【Fast Episode.22】えっと…、君、誰…だっけ…?
【Fast Episode.22】えっと…、君、誰…だっけ…?
その子と目が合った瞬間———
その綺麗な目がみるみる大きくなり、驚いたような表情をした。
そして女の子は口を開く。
女の子「あ、タクミく……。」
彼女は俺の名前を言いかけたが、何か、言ってはいけない事を言ってしまったかの様に、慌てて口をつぐんだ。
そしてそのまま、下を向いてしまった。
彼女は俺の事を知っている?
しかも…下の名前で…?
いや、確かにチヒロやリュウトは俺の事を「タクミ」と呼ぶが、クラスメイトからは「烏丸」と呼ばれる事の方が多い。
あと、身近で俺の事を名前呼びするのは、ゆきみかななだが…。
ひとまず、挨拶はしよう。
タクミ「えっと…。おはよう。」
俺は彼女に向かって挨拶をしたが、彼女は顔を上げる気配がない。
ナニコレ…?
すげぇ、気まずい…。
俺はとにかく会話をしようと試みた。
タクミ「え、えっとさ、随分早いね!」
女の子「………。」
タクミ「俺、一番かと思ったのに驚いたよー。あはは…」
女の子「………。」
タクミ「君、いつも早くくるの?」
女の子「………。」
ぐわあああ!!完璧に無視されてんじゃねーか!!!
っていうか、ハタから見たら物静かな子に、うざ絡みしてる風にしか見えねぇ!!
なんだよ、この子…。
さっきは俺の事、下の名前で呼んだくせに…。
…と改めて思い返してみたら、なぜだかわからないが、不思議な気分になった。
俺…、この子、知ってる……。
…いや、違うんだ。
クラスメイトだから知ってて当然ではあるんだが…。
そういう事じゃないんだ。
んーなんて言うんだろうか…。
全然知らない子なはずなのに、なぜか知ってる。
言葉がうまく出てこないし、奇妙ではあるんだけど、なんかそんな感じ…。
俺が少し困惑していると、女の子は一瞬、顔を上げた。
おっ?彼女、チラッとほんの一瞬、こっち見たよな?
もしかすると、話し続けていると、何かリアクションあるかもしれない!
ひとまず、状況を整理しよう。
この時間に学校にいるって事は、よっぽどの学校Love以外は、部活の可能性が高い。
タクミ「えーと…、もしかして、部活?」
…まてまて、ここにいるんだから部活ではないだろ!
俺は自分にツッコミを入れた。
しかし、女の子は無言のまま。
そうか!委員会の用事かもしれない!
タクミ「じゃあ、委員会の用事かなー??」
女の子は黙ったまま。
もうこうなったら学校か勉強Loveに一縷の望みをかけて…
タクミ「わかった!予習復習を学校でやる派とか!!!」
女の子はやっぱり黙ったまま。
だ、ダメだ…。キツイ…。
反応してもらえないどころか、何も答えてくれないのがこんなに心に来るモノがあるとは…。
仕方ない…
かくなるうえは一番気になることを聞いてしまおう。
もう十分地獄みたいな雰囲気なんだから、なに聞いても一緒だしな!
タクミ「あのさ…、ごめん、凄く聞きにくいんだけど…君、名前は…?」
すると女の子は。
女の子「ご、ごめ、ごめんなさい!あの…私、話、したくなくて…!」
えーーーー!!!!
なんだそれ!!!
すると女の子は教室から出て行った。
話したくないって…
俺、完璧に嫌われた…!?
うわー!!なんで!?!?
…やっぱり、名前を聞いたのがまずかったのか!?!?
俺は独り言を言った。
すると後ろから…
チヒロ「そりゃそうだよ。まずいよ、タクミ。」
チヒロ!?来てたのか!?
チヒロは一呼吸おいて…。
チヒロ「うん。おはよう、タクミ。ちょっと入りにくくてさ。」
俺はチヒロに聞く。
タクミ「まずいよって、やっぱり俺、まずかった…?」
チヒロ「まずいでしょ、そりゃ。クラスメイトの名前をいまさら聞くなんて。新学期の頃なら仕方ないけど、もう今は6月だよ?」
俺はまずかった内容よりも、彼女がクラスメイトだった事に驚いた。
タクミ「あの子、やっぱりクラスメイトなのか…。」
チヒロ「そこから!?!?」
チヒロは軽くため息をつきながら…
チヒロ「あのね、彼女は「大空かすみ」さん。僕も話した事はないからよく知らないけど、凄くおとなしい人だよね。でもさ…いくらおとなしい人だからって、存在すら知らないなんて、タクミらしくないよ。」
たしかにな…。
俺も不思議に思った。
男子ならともかく、女子はとりあえず全員チェックしてるはずなんだけどなぁ…?
大空かすみ…。
かすみ…。
その名前、何か引っかかる…。
そうしていると、リュウトが遅れてやってきた。
リュウト「おっすー!!お!?お前ら早ぇじゃん!!」
チヒロ「あ、リュウト、おはよう。」
リュウト「なになにぃ?お前らも購買の朝限定の焼きそばパン狙いで早出なのかー?」
ちげーよ!!!
それにあんまり、朝早く来た事なかったからそんな朝限定のモンがあるなんて知らなかったわ!
チヒロ「あ、僕はそうだよ。」
…チヒロ、お前はそうだったのか…。
リュウト「じゃ、なんでタクミは早出なんだよ?万年遅刻魔のお前が!」
タクミ「うっせい!!遅刻魔は余計だ!!たまには早く来てもいいだろ!!」
リュウト「いや、お前は理由なく早く来るヤツじゃねぇ!じゃ、なんだ?こないだの遅刻、反省してまーすってとこ、委員長に見せたいとかそんな感じか?」
タクミ「そんなことねーよ!!」
チヒロ「…早出の理由はわからないけど、タクミが大空さんに凄く失礼な事を言っててね。たまたま現場に鉢合わせたんだよ。」
リュウト「大空ってあの教室の隅にいるおとなしーヤツか?なんだ?タクミ、大空といつ話すようになったんだよー!」
チヒロ「そうだよね。しかもタクミ、大空さんの事、存在すら忘れてたみたい。」
リュウト「マジかよー。確かに教室では目立たねぇ子ではあるけど、女好きのお前が存在すら知らないなんて意外だな。」
タクミ「や、俺もそう思う…。」
そして話の腰を折るようにチヒロが。
チヒロ「そういや、さっきリュウトが言った委員長と言えば、タクミ、どうするの?」
ん?なんの事だ?
チヒロ「オリ会に誰を誘うか、さすがにもう決めたよね?」
やべ…、忘れてた…。
タクミ「き、決めたぞ…?」
リュウト「そういや、昨日、明日までに決めてくるって言ってたな!…で、だれなんだよ~?なぁなぁ!」
…まだ、決めあぐねているとは言えない。
決めたってのは完全に嘘だ…。
ひとまず、ここは一旦ぼかすしかない。
タクミ「いや、それはさ?また追々話すし…。」
リュウト「なんだよー!!!焦らすなよ!ってか、お前、ホントはまだ迷ってるんじゃねーの?昨日、あんなに自信満々に大会で優勝するぞ!!って豪語してたのになぁ!」
チヒロも追い打ちをかけるが如く。
チヒロ「だよね。まさか、まだ決めていないなんて、そんなことありえないよね?タクミ。」
いや…、そのまさかなんですけど…
とは言えない空気だ…。
チヒロ「無駄に迷ってるとモテ期逃しちゃうよ?」
うっ!相変わらずチヒロはグサッってくるような事を…。
そ、そうだよなぁ…。
こういうのは迷えば良いって訳でもないし…。
タクミ「わかった!!昼休みの時に発表する!!」
なんとかそれまでに考えるんだ。
あと、4時間もある。
チヒロ「タクミ…。」
リュウト「タクミ…。」
な、なんだよ!
チヒロ「まぁ、もうすぐ予鈴もなるし、タクミもこう言ってるし、昼休みまで待とうか。」
リュウト「そうだな。タクミ!必ず昼休みには教えてもらうぞ!!!」
なんで、お前らに教えなきゃならねーんだ!
…と、思ったが、ここまでこいつらを巻き込んだ以上は仕方ない。
俺は昼休みまで必死に悩んだ。
次回に続く。
ご閲覧頂き、ありがとうございます♪
Fast編はここで一区切りとなります!
次回更新は…10/30日です。
また、次回は特別話を挟む為、2話同時投稿になります。
そして、その次は新章となります!
よろしければ次回の物語も見てくださいね!




