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第1部(2) 第3話【 濡れ衣を着せた黒幕 】

首都星の空が、

大サザンクロス星導国の降下艇群によって

埋め尽くされていく。


逃げ場のない完全な詰み。


絶対的な絶望の恐怖が、

オリジン星群の支配者層を

容赦なく苛さいなみ始めていた。

「ひぃっ、助けてくれ!

誰か、誰か奴を止めろぉッ!」


地下シェルターの最奥、

重厚な防圧扉が内側から爆破され、

煙の中から一人の青年が歩み出てくる。


漆黒の軍服をまと

「大サザンクロス星導国」の覇王シリウス。


そのかたわらには、

風の神威を宿した親衛隊が従い、

警護の精鋭兵たちは

一人残らず床に伏していた。


部屋の隅で泥のように震えていたのは、

かつてジャスティス・オリジンを

「裏切り者」へと仕立て上げた張本人──

最高評議会議長ヴァルガスであった。


「シ、シリウス陛下……!

待ってください、話し合いましょう!

昔のことは誤解です!

全ては当時の軍部が暴走したことであり、

私は……私はジャスティス殿を救おうと──」


『醜悪だな、ヴァルガス』


シリウスが静かに告げた瞬間、

その声に重なってもう一つの重厚な声が

ヴァルガスの脳内に直接響いた。


《──久しいな、ヴァルガス。

その見苦しい命乞い、

昔と何一つ変わっておらん》


「ひっ……!? こ、この声は

……ジャスティス・オリジン……!?」


ヴァルガスは絶叫し、己の耳を塞いだ。


シリウスの深層心理からあふれ出すのは、

かつて自身が毒と謀略で殺したはずの

英雄そのものの精神波動。


時を超えて眼前に突きつけられた

「亡霊」の存在に、ヴァルガスの精神は

崩壊寸前まで追い詰められる。


『我が祖父オリオンの肉体を借り、

そしていま、孫である私の血肉となって

よみがえったジャスティスの魂が、

貴様を「罪人」と指し示している』


シリウスがゆっくりと手をかざすと、

ヴァルガスの懐から

一枚の古びた記録媒体が浮き上がった。


『これは……かつて貴様が

「ジャスティスが敵国に機密を売った」と

捏造ねつぞうした際の、偽造データの原本だな?』


「あ……あぁ……!」


『精霊術は万物の「記憶」を読み通す。

貴様が私腹を肥やすため、

英雄の功績を奪い、

民をだまし続けてきた全記録は、

すでに我が艦隊を経由して

オリジン星群の全惑星・全端末へ

リアルタイム配信されている』


「な……んだと……!?」


ヴァルガスが慌てて手元の端末を開くと、

そこには

星群の全市民に向けた緊急放送が流れていた。


国家の英雄

ジャスティス・オリジンを謀殺し、

戦果を横取りして肥え太ってきた

老政治家たちの醜悪な記録、会話の音声、

暗殺指示の書状……全てが

白日のもとさらされていたのだ。


首都星の地上では、

真実を知った市民たちの怒りが

暴動となって爆発し始めていた。


「嘘だ……嘘だぁぁぁッ!

これでは私の築いた栄光が、地位が、

すべて無になってしまう!!」


頭を抱えて狂乱するヴァルガスを見下ろし、

シリウスは冷ややかな嘲笑を浮かべた。


『安心しろ。殺しはせん。

貴様のような豚に、

死という容易たやすすくいなど与えるものか』


シリウスが指を奏でると、

風の精霊がヴァルガスの四肢を縛り上げ、

空中へ吊るし上げる。


『かつて

ジャスティスが与えられたのと同じ

「売国奴」の汚名を着て、

おのれだまし続けた民の手によって

裁かれるがいい。……次なる標的は、

英雄の死を嘲笑あざわらい、その遺産をむさぼった

軍部のアドミラル共だ』


絶叫するヴァルガスを置き去りにし、

覇王シリウスは、次なる「復讐の舞台」へと

足を進めるのだった。

「ヴァルガスが失脚しただと!?  ぬぬ

……政治家どもめ、役に立たん豚どもが!」


オリジン星群の東方領域。


極秘宙域に潜む超大型機動要塞

『アレス』の作戦室で、

軍最高司令官グレイブ元帥げんすいは毒づいた。


彼こそがかつて、

ジャスティス・オリジンを背後から

毒殺の引き金を引かせた軍部の

黒幕である。


本日、18:30 に、

第1部(2)第4話を投稿します。

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