【Fast Episode.20】朧げな記憶。
【Fast Episode.20】朧げな記憶。
その日の夜。
俺はまたしても夢の世界に足を踏み入れていた。
気が付くと、俺はとても気持ちのいい場所にいた。
その夢の場所とはなぜか見知った場所であり、見知らぬ場所。
空気は澄んでおり、まるで雲の上に居るような感覚だ。
陽光は燦々と降り注ぎ、時折、涼しい微風が頬を撫でる。
髪が靡く気がする、穏やかな良い天気だ。
…一言で表すと雲の上の楽園のような?
そして目の前には小綺麗なコテージの様な建物が建っている。
コテージ?家?…いや、家にしちゃ小さすぎる。
ここは…?
そうか俺、また、夢の中にいるみたいだな。
妙にふわふわしたあの感じも、もはや馴染みのものだ。
新学期に入って、幾度となく見た夢と同じ様に、俺はまた例の「エルフさん」状態なんだろう。
だけど…。
この場所は?
今までは学校の一室や、ななの部屋だった。
しかし、今度の舞台は学校じゃない。
まったく知らない場所だ。
———と認識した瞬間に、奇妙な思いが同時に湧きおこった。
いや、ここ、知ってる…ぞ…?
俺、一度、ここに来た事がある。
そんな思いが俺の頭の中をぐるぐるしていた。
しかし、いつ、どこで来たのか、何があったのか…といった具体的な記憶は抜け落ちてしまっている。
そうして一人で考え込んでいるうちに、それが本当に俺の記憶だったのかどうかも自信がなくなってきた。
俺は、混乱しながら、だけどいつしかフラフラとそのコテージがある方向へと進んでいた。
…そして気が付くと俺はコテージの前へ立っていた。
エルフだから立てないとかいうツッコミはさておき。
俺はコテージを見渡した。
すると、窓には鉄格子があり、どう頑張っても入れそうにない…。
しかし、鉄格子の隙間から様子を見ることはできた。
近づいて中を窺うと、奥で何か動いた。
!!!
人だ!人がいる…!!
俺はギクッとしながらも、よく考えたら今まで夢では人がいたし、当然か。
…と考えをシフトさせる。
そして、その人はどうやら女の子だ。
「きっとあの子だ。」
———え??
俺はまた頭を抱えながら、考えた。
「きっとあの子」ってどの子の事だ?…と疑問に感じる俺。
まただ…。
また、さっきと同じ違和感。
知っているのに、全く知らない…。
なんというか、二重人格?
…いや、記憶が二重になっていると言った方がいいか。
なんだか凄く変な気分だ…。
だが、俺は次の瞬間———
別の事に気を取られた。
鉄格子からその女の子が見えたのだ。
しかも…超・薄着…!!
華奢な体のラインが丸わかりだ!
俺は食い入るようにその少女の胸を………じゃなかった。
その少女を観察した。
その少女は透き通る様な肌、整った小さな顔、綺麗な桜色の口、そしてサラサラの髪…。
そしてあどけなさを残した頼りない感じ…。
だが、それがイイ!!
髪の毛も柔らかそうで、とてもツルツルしていて滑らかなストレートヘアーだ。
あぁ、触りたい…。
そんな感じでとても俺のなにかを突き動かすような女の子だった。
しかし…。
その女の子はなぜか浮かない顔をしていた。
その女の子の長いまつ毛が悲しそうに震え、桜色の小さい唇からは短いため息が漏れる。
…いったいどうしたんだろうか。
俺は無性に気になった。
…と同時にその子の事がとても心配になった。
何か困っているなら助けてあげたい。
何か俺にできる事はないだろうか…?
俺はなぜかは分からないが、コテージの裏側に回り込んだ。
そう、なぜかここから入れる事を知っていたかのように。
裏側には窓があり、こちらは鉄格子はない。
そして、前回と同じく、窓も開いていた。
俺はそのままその窓からするりと体を潜らせて、その女の子の前に躍り出た。
すると、女の子も気が付いたようで…
女の子は「あっ!」っと小さな声を漏らす。
そして続けざまに。
女の子「エルフさん…?また来てくれたの…!」
その女の子は、はにかんだ笑顔でにっこりとこちらの方に素敵な笑顔を向けてくれた。
くぅ~!可愛いっ!…可愛すぎるぞ…!
しかし、その笑顔とは別に俺はある言葉を聞き逃さなかった。
彼女、「また来てくれた」と言ったよな?
つまり…、俺はやっぱり、以前もここへ来たことがあって、彼女にも会った事があるんだ…!
だがしかし、来たような記憶もあれば、全く覚えもない気もする。
んんん??
…なんでこんなに俺の記憶が曖昧なんだ?
混乱している俺をよそに、彼女はそんな俺の困惑に気付かず、嬉しそうに笑った。
そして彼女が続けて口を開く。
女の子「うふふ、嬉しい!なんだかお友達ができたみたい!」
ん?友達?
キミみたいに可愛い女の子なら友達やら男友達もたくさんいるだろうに。
そんな俺の考えを読み取るかのように、彼女は少し寂しそうに笑った。
そして少し重い口調のまま彼女は続けて。
女の子「私、ずっと…ずっとひとりだったの…。だから、本当に嬉しいの。ねぇ、エルフさん、あなたはどこから来たの?」
お、俺は、エルフとかじゃなくて、そこの紅葉高校に通う、一男子生徒で———
…と、そんな俺の考えを遮るように、彼女は。
女の子「空の上の国から?それともどこか遠い楽園の花園かしら?」
わぁ、なんてファンタスティックな。
完全に某ネズミーランドだ。
…さすがに夢である以上、某夢の国の事を言葉にする事はなかったが…。
女の子は続けて。
女の子「いいなぁ…。そんな場所があるなら、私も行ってみたいな。」
確かにそんな場所があるなら俺も君と行ってみたいもんだが…。
そして女の子は本題を口にする。
その口調はかなり重く、周りの空気すら凍らせるような…。
自分でもわからないが、とても悲しく、とてもせつない…、そんな感覚だった。
女の子「私ね、ずっとここに閉じ込められているの。」
えっ?えっ…!?
閉じ込められているって…。
初手から穏やかじゃないな。
俺の頭は色々な事を思い浮かべた。
監禁?誰に…?身代金…?なぜ…?
…考えがごっちゃになってまとまらない。
…しかし、俺にとってはかなり重大な事でも彼女はふんわり笑っているだけで、なぜ閉じ込められているのかまでは説明してくれなかった。
理由が気になるところではあるが、俺は一つの仮説を立てた。
俺だって、今まで色んな女の子の夢で女の子達を助けてきたんだ。
直感的に思った。
そうか、もしかしたらこの子も他の女の子と同様、閉じ込められていて、困っていたのか。
じゃあ、俺が例の如く、彼女をここから脱出させれば…。
もしかすると現実世界でもこの子は助かるかもしれない。
俺はそれが使命の様に感じた。
それが、俺に与えられた使命っていうならば、俺は迷わず全うする!
まってろ!俺が君を必ず、ここから脱出させて見せる!
…だから、そんな悲しい顔をしないで、俺と一緒に抜け出そう!
キミは笑っている方が素敵だ!
俺は今までにない気合を入れ、伝わってないとは思うが、女の子に意気込みを見せた。
次回に続く。
ご閲覧頂き、ありがとうございます♪
次回更新は…10/23日です。
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