、技術、そして知恵——
互いに分かち合う関係を、
築いていきましょう」
謁見の間で、アンタレスは、
自らその女性と対面した。
「そなたの名を、聞かせてくれ」
「……ヴェスタと申します」
「ヴェスタ。
よくぞ、この宮殿まで足を運んでくれた」
アンタレスの声には、
これまでの征服者としての冷たさとは、
また違う響きがあった。
「我が高祖父アンタレスが、
そなたたちの祖先を守ったという。
その血の縁を、これからは、
力ではなく、絆として繋いでいきたい」
ヴェスタは、
しばらくアンタレスの顔を
じっと見つめた後、静かに頭を下げた。
「陛下の御心、確かに受け取りました。
私たちの民も、きっと、喜びをもって
この同盟を受け入れることでしょう」
その夜、謁見を終えたアンタレスは、
一人、宮殿の最上階にある展望室へと
向かった。
無数の星々が、暗黒の虚空に瞬いている。
「高祖父上」
アンタレスは、拳の中の——いや、
正確には、代々受け継がれてきた
星屑の欠片を象った紋章に、
静かに手を当てた。
「あなたが遺した情の道と、
俺が選んだ拡張の道。
この二つは、本当に、
相容れないものなのでしょうか」
返事は、もちろんなかった。
だが、遠い記憶の中に伝わる、
あの祖先の逸話の数々が、
静かに彼の胸を照らしていた。
「陛下」
背後から、ルシアンの声がした。
「まだ、お一人で?」
「ああ。少し、考え事をしていた」
「今日の判断、私は正しいと思います。
拡張のみを追い求める帝国に、
いずれ限界が来ることは、
目に見えております。
武力だけでなく、
信頼によって版図を広げる——
それもまた、一つの強さです」
アンタレスは、静かに頷いた。
「そうだな。……この道もまた、
試してみる価値があるのかもしれない」
こうして、第八帝国の拡張は、
単なる武力による征服だけでなく、
時に同盟という、
もう一つの形をも取り込みながら、
着実にその版図を広げていくことになる。
それは、始祖の理想と、末裔の野心とが、
静かに、しかし確かに交差し始めた、
新たな時代の幕開けであった。
明朝 7:30 に投稿します。




