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【Fast Episode.3】夢のシャワー室。

【Fast Episode.3】夢のシャワー室。


俺は今とてつもないあ(・)れ(・)と戦っている。


……それは何かって?あれだよあれ。

学生時代なら誰しもがある「あ(・)れ(・)」だよ。


先生「で〜あるからして〜○○は〜」


タクミ「うう………。」


2時間目が始まる早々、俺は強烈(きょうれつ)な眠気と戦っていた。


1時間目、俺達男子は体育のバスケだった。

それで目一杯体力を使った後に、退屈な現国…


特にこの教師の授業は、眠気を誘う事で有名だ。

なにしろ、この教師のあだ名は「お経」と言われている。


…くそっ…完璧な、睡眠フラグじゃねーか……。


タクミ「うう、くっそ……。」


俺は、何とか眠気をやり過ごそうと右を向いてそこでふと気が付いた。


……あれ?華咲みどりが居ない。

ん?どこ行ったんだ???


あの品行方正な委員長がサボりとは考えにくいから、何かあったのかな?


確か女子は、1時間目は体育の水泳の授業だ。

水泳、水泳か……。


俺は突然、クラスの女子のスク水姿を想像してしまった。

…あの子はおしりがでかいなぁ…なんて事を思いながら数秒で我に返る。


えーと…確か水泳だった筈(はず)だから……そこで具合でも悪くなったとか?


…と、考えた途端(とたん)にポン!っと、今度は華咲みどりの水着姿が脳裏(のうり)に浮かぶ。

お、意外と胸がデカい!!おしりも大きめだけど、そこがまた……いい!


———っととと!!


思わず涎(よだれ)が落ちそうになり、俺はまた数秒もしない内に我に返った。


凄いぜ…俺の想像力…!

これですっかり目が覚(さ)めたぜ……!

…と思った筈なのに。


どういうわけか、眠気はさらに強引に、俺をグイグイと眠りの世界へと引っ張る。


タクミ「ふぁーっ……。」


俺は大きなあくびをした。


ヤバい、落ちる……。

この強力な睡魔(すいま)は、今日の朝に二度寝した影響(えいきょう)なのかもしれない。

今日は例の夢を見ることなく寝ちまったからな…。


そういや、昨日の夢……。どんなだったっけなぁ……。

何かこう、ずーっと、フワフワした感覚だったよな。

それで誰かが……。女の子が……。


そして俺は深い眠りに吸い込まれた。

=========================


ここ、どこだ?


…辺りを見渡すとシャワーや簡易的(かんいてき)な個室が連なっている、狭(せま)い部屋だ。

ネカフェとか快○クラブとかにある風呂か…?

いや、そんなわけないだろ!と即座に自分にツッコミを入れた。


…一瞬わからなかったが、見回してやっと脳が理解した。

うちの学校の、プールに併設されているシャワー室だ。


だけど、どこか妙だ……?いつも俺達男子が使っているシャワー室とは、左(・)右(・)が(・)反(・)対(・)だ。

あれー??俺、鏡(かがみ)の国に迷い込んじゃいましたか??


———と思いかけ、ハッと気づく。


ここ、女子用のシャワー室……じゃないか?そういや、よく見るとカーテンが違う。

男子のは青のカーテンだが、この部屋のカーテンは「ピ(・)ン(・)ク(・)」色だ。


えっ!女子シャワー室…って!


その時。


???「うーん…やっぱり……。」


誰かの呟きが、聞こえて来た。当然、女子の声だ。

シャワー室で、女子の声……。

そして妙に朝方に聞いた様な…。聞き覚えのある声だ。


???「水も出ないみたいですね。どうしたものか……。」


俺は瞬時(しゅんじ)に思い出した。この声……。


俺は嬉々(きき)として——いやいやいや!恐る恐る、声のする方向を向いた。

そう、そこにはあの委員長こと、華咲みどりが立って居たのである。


俺は驚(おどろ)いた。

委員長!?…しかも…バスタオル姿!?!?


みどり「ドアも開かない。水も出ない。何ででしょう……。つまり私は密(・)室(・)に(・)閉(・)じ(・)込(・)め(・)ら(・)れ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)…という事ですよね?」


さっきは俺の遅刻を見逃してはくれなかった、天然お嬢様にしてクラス委員長。

その委員長が、何故かこんなあられもない姿で俺の目の前に。

何故だか、「シャワー室に閉じ込められているらしい」というシチュエーションで。


いや、そんな事より……。


た、谷間…が………。

俺のさっきの想像の2倍も超えている!


だが、委員長は、そんな俺の凝視(ぎょうし)には気付きもしない様子で、シャワーを相手に何やらブツブツと呟(つぶや)き続けている。

傍(はた)から見ると凄く不気味な状況だ。


みどり「困りました……。これは、本格的に困りましたね……。」


…本当に本格的に困っているのだろうか?このおっとりっぷりで……。

と、谷間の凝視も一瞬忘れてまじまじと見つめていると、委員長はいきなりガックリと肩を落とした。


みどり「はあぁぁ〜…何故でしょう……。どういう訳か私って、いつもこんな目に遭いますよね…。」


彼女は、もう一度「はぁ〜」と大きな溜息をついた。


クラスでは溜息なんて見ることがないからな。

これはこれで貴重なシーンだ。


そんな事を思ったその時。

振り向いた彼女の視線が、偶然にも俺の視線とぶつかり合った。


みどり「…………。ええっ!?!?」


変なタイムラグの後、ぴょん!と、かわいく飛び上がる委員長。


ヤベ!見つかった!!まずい!これはまずい!!

俺が女子のシャワー室にいるって先生に報告されて、まりねぇを呼ばれて……

停学…いや…最悪な場合、退学コースじゃねーか!!!


俺は反射的に、全力で「いやいやいや!」のジェスチャーをしながら、全力で身の潔白(けっぱく)を証明するべく、捲(まく)し立てた。


タクミ「いやいやいや!!俺別に、そんなつもりじゃなくて!!…第一に自分の意思でシャワー室に…ましてや女子のシャワー室に来た訳でもなくて、そこんとこはホラ、説明が難しいんだけど———」


そう言ったつもりだった、…が。


気が付くと、声(・)が(・)出(・)て(・)い(・)な(・)い(・)。

…それどころか、俺が喋(しゃべ)った音もしない。

言うなれば、俺の全ての声や音が完全に消失した、無言の世界とでも言うのか?


その中で委員長の声だけが、聞こえている。

?……あれ?この状況…どこかで———


みどり「蝶々(ちょうちょ)。」


委員長がおもむろにそう呟いた。

今確かに「蝶(・)々(・)」だと。


は…??ちょ、ちょうちょ……?


俺は困惑した。

蝶々って、アレですか?綺麗(きれい)な花に寄ってきて、フワフワ飛んだりする、アレ?


…ってあれー?華咲みどりさん?俺の焦(あせ)りは無視して、虫の話に飛んじゃいました?

俺の頭が「?」で一杯になっているのをよそに、みどりはまたブツブツと独り言を言い始めた。


みどり「ううん、違う。全然大きいです……。では、これは、一体何でしょう…?」


その視線は、俺をジッと見据(みす)えている。


俺からしたらこんなに恥ずかしい事はない。

何でって?この時は俺も裸(はだか)だと思っていたから、ずっと俺の裸を見られてると思っていたからだ。


しかし委員長がジーって食い入る様に見た事で俺の考えはやっと一転した。

どうやら話が飛んだ訳でも、俺の裸を見てる訳でも無くて、俺の事を観察(かんさつ)しつつ、「蝶々」と言っているらしい。


…つまり蝶々って、俺の事(?)を指して言っているんだな、とようやく気付いた時の事だった。


そして、華咲みどりはまた更にブッ飛んだ発言をした。


みどり「まさか———これが…エルフさん?」


…そのフレーズを聞いた瞬間、俺は昨日の夢のある言葉が脳裏に蘇(よみがえ)った。


=========================

謎の女の子「誰?…飛んでる…?エルフさん?」

=========================


あ……!!俺は突然頭が冴えて来た。

そして昨日の夢を思い出した。

昨日の夢、あの中でも、女の子に「エ(・)ル(・)フ(・)」と呼ばれた。


…そうだ、この状況……昨日の夢と同じだ。

どういうわけか、俺はまたエルフサイズ(?)になっていて、フワフワーっと空中に浮いてるって訳だ。

ここまで来てようやく完全に理解した。


つまり……これはまた、夢(・)か?


なんだー、そっかー。夢かー!

俺は、この異常な状況に説明がついて、急に頭の中にあった霧(きり)が一斉に晴れた気がした。


そして相変わらず委員長は、俺の目の前でバスタオル一枚巻いた姿だが、この彼女も、俺の夢の中の住人なのではないか——?そう思った。

それと同時に俺は胸を撫(な)で下ろした。


…とりあえず、女子シャワー室にコッソリ隠れていた変態男として、委員長にまた供述書(きょうじゅつしょ)を取られる様な、現実的な事は無さそうだ。


……あぁ、良かった!

それに昨日の夢も、おかげで完全に思い出す事もできた!ああ、スッキリした!!


…というわけで、当面の悩みが解消すると、俄然(がぜん)探究心(たんきゅうしん)が湧(わ)いてくる。


今朝(けさ)の夢といい、この夢といい。

女の子が裸、もしくは半裸でどこかに閉じ込められていて助けを求めている——


俺は何故か子供が拐(とら)われて助けにくる戦隊モノのシリーズをふと思い出した。

そんな女の子達を戦隊モノの主人公の様に救うのが、俺の夢的にマイブームらしい。


…しかも今度は今朝話したばかりの華咲みどりときた。


我ながら分かりやすいな、俺。

…ちょっと最近、欲求不満なのか…?


ま、それは置いといて——


とりあえず、彼女と意思疎通を図ってみよう!

意思疎通ができなきゃ、どうしようもないしな!


次回へ続く。

ご閲覧頂き、ありがとうございます♪

次回更新は…8/21日です。

よろしければ次回の物語も見てくださいね!

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