第1部(2) 第2話【 最高評議会の阿鼻叫喚 】
光の艦隊が、いよいよ防空圏を突き破り、
オリジン星群の本星へと降下を始める。
『さあ、見せてみろ。
英雄を裏切って手に入れた貴様らの真価を』
絶叫と悲鳴が星全体を包み込む中、
遅すぎた復讐の幕が静かに切って落とされた。
「ありえん! ありえんぞ!
たった一撃で
第一防衛要塞群が全滅だと!?」
オリジン星群の心臓部、
首都惑星の深層に位置する地下シェルター。
巨大な円卓を囲む
最高評議会の老政客たちは、
あまりの現実離れした惨状に、
泡を吹かんばかりに狼狽していた。
スクリーンに映し出されているのは、
かつて自分たちが
「絶対不落」と豪語していた防衛ラインの
成れの果てだ。
宇宙空間を埋め尽くす巨艦群は、
まるで羽虫でも払うかのように
防衛網を粉砕し、
ゆったりと首都星の衛星軌道へと
進入してきている。
「落ち着け!
我らにはまだ、最新鋭の
第1から第5艦隊が残っている!」
「そうだ! 各艦隊に緊急打電!
敵の旗艦集中攻撃で
シリウスの首を跳ねろ!」
議長が悲痛な叫び声を上げ、
全艦隊に迎撃命令が下された。
数万隻に及ぶオリジン星群の精鋭艦隊が、
首都星の空を埋め尽くすように展開する。
主砲のエネルギーが最大まで充填され、
星の夜空を昼間のように照らし出した。
「撃てぇッ!
亡霊の孫ごと、宇宙の塵にせよ!!」
一斉射撃。
星群が誇る最高火力、
熱線とプラズマの奔流が
「大サザンクロス星導国」の
先鋒艦隊へとなだれ込む。
直撃。
宇宙空間が眩い閃光に包まれ、
評議員たちは「やったか!?」と
歓喜の声を上げた。
──だが。
「……な、なんだと……!?」
煙が晴れた先で、
老政客たちは自らの目を疑った。
敵艦隊は、傷一つ負っていなかったのだ。
船体の表面で渦巻くのは、
千年の龍脈
「大サザンクロス龍華星界」由来の
精霊障壁。
オリジン星群の誇る最新兵器の攻撃は、
龍の鱗を模した光の膜に触れた瞬間、
すべてエネルギーとして吸収され、
霧散していた。
『……それが、貴様らの「全力」か?』
再び全モニターに割り込むシリウスの声。
その声には失望すら混ざっていた。
「12星座の加護、そして千年の龍脈
……祖父オリオンと父ケフェウス
そして我ら星導国が積み上げた
『理』の前に、
貴様らの科学など児戯に等しい」
シリウスが冷酷に指を鳴らす。
「反撃の許可を与える」
「龍風連鎖砲、照射!」
その瞬間、
敵艦隊の先頭に立つ数隻の大型艦の艦首が
黄金色に輝いた。
解き放たれたのは、
風の神威と龍の精霊術が重畳された
壊滅の光線。
それは真っ直ぐに
オリジン星群の精鋭艦隊を穿ち──
次の瞬間、
光線は空間そのものを伝播するように
「連鎖」した。
ドォン! ドド爆! ドドババババババッ……!!
一隻の爆発が隣の艦へ、さらにその隣の艦へ。
龍の形をした光の嵐が宇宙を駆け巡り、
わずか十数秒の間に、
オリジン星群が誇る精鋭5個艦隊・数万隻は、
一隻残らず爆炎の露と消えた。
「ひっ……ひいいいいいっ!?」
「艦隊が……我が国の全戦力が、一瞬で……!」
シェルター内に充満する、
死の静寂と絶望の匂い。
かつて
英雄ジャスティス・オリジンに濡れ衣を着せ、
闇に葬る計画に署名した老評議員たちは、
恐怖のあまりガタガタと膝を震わせ、
床に這いつくばった。
彼らが「強すぎる」と恐れて排除した英雄。
その英雄の血と魂を受け継ぎ、
全宇宙の頂点に立った男が、
いまや「神」に等しい暴力となって
頭上に降臨しているのだ。
『……まだ終わりではないぞ、愚者ども』
全画面に映るシリウスの瞳が、
黄金色の神威をギラリと輝かせる。
『命を乞え。踊れ。
かつて我が祖父を殺したその浅知恵で、
私を楽しませてみせよ』
首都星の空が、
大サザンクロス星導国の降下艇群によって
埋め尽くされていく。
逃げ場のない完全な詰み。
絶対的な絶望の恐怖が、
オリジン星群の支配者層を
容赦なく苛み始めていた。
「ひぃっ、助けてくれ!
誰か、誰か奴を止めろぉッ!」
地下シェルターの最奥、
重厚な防圧扉が内側から爆破され、
煙の中から一人の青年が歩み出てくる。
明朝、7:30 に第3話を投稿します。




