↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/23

第1部(2) 第9話【 復讐の終わりと新たな開闢 】

「奪うな! それは俺たちの食料だぞ!」


「うるさい! 逃げ場がないなら、

生き残った奴が勝ちだ! 渡さねば殺す!」


絶対不透過の結界

【全階層次元遮断】によって

宇宙から完全に切り離され、

国家も法も崩壊したオリジン星群の首都星。


地表はわずか数日のうちに、

暴力と略奪が支配する

醜悪な修羅場へと変貌していた。


救援は永遠に来ない。脱出の術もない。


いつ

天から裁きの光が降り注ぐかもわからぬ

極限状態の中、

かつて「高度な文明を誇る平和の民」を

自称していた住民たちは、

理性も尊厳も投げ捨て、一切れのパン、

一杯の水を巡って

互いに殺し合いを始めていたのだ。


かつて英雄ジャスティス・オリジンを

「危険存在」と決めつけ、

自分たちの安寧あんねいのために

犠牲にした愚民どもの、

これが無惨な成り果てであった。


「ハハハ……見たか、ジャスティス。

これが貴様が命を懸けてまもろうとした

『民』の真の姿だ」


空に浮かぶ旗艦『アストライア』の玉座。


皇帝シリウスは、

モニターに映し出される地表の共食いを、

氷のように冷たい眼差しで見下ろしていた。


その隣には、彼の中に流れる黄金の神威──

ジャスティス・オリジンの魂が、

静かにたたずんでいる。


《……哀れなものだ》


シリウスの内面から、

ジャスティスの重厚な念話が響く。


《私が命を賭してあっもりたかったのは、

こんな醜悪な欲望の獣たちだったのか。

……いや、私自身が彼らの弱さに甘え、

偽りの平和を

買い与えてしまっていたのかもしれないな》


「後悔はあるか、ジャスティス?」


《ない。……お前が私の怨念を晴らし、

奴らの化けの皮をがしてくれた。


私を暗殺した者も、それをあざ笑った者も、

全員が己の犯した罪の重さに潰され、

地獄を味わった。

復讐は、これで十二分に果たされた》


ジャスティスの声から、

過去の泥汚い未練と憎悪が

スーッと消え去っていく。


冤罪えんざいによって殺され、

暗黒の宇宙に投げ捨てられた英雄の霊魂が、

孫であるシリウスの

圧倒的なザマァと断罪によって、

ついに真の安らぎを得ようとしていた。


「ならば──仕上げと行こう」


シリウスがゆるりと玉座から立ち上がる。


その瞬間、彼を包む雰囲気が一変した。


これまで全身からあふれ出ていた

「復讐者の狂気」と「禍々(まがまが)しい執念」が

消え去り、

代わりに真の宇宙の覇王にふさわしい、

圧倒的で清らかな神性があふれ出したのだ。


12星座の加護、大アンドロメダの龍脈、

そして成仏を果たした英雄の遺志。


それら全てが真の意味で一つへと融合し、

シリウスの背後にまばゆい十二の星輪と、

巨大な光の神龍を描き出す。


「聞け、オリジン星群の残党ども」


シリウスの声が、

滅びゆく星の全域へと静かに、

だが絶対的な威厳をもって響き渡る。


地上で殴り合っていた人々も、

血に濡れた刀を落とし、

呆然と空を見上げた。


「貴様らの国家『オリジン』は滅びた。

貴様らが誇り、すがりついてきた歴史も、

権力も、財産も、全ては灰となった。


今この地表で泥をすすり合っている貴様らは、

もはや何の価値も持たぬ、

ただの『罪深き生存者』に過ぎん」


シリウスは静かに右手を天へと掲げた。


「だが、ジャスティス・オリジンの魂は、

貴様らを全滅させることを望まぬ。

……無に帰すよりもみじめな『罰』を

与えることを選んだ」


「え……? 殺さ……ないのか……?」


地上の人々が、震える声でつぶく。


「貴様らに与える罰は──

『大サザンクロス星導国』の

最下層奴隷としての永劫えいごう贖罪しょくざいだ」


シリウスの指先から、

眩い精霊の光が地表全体を包み込んでいく。


「これより、

この星系を我が帝国の直轄開拓地とする。

貴様らは文明の恩恵を奪われ、

原始の荒野から、己の手で土を耕し、

汗と血を流して我が帝国へ奉仕し続けよ。

自らの罪を歴史に刻み、

末代まで英雄への謝罪を捧げ続けるのだ」


殺して終わるのではない。


英雄を裏切って手に入れた

「楽で贅沢ぜいたくな暮らし」を永久に奪い去り、

今後は死ぬまで帝国の最低層として

泥にまみれて働き続けさせるという、

永遠のザマァ。


「絶望の夜は明けた。……これより、

我が新秩序のときを告げる!」


シリウスの放つ光が星をおおい、

最後の決着への幕が上がった。

本日、18:30 に、投稿します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。