第1部(1) 第8話【 血で血を洗う継承争乱 】
旧来の
風の氏族に支持されたデネブの即位は、
あまりに性急だった。
「……南方に釘付けにされている今、
俺はどう動くべきか」
シリウスの脳裏に、
これから始まるであろう新たな、
そしてより苦しい戦いの気配が過よぎった。
「南方戦線は、現地の将に預ける。
俺は本拠へ戻る」
シリウスの決断に、副官が息を呑んだ。
「殿下、それは……」
「血を分けた弟の簒奪を、
黙って見ていられるか。
父上の理想もろとも、消え去ってしまう」
本拠に戻ったシリウスは、
南方攻略に従軍していた将兵、
そして
龍脈勢力から得た技術者や官吏らを結集し、
自ら推戴の儀を執り行った。
「二人の盟主が並び立つ、か……前代未聞だな」
古参の将がそう呟いた。
だがシリウスは、
力押しの決戦を選ばなかった。
「デネブの領域へ流れる食糧と
資源の航路を、すべて掌握せよ」
「兵を動かさず、ですか」
「南方で学んだことだ。
争わずして、勝つ道はある」
旧来の風の氏族のみに支えられた
デネブの陣営は、
じわじわと兵糧攻めにされていった。
大規模な艦隊同士の激突は、
ついに一度も起こらなかった。
四年の月日が流れた。
「デネブ様の陣営で、
脱走兵が相次いでいるとのこと」
「残された将たちが、白旗を掲げたか」
シリウスは静かに頷いた。
使者を送り、弟の助命を望む。
「デネブ様は……兄上の慈悲を、
受けぬとのことです。
自ら艦もろとも姿を消されました」
報告を聞いたシリウスは、
しばらく何も言わなかった。
「……そうか」
ただそれだけを呟き、
遠い星の海を見つめ続けた。
血で血を洗う継承争乱は、
こうして真の終わりを迎えたのだった。
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本日、18:30 に、第9話を投稿します。




